第65話 神獣白虎
次はトイだ。ネコりんたちはいつも補欠あつかいして、単独では戦わせなかったからさ。
だって、ネコりんには気まぐれって特技があるから、ここぞってときに毛づくろいするんだよね。毛づくろいなら、まだしも自分の幸運値があがるからいいけど、アクビだったら、なんの効果もないからね。しかも、アクビの発生率だけ異常に高い。
そのなかで、子白虎になれる白猫のトイにだけ、アクビ発生率を抑えてくれる猫鈴をたくさん装備させてある。
白以外のネコりんは子白虎じゃなく、化け猫に変化する。きっと、トイだけが白虎になれたのは、そのせいだ。白い虎だから白虎だもんね。毛なみで生まれつきなれる職業が決まってるネコりんたち。意外と格差種族。
「じゃ、トイ。僕とロランが後衛につくから、自力で倒してみてね」
「ミャ〜」
うーん。この可愛い白猫を戦わせる。モフモフできるだけで充分、仲間にいてくれる価値があるんだけどさ。
トイの現在のステータスは——
「……」
僕の目は点になった。そして、そののち、魂からの雄叫びをあげた。
「ギャーッ! ストップ、ストップ! トイが死んじゃうー!」
そうだった。忘れてた。ネコりんって、すごく、すっごく弱いモンスターだった。しかも、ぽよちゃんと違って、あんまり鍛えて来なかったからさ。一回だけ、全ステータスにプラス1000したおぼえはある。ひたすら猫車のなかでモフりたおす任務をあたえてたんだー!
トイ
レベル62(白虎)
HP1134、MP2061、力1185、体力1125、知力3343、素早さ1437、器用さ1622、幸運1752
もちろん、これに多少のマスターボーナスと白虎の就労ボーナスはついてる。でも、HPがまだ1134だよ! 一瞬で倒されちゃう。
対するモンスターのほうは、シープンA、ミニカンガルーA、ホルスターAだ。
シープンはさっきの羊。ミニカンガルーはコットン港で出たボス一家の小さいやつ。ホルスターはなぜかカウボーイの服着たホルスタイン。ムチとピストルを持ってる。
一対一なら、なんとか勝てるだろうけど、一対三じゃ、かこまれてボコられるよ。
「ヤ、ヤバイ! ロラン。さっきカンガルー戦で吸った数値わけてあげるまで、戦闘止めておけるかな?」
「でも、さっき、トイがアクビしてましたよ? あれって、ネコりんの行動じゃなかったですか?」
ウッ! もうやっちゃったのか! よりによって、アクビ。
「ああっ、トイ! まだ動けるの? 動けるなら、せめて白虎に化けようよ?」
「ミャっ?」
子白虎、白虎に化ければ、数値が爆あがり。
今でも素早さが敵モンスターの平均にくらべて三倍だから、三回までは行動できるはずだ。お願いだから、特技の化けるを使ってくれ。
だけど、僕の願いもむなしく、トイは
「変だなぁ。前に戦ったとき、すぐに子白虎になったから、てっきり自動で子白虎になってくれると思ったのに」
「自動じゃなかったんですね」
「たまたま、化けるを最初にしてくれただけだったのか」
当然、次はモンスターたちの行動。
ミニカンガルーのミニキックが
ホルスターはムチとピストルで二回攻撃だ。
続いて、シープンの羊毛の舞。自分で毛刈り始めるから何事かと思ったら、刈った毛を風にただよわせた。なんと、毛の一本ずつがシープンに変身!
「ギャー! 孫悟空的なスキルー! もう死ぬじゃん。次のターンにトイが死んじゃう!」
残念だけど、トイはまだ一人で戦わせられないな。あとで僕の数値をわけてあげないと。
「かーくん。次のターン、僕らで敵を倒しましょう」
「そうするしかないね」
と思ってたら……あれ? 羊毛から変身した羊たちがいっせいに襲ってくる! 変化したターンから動けるのか。
もうダメだ。ごめん、トイ。戦闘不能になっても、蘇生させてあげるからね。
そう思ったとき、無数の羊のマトンアタック(通常攻撃の二倍ダメージ)が、なぜか、カキンとはじかれる。
「かーくん。もしかしてだけど、さっきから、トイって敵からのダメージ受けてないんじゃないですか?」
「神獣の気だ。白虎に就労中だから、化けてなくても効果はあるんだ!」
よかった。助かった。
羊たちのマトンアタックは物理攻撃だから、みごとにみんな、はねとばされる。
「ミー!」
あっ、トイが本気になった顔つき。行くよって顔も可愛いよね。
次の瞬間、ちっこい白猫は巨大な白虎に。数値が全部、十倍になった。
そのあとは、猫パンチと猫キックの嵐だ。あっというまに羊の大軍は
よく見たら、白虎をマスターしたら、ボーナスとして化けるの発生率50%アップだった。子白虎、ネコりんのマスターで30%アップしてるから、基本値とたして、たぶん九割がたは化ける行動をとるようになる。
ちゃんとマスターしてからチャレンジさせるべきだったね。そしたら、かなり使える子になるよ。
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