第3話 オタク君、同棲を始める。
「それで、今はどこへ向かっているんですか?」
「俺たちの家だ」
ほう。ORE☆TACHI☆NO☆IE☆とな?ゑ?
「
「悪いが、この青龍であっても知らないものはあるのでな。特にその新世界の言葉は心に仕舞っておいてくれ」
(いやだって、俺たち対面して半日なのに急にそんな展開良いの!?)
「神運営じゃん!?」
「なんなら正確な読心も心得てはいないが、多分分かるぞ。逆だ。落ち着け」
「ああ、ごめん。。。でも、俺てっきり適当なトコに連れて行かれるのかと」
キセモリのプレイヤーは、入学したとはいえ生粋の人間なので、今は使われていない当直室が割り当てられる設定なのだ。そこで過去問題とかを見つけちゃってどうするか物語の分岐(といっても本編の章立てが前後するだけだが)になっていたりする。
「なにを言うか。俺が面倒を見るのだから、俺と共にいるのが当然だ。まぁ、授業時間内は仕方ないが、大いに励めよ」
「っぉ、ぉ、は、はいぃ」
くあぁぁぁ、笑顔が良いいいい。百億万円の輝きいいいいいい。
スルリ
「ひょっ」
心の中で芋虫顔負けに悶えていると、右手に何かが絡みつく感覚がして素っ頓狂な声が出た。
「なんだ、どーしても嫌だったか?」
まさかと思い右手を見ると、なんと、青林の指が俺の指と絡んでいるではないか。うわぁ、恋人繋ぎだぁ。
つい先刻断ったあの手が、今は有無を言わさぬ強さを持って俺の手をとっている。どうしよう、溶けちゃう。いや溶けた(断言)。これが溶けないはずがなかろうか、いやない(反語)。ありをり侍りいまそかり。Suica止めて。か、き、く、くる(ry
「めっ、めっめめ滅相も御座いませんっ」
「だろうな」
ショート寸前の俺の手が引っ張り上げられ、青林のその整い過ぎてタヒ人が出そうな顔、もとい薄い唇に近づけられる。え、待って待ってまさか、そんな
「・・・ふふふ、何を期待したんだ?我が愛し子」
青林の手は唇に触れる数cm前で止められた。そして、獲物を見る目、というのはこういうのを指すんだろう。狩るというよりは弄ぶような視線をもろに浴びた。こんなの、無理。
「♡♡♡♡」
生まれて初めての喪失感と共に俺は崩れ落ちた。
「ほらここだ」
喪失感の正体はお腰様だった。おー腰さーまーフーニャフニャー♪
腰と魂が抜けた俺を担いだ青林が足を止めたのは、生け垣が遥か向こうまで続く豪邸の前だった。流石にこれ以上醜態を曝したくないと、お姫様抱っこを断固拒否し代わりにファイヤーマンズキャリー(相手を横にして肩に担ぐ運搬方法。自衛隊なんかでも使われてるらしい)を伝授して運搬して貰った。分からない方は調べてくれ。いざという時に役立つ。ちなみにこれより楽な方法としてレンジャーロールというものもある。背丈がデカイ相手なんかだとこっちの方が楽に担げる・・・なんの話だっけ?ああ、そうそう。豪邸の話だ。
学園を囲う林を抜けた先にあるこの豪邸は、東側半分を青龍の一族の生徒、西側半分を白虎の一族の生徒が使っている設定だ。内部はまだ公開されたことが無かったはず。え、俺見て良いの?いやこれから住むんだけど、え、マ?
狼狽えている間にも青林はサクサク進み玄関の引き戸を開ける。
「ただ今帰った」
「お帰りなさいませ」
石畳の中からスウッと白いモヤが浮かんだと思うと、髪の色から足の爪に至るまで全て真っ白の女性が現れた。とんでもない美人だ。
これはアレか?俺が美人に嫉妬してヤンデレ落ちたのをヨシヨシしてくれるルート突入か?
「愛し子、勘違いするなよ。コレは俺の力で生み出した雲の化身だ。今はこの屋敷の管理を頼んでいる」
「あっなるほど」
そういえば四獣の一族は雲の化身を使役するんだったな。立ち絵が無くて見たことなかったから余りの美人ぶりに色々飛んでたけど。
ゆっくりと下ろされた俺に向かってニコリとする雲の化身さん。青林はキリッとした綺麗さだけど、こちらはフワフワ柔らかい綺麗さだ。正式発表したら数少ない男性ユーザーの数が倍になりそう。
「えーと、
「はい。奥様」
ぶっほっほぉ!?
「お、おくさま?」
「俺の力で生み出したからな。俺とは色々繋がっている」
「ほ、ほお」
「安心しろ。然るべき時は繋がりを切っておく」
「然るべき、時?」
「聞きたいか?」
囁くような青林の声に、先ほどの一連の行為を思い出し慌てて首を横に振る。顔が赤い?うるせぇ!こちとら健全な男(20)じゃ!
「この屋敷で困ったことがあれば何でもお尋ね下さい、奥様」
「えっと、えっと、その、ですね」
「はい」
「まず、その、気恥ずかしいので奥様呼びは止めて下さい。お願いします」
「ではなんとお呼びすればよろしいでしょう」
「普通に『誠』で」
「駄目だ」
「え、なんで?」
「俺が呼びたい」
は??カワイイ。訴訟。
「じゃあ、読み方を変えて『セイ』で」
「セイ様、ですね。畏まりました」
プレイヤーネームなのでテキスト上では呼ばれ慣れているし、本名ではないこれなら良いだろう。彼女が了承したということは繋がっている青林も許したということだ。彼女、彼女?うーん。
「もし良ければ、俺も貴方をお名前でお呼びしても?」
「名前は無いぞ?」
「なんとなく分かってましたけど、俺が呼びたいので」
「なら良い。ふふふふふ、俺はかなり愛し子に甘いなぁ」
スリスリしてくる高身長系日頃は高圧的男子。カワイイ、可愛過ぎるぞ。俺の心臓はバックンバックン、コウカはバツグンだぁぁぁ!
「
「ほほぉ」
「はい!素敵なお名前をありがとうございます!」
「彩雲、か。気に入った」
カラフルな雲のことを彩雲といい、昔から縁起が良いとされている。キセモリを好きになってからこういう系統の知識が異様に増えた。恐らくオタクあるあるだ。
「愛し子、折角だ。褒美をやろう」
ぐいっと顔を上に向かせられたと思えば、楽しそうな顔が近くにあった。
「んむっ!?」
次いで、柔らかいものが口に当たる感覚。
「
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・きゃあああああああっ。俺の、俺のファストキスがっ、いやなんだよ速いキスって!ん?キス?鱚?奇数?きす?キスううう!?
「うわああああああああああああっ」
「セイ様!しっかり!」
「ハッハハハハハ!やっぱりお前は面白いな!そんな所も愛しているぞ!」
「追い打ちは止めてぇぇぇぇぇぇぇぇ」
こうして液状化した俺と彩雲さん、Sに目覚めかけているような青林との同棲が始まりました。果たして俺はこの死にゲーで生き残ることができるのでしょうか。次回、オタク君死す(嘘)。デュ○ルスタンバイ!
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