第2話 オタク君、入学する。

 「・・・なるほ、ど?それでこの方の編入を許可しろと?」

 「ああ。俺の傍にいるなら在学許可が必要だろう」

 「そうですけど!そうなんですけ・れ・ど!いきなり過ぎて驚きましたよ!」

 青林せいりんに連れて行かれたのは総長室。ドアを開けて「コイツの編入学を許可しろ」と開口一番に言い放った青林に、総長は飲んでいたコーヒーを吹き出した。あ、一応言っておくと、ちゃんとノックと入室の許可はとってから入った。流石だ青林。そんな所も好きです(恋愛フィルター有)。

 「貴方の説明を聞く限りでは、彼に召喚痕は残らないので、誠君を貴方の特別な従者と周りは認知できません。青龍系の証であるその首飾りも、単なる祝福と思われてしまいます。さて、どうしたものか」

 「俺がずっと近くに居ればいいだろう」

 「それ、お互いにストレスが溜まります。全力で止めますよ。それから、授業時間もくっ付いてるつもりでしょうが、彼が5年生の貴方と同じ程度の授業を受けられるとは思えません!その意味は、分かりますね?」

 「実技が中心にして座学も発展内容ばかりだからな。だが、コイツが勉強する必要はないだろ?」

 「編入学というのはそういうものです!」

 (めて、わたしの為に争わないで!)

 と、元凶が心の中で言ってみます。はい。

 ワーワーと半ば叫ぶように問答を繰り返す2人の横で、そういえば、キセモリでプレイヤーは「人間界とキセキの世界を繋ぐ巫祝ふしゅく見習い」で、修行の一環としてこの学園への入学が特別に許可されている人間だが(巫祝っていうのは、ざっくり言うとシャーマンみたいな、巫女さんみたいな、なんかそんな感じの人)その辺どうなってるんだろう?と呑気に考えた。

 「!そう、それですよ!」

 頭を抱えてうんうん唸っている総長にそれとなく聞くと、勢い良く立ち上がったので今度は俺らが驚いた。

 「なんだ急に」

 「誠君を巫祝見習いとして在学させれば良いんです!流石に青龍の一族の者の頼みと言えど、ただの人間をこの学園に置くことは難しいので。もちろん、きちんと勉強して、かつ青林君が適度に面倒をみることが条件です。如何でしょう?」

 「いや待て。巫祝の一族にバレたらどうするんだ。あの一族は中々面倒だぞ」

 「大丈夫です!そこはもう直談判で行きましょう!先代の巫祝は我々に借りがありますし、現・巫祝のご子息は継承を拒んで入学も拒否しています。寧ろ誠君が見習いになれば肩の荷が下りるでしょう。異次元へ来る術式を発動させられた辺り、素質はあると思いますよ」

 ではスケジュールを組み、手土産を用意し、書類を用意し・・・と生き生きとしだした総長に毒気を抜かれ、俺たちはまぁいっかとなった。

 「先方との話がつき次第、誠君の書類上の入学を認めます」

 その言葉は、まさか相手が拒むはずがないという確信が満ち満ちていた。うーん、この学生にしてこの総長室あり。言っても、人間など彼にとっては恐れるものではないのだろうが。

 「あくまで書類上、ですので。実質の編入学は来週から認めます。クラス等追ってお知らせするので、それまでに必要物品を揃えて衣食住の見当もつけておいて下さい」

 「俺がそんな考えなしに見えるか?」

 「そうですね。編『入学』と言ってるのに、と思うくらいには」

 「はいはい。分かったよ。んで、コイツの面倒はしっかりみるさ」

 「頼みましたよ。では、誠君」

 「はい?」

 「ようこそ、キセキの世界へ。そして、我が学園へ」




 「そういえば、俺って1年生になるんですか?」

 「そうだな。どうかしたか?」

 「いや、俺、二十歳はたちで」

 「ふむ・・・つまり、婚姻は出来るな」

 「婚、姻っ!?」

 「そう身構えるな。第一、俺らに年齢による学年は当てはまらん。木霊の一族などどうする」

 「あっ」

 木霊、つまり木の精霊。彼らはこの世界に木が存在する頃からいるから、年齢なんて数える方が難しい。そういえばキセモリでいたな。キセモリイメチェン企画で選ばれた3年生の木霊の一族キャラ。

 「つまり、勉強する者として1年生、と?」

 「その通りだ」

 「なるほど・・・いや、だからっ、婚姻!?」

 「追々、な」

 片目ウィンクに「しー」のポーズ付きだと!?

 (あああお父さんお母さんありがとう。誠はこの世に生を受けて大変幸せでした。先立つ不幸をお許し下さい。青林様がカッコ良過ぎるんです)

 「俺、いつ死んでも良い」

 「それは俺が困るから勘弁しろ」

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