第4話 天才治癒師はまた殴られる

さて、どうしたものか…と夜空を見ながら領地を歩いていた。


空は田舎だから満点の星空で空気も澄んで綺麗だ。

今まであった嫌な事が綺麗に流されそうだ…いや、それは嘘だ…

そんな簡単に今までの嫌な記憶なんて消えない…

それに心残りだってある。


出て行く前に一度エリスに会いたかったなぁ…


エリスは僕の双子の妹です。

エリスは僕と違い頭が良くて、魔法の才能が認められて今は王都の魔法学校に通っている。

卒業後は宮廷魔導師確定では?なんて言われるくらい才能に溢れる妹です。

僕の自慢の妹を尊敬して居ます。

いつもエリスと比べられるのは辛かったけど、エリスはエリスなりにいつも努力をして大好きな魔法を磨き、飛び級で入学した。

小さい頃は体が弱く、直ぐに風邪ひいてしまう様な女の子だったのに少しずつ大きくなって今では身長も変わらないし、顔も御母様に似て身内の贔屓目を抜いても美人だと思う!

学校に行ってから見てないからもっと成長して綺麗になってるんだろうなぁ…

でも、頑張ってるエリスの邪魔はしたくないから王都に行くって選択肢は辞めた。


これからは自分の力で頑張って生きて行こう。

幸いにも僕は沢山の家庭教師から多くの知識を教えて貰えた。

この知識を上手く活用出来たら平民でもそれなりの暮らしは出来るだろうと思うし。

元々贅沢な貴族の暮らしは僕に合ってなかったから丁度よかったのかも知れない。


これからは家に縛られず、密かに副業で貯めてたヘソクリ(金貨300枚)を使って自由に生きよう!!

勇者アークの英雄譚の様な自由な生き方をしよう!!


僕はそう意気込み拳を上げて意気込んで居ると突然何か硬い棒の様なもので頭を殴られて意識を失った…


そして、気付いた時には最初の場面に戻っていた…


すっげえ頭痛え…

何十回も殴られたから感覚が無くなりそうだけどやっぱり痛いものは痛い…


出て行く時にレスターが盗賊には気をつけろと言ってたのはこの事だったのか…盗賊じゃ無くて街で見た事あるゴロツキだったけどね。

僕はレスターにそこまで恨まれる様な事したのかな?

ゴロツキを雇ってまで襲わせるって相当な恨みが無いと出来ないと思う…

再婚したての頃は独断仲が悪かった訳では無かったから本当に分からない…


でも、なんかもうどうでも良くなって来た…


こんな酷い目に遭わされたし、義弟に婚約者や次期伯爵家当主の様奪われ、今まで頑張って勉強した事も副業で稼いだお金もに全て奪われてもう何も残ってない…


生きる事が辛くなって来た…


御母様に会いたい…


会いたいよ…


今まで見て見ぬ振りをしてきた感情が急に僕に押しかかってきた…


今までは忙しくて気付かない振りが出来ていたけどもう無理…


御母様…


僕はもう生きて行くのが辛いです…


今まで父上に認めて貰える様に必死に我慢してきたのに全てが無くなっちゃったよ…


頑張ればいつか報われると信じてたのに…


僕の人生って本当にくだらない人生だった…


昔も今も本当にくだらねえ…


俺の人生はしょうもない人生だった…


あれ?

なんか急に暖かくなってきた…

そして、よく分からないイメージが頭の中に流れてくる…



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