第三部 王都ウールバニア
第七章 ウールバニア到着〜
第86話 精霊族との邂逅
https://kakuyomu.jp/users/kaoru-todo/news/16817330652487287101(挿絵)
僕らがコットンライクをぬけだした直後。
東へむかう街道が森にさしかかるところまで来ると、バラバラと人影がよってきて、馬車をかこんだ。弓矢を持って、古代風の服。鳥の羽飾りや木の実のアクセサリーを身につけている。精霊族だ。
「クピピクコ!」
「ピラー! ピクッピ!」
「コピピクト、コピーピラー!」
人間語に
「われらの仲間を返せ!」みたいな内容だ。
「かこまれてんで」
「僕ら、精霊に恨まれることしてないよね。仲間を返せって言ってる」
「あっ、われですね!」
馬車からとびだしていくエル。すると、精霊たちは泣きだした。
「おおっ! なげかわしい。エアリーサン。なんて姿に……」
「これもモンスターの仕業か!」
いや、違うんで……まず、モンスターじゃない。
僕らはモンスター変化をといた。
「待ってください。僕たちは人間です」
「人間どもめ! よくも我らの仲間を魔物などに!」
「いや、それはぽよぽよ職になってるだけで……」
「ゆるさん!」
ああ、話になんない!
弓矢をかまえて迫る精霊たち。
もちろん、僕らの力なら、けちらすのはかんたんだ。でも、精霊族とは争いたくないんだよね。
「エル! 早く精霊に戻って!」
「えっ? われはウサギの力、気に入っておりますが」
「いいから、早く!」
「そうですか? 残念ですが、わが神の仰せなら……えい!」
エルが精霊に戻ると、まわりの精霊族たちは落ちついた。
「こ、これは? 何が起こった?」
「エルが変化の力を得たのか?」
「わけがわからん……」
それにしても精霊ってのは綺麗なもんだなぁ。男も女もギリシャ彫刻みたいだ。すらっとして、細マッチョ。色白で金髪に銀髪。顔立ちも整ってる。平均が世界トップレベル。けど、僕の憧れのワレスさんのほうが、もっと綺麗だね。
「このおかたは、ぽよぽよ神なんだ。われにウサギの力を授けてくださったんだよ」
エルが事情を説明すると、ようやく緊迫した空気がとける。よかった。森のなかで静かに暮らしてる人たちと戦いにならなくて。
「ぽよぽよ神? ほんとに? ただの人間の子どもに見えるが?」
人間だからね。子どもじゃないけど。
「これはわが神さまの仮のお姿にすぎないんだ!」と、エルは主張する。
いやいや。こっちがほんとだよ?
「わが神さま。あのお姿をみなにもご
「しょうがないなぁ。ぽよぽよ神!」
「おおっ!」
「ぽよぽよの神だ」
「まちがいない」
ひれふす精霊族。
気持ちいいなぁ……。
美しい人々にあがめたてまつられる僕。ほんとの神さまになった気分。
調子にのって、神獣ソロモーンや白虎になってみせた。けど、白虎はなぜかネコりんになった。白ネコりん。
「虎じゃないじゃん! てか、なんでネコりんになれるの? 僕の心は変幻自在? ソロモーンはハムスターだし……」
ハッ! これらに共通するのは、小動物……僕の心は小動物かっ!
「かーくん、おもろい特技やなぁ。うらやましいわ」
「シャケ。神獣ティアパールになってみてよ」
「ええで?」
三村くんがティアパールに転職すると、そこにはピチピチはねるシャケが一匹……には、さすがにならなかった。なんの変化もない。
「つまんない! なんでシャケになんないの? 名前シャケじゃん? 名は体を表すだよ?」
「いやぁ、おれもシャケ変化したかったわぁ」
したかったのか……。
けど、これでいっそうどよめきが僕らを包む。
「ここにも神獣さまが!」
「慈悲深き海の神よ!」
ふーん。精霊って、その人がついてる職業を見わける力があるんだな。
「それだけじゃないんだよ。ほかにも神獣ライトウルフさまや、神獣セラフィムさまがいらっしゃるんだよ!」
ぽよちゃんはぽよぽよなのに、ウルフの心を持ってるんだ。ぽよぽよなのに……。
「なんという奇跡だ。我らの誰もなれなかった神獣に、これほど多くの者たちが」
「僕らの仲間には、神獣クィーンハピネスもいるよ?」
と、僕が言うと、思ったとおりだ。精霊たちは衝撃を受け、しばし声も出せなかった。
ようやく我に返ると、
「大いなる神々よ。なにとぞ、我らのために、そのお力をお貸しくださいませ。我らの娘たちが数多く魔物どもにつれさられました。いけにえにされるという話を聞きおよびます。これより、我ら救いにまいる所存。神々のお力を我らに授けてはくださいませぬか?」
あっ、調子にのりすぎちゃった。ゲリラを置いてきたのに、けっきょく、そうなるのか。
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