加護をください

今日と明日は理由もなく二話投稿。

こちらは本日、一話目。

――――――――――――――――――――――


 職業神の加護は神殿で授かるみたいだけど、残念ながら場所がわからない。女将さんに聞けばわかるかな?


「すみません、神殿ってどちらにありますか?」 「あら、神殿ですか。信心深いんですね」

「あ、いえ。職業神の加護を授かりたくて……」

「それなら、冒険者ギルドの側に出張所がありますよ」


 ということらしいね。見事に二度手間でした。ニーナさんに聞いておけば良かったよ。


 女将さんにお礼を言って、冒険者ギルドに戻る。


 さて、どこにあるのかな?

 ギルドの近くにそれらしい建物は見当たらないけど……。


 あ、いや、これかな?

 まだはっきりとは読めないけど、掲げられた看板に出張所と書いてある……気がする!


 でも、本当にこの建物なんだろうか。なんていうか、掘っ建て小屋って感じなんだけど。


 ま、まあ、いいや。

 とりあえず、入ってみよう。間違えだったら謝ればいいよ、きっと。


 扉を恐る恐る開けると、人の良さそうなお爺さんが椅子に腰掛けていた。服装は神官服っぽいし、ここが神殿の出張所であってるみたい。


「あの……、ここで職業神の加護を授かることができますか?」

「あー、はいはい。できますよ。銀貨10枚です」


 なんか思ってたよりも軽い感じだな、神官の人。冒険者相手だから、こんなものなのかな。変に厳かな雰囲気だと疲れそうだから気楽でいいけどね。


 費用――正確には寄進なんだけど――は聞いていた通り銀貨10枚。正直に言えば、痛い出費だ。だけど、加護があると成長に補正があるみたいだからね。効率厨というわけではないけど、能力アップの機会はなるべく無駄にしたくない。というわけで、なけなしの銀貨10枚をお爺さんに手渡す。


「はい、確かに。それでは、隣の部屋に水晶玉があるので、手で触れてから加護を願ってくださいね。今は待ってる人がいないから、ゆっくりでも大丈夫だよ」


 お、おお……。なんか凄いお手軽な感じだね。もっと儀式的なものがあるのかと思ってた。まあ、恩恵さえ得られるなら文句はないけどね。


 隣室に向かうと、場違いな感じの豪華な台座があって、その上にピカピカに磨かれた水晶玉が鎮座していた。指紋が残りそうで抵抗があるけど、言われた通りに手で触れて加護を願う。


 すると、不思議なことに幾つもの職業が頭に思い浮かんだ。想定していたよりもずっと多い。料理人とかの非戦闘職も含まれているみたいだ。


 うーん、ごちゃごちゃして把握しきれない。フィルター機能とかないのかな? とりあえず、戦闘職だけでいいんだけど。


 そんなことを考えていると、幾つかの候補が消えた。どうやら、思い通りに条件の絞り込みができるようだ。これなら、自分が望む職業を見つけることができそう。


 そうやって候補を絞っていくと、気になる職業が幾つか残った。


―――

弓士

狩人

盗賊

迷宮探索士

魔術師

―――


 弓士と狩人はどちらも、弓の技能が上がりそうだ。ステータスから判断すると、僕は後衛向けだし器用さも高いから、弓という選択肢はあると思う。弓士が純戦闘系で狩人が探索とか罠関連のスキルも習得しやすくなるんじゃないかと予想している。


 盗賊は解錠とか罠解除とかの取得に向いてると思うんだけど、ダンジョン探索者とかじゃなくてただの窃盗犯の可能性が高い気がしてきた。たぶん、ゲームでいう盗賊ポジションは迷宮探索士なんじゃないかな。この予想が当たっているなら、ステータス的には迷宮探索士が一番僕に向いていそうだ。


 あとは魔術師。【魔法の素養】があるから向いているとは思う。憧れもある。でも、魔法はまだ使えないんだよね。さすがに今の段階で選ぶべきではないと思う。残念だけど。


 んー、ダンジョンを考えるなら迷宮探索士かな。正直、僕は戦闘をバリバリこなすタイプじゃないと思うし。どちらかという宝箱をたくさん開けたい。能力的にもたぶん適職だしね。


 決めた!

 迷宮探索士にします! 加護をよろしくお願いします!


 想いを込めて願うと、水晶玉がピカリと輝いた。これで加護がもらえたってことかな?


 不安なので、鑑定ルーペを使って確認してみる。


―――――

名 前:トルト

種 族:普人

年 齢:12

レベル:1

生命力:15/15

マナ量:13/13

筋 力:6

体 力:7

敏 捷:12

器 用:14 [1up]

魔 力:12

精 神:10

幸 運:100


加護:

【職業神の加護・迷宮探索士】[new]


スキル:

【運命神の微笑み】【解錠Lv1】[new]

【罠解除Lv1】[new]【方向感覚Lv1】[new]


特 性:

【調理の才能 Lv1】【強運】【器用な指先 Lv1】

【魔法の素養 Lv2】

―――――


 おっ、ちゃんと加護が貰えてるね!

しかも、器用が少し上がってるし、スキルも幾つか増えた。思った以上に加護の恩恵は大きいのかもしれないね。


 増えたスキルのうち、【解錠】と【罠解除】はそのまんまだね。このスキルを伸ばしていけば、パーティーでも重宝される存在になれる……はず!


 【方向感覚】は鑑定でスキルの説明を見ても曖昧な感じ。なんとなく方向がわかるらしい。ダンジョンで迷いにくくなるのかな?


 ともかく、これで僕もダンジョン冒険者に一歩近づいたわけだね。

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