第85話 コットンライク脱出



 なんとか勝てた。

 アラームもふせげたし、歯車のおかげでミニコの数値が爆あがりしたし、なんなら、ウジットのHPも99999吸っちゃったもんねぇ。


「メカぽよぽよか。メカぽよ……メカぽんだね!」

「キュイ」


 あっ、メカだから、ぽよぽよなのに言語が通じない。

 まあいい。仲間も増えて、工場脱出。急いで馬車に帰った。

 馬車のなかでは人間(三村くん、モッディ)と魔神(ホムラ先生)と魔物(ゴウヨンさん)が賭けポーカーに興じている。そのお金はどこから出てるのか? たぶん、前に僕があげたり買ったりしたやつ。


「……買い物は、すんでるんだよね?」

「も、もちろんや! ほれ。食料も水も買うたで?」


 馬車のすみに肉や野菜の山があった。僕はサンダーをながめた。


「サンダー。お釣りある?」


 サンダーは首をふる。


「えっ? ないの? なんで?」


 百億円以上も渡しといたのに、いったい、何を買ったら使いきれるんだ? ゴウヨンさんより強欲なモンスター神官にでもぶんどられたのか?


 サンダーは黙って、僕の前に何やらさしだした。


「これを買ったの?」


 こっくりとうなずく。


 どう見ても、トカゲ形の古い石なんだけど……ヒスイかな? エメラルド? 百億円の価値はなさそう。やっぱり、モンスターにお金の価値はわからなかったか。しょうがない。


「まあいいよ。じゃあ、その石はサンダーが持っててね?」


 こっくりとうなずく無言のトカゲ。

 しゃべらないなぁ。ゴライさんと、どっちが寡黙なんだろう?


「じゃあ、出発。出発〜」


 僕らはまたまた、ぽよぽよ&ブタさん一行に化けて、コットンライクをあとにした。

 だから、その翌日、遅れてたどりついた蘭さんたちの活躍を見てはないんだけど……。



 *



「曲者! 関所やぶりだ!」

「人間どもが攻めてきたぞ! ウジットさまを呼べ!」


 わざとさわいでボスをおびきだしたロランたちの前に、ドスンドスンと地響きを立ててやってきたのは、どう見ても巨大なワーム……。


「イヤー! ウジットって、ウジじゃないですか! ウジ! キモイ、キライ、キタナイ! さわらないでー!」

「ああ、ロラン。落ちつくだが。わやつが倒すよ?」

「ヤダー! ゲスい、クズい!」


 わははと笑うワーム。

 コイツのHPを吸ったかーくんのために注釈しとくと、いちおうリアルなタイプではなく、イモムシのぬいぐるみ的なやつ。


「きさまたちなど、古代から呼びだした魔神ゴーレムの餌食になるがよいわ。いでよ! 巨大すぎる部品!」


 何も起こらない。

 あせるワーム。


「いでよ! 巨大すぎる部品!」


 やっぱり何も起こらない。

 涙目のワーム。


「い、いでよ! 巨大すぎる部品! その技をひとたび目覚めさせれば一国をも滅ぼす力、見せてやるがよい!」


「……」

「……」

「……」

「……」


 何も起こらない。起こるわけがない。魔神ゴーレムの部品(?)は、可愛いぽよぽよ型に進化して、姿をくらましていた。


「あいつ、さっきから何を言ってるんでしょう?」

「ロランがキモイとかキタナイとか言うけん、おかしくなっただない?」

「だって、ウジですよ? ウジ。キモイじゃないですか。存在をゆるされない生物です」

「あっ、なんか、シュンとしとうよ?」


 ロランの両側から、アンドー、イケノの出雲弁攻撃。ロランを出雲弁にしようと洗脳を試みている。


「僕、ああいう不潔っぽいのは、ちょっと……」

「わやつで倒すけん。な? セイヤ」

「うん。やらか」


 アンドーくんの毛刈り、からのトドメ発動。力五万なので、一瞬でかたがつく。


「あれ? 毛刈りで防御けずぅつもりが、トドメんなったわ」

「だって、HP二万で防御力千でしたから。ボスにしては、やけに弱いですね」

「まあ、早にすんで、よかっただない?」

「そうですね。キモイやつは消えうせろ」


 ロランは虫に対して辛辣しんらつだ。

 ゲリラのリーダー、ポルポルネオが首をかしげながら、やってくる。


「コットンライクのウジットは、HP10万ごえの化け物級ボスだと聞いていたので、用心していたんですが」

「ウワサっていうのは、そんなものですよ」

「それにしても、あの巨大なボスをほんの一撃で……さすがはゴライさまのつれてこられた強者です」

「ふふふ。さあ、さきに進みましょう」


 勇者たちは順調に進む。そのかげに、かーくんの活躍があったことなど知るよしもない……へへへ。

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