第61話 ぽよぽよ軍団製造の野望



「ね、みんな。いろんな職業マスターしとくと便利だよ? 僕がお金だすからさ。なれる職業になっとかない? とくに無限のやつは誰でもなれるから」


 ひひひ。ぽよぽよ軍団を作る僕の野望は、まだ終わらない。ここでみんなに、ぽよぽよマスターさせて、こっそりぽよぽよ神であやつっちゃうもんね。


「まあ、そうですね。僕は危険察知使えるけど、聞き耳は便利な技だから、全員が使えてもいい」と、蘭さんも賛成してくれる。ひひひ。


 というわけで、僕は神官さまに一億円金貨を渡す。


「細かいお金ないんで、これでなれるだけ。お釣りはいりません。職業って、とりあえず就労したら、マスターしてなくても、何回でもその職業につけますよね?」

「もちろん」

「なので、今ここで転職をくりかえしても問題ないですよね?」

「よいとも!」


 神官さま、ご機嫌だ。一億円だからなぁ。モンスターの世界も人間界と同じ貨幣がまかりとおるってのが不思議だけど。大昔、魔族と人間の交流があった名残かな。


 というわけで、僕らは、ぽよぽよ、スライム、ガーゴイル、竜兵士、バジリスクなどの基本職に一式ついた。何よりも、ここではモンスターが転職できるのが嬉しい。


「あれ? 動く死体だけなれない?」

「そなたらが死体ではないからじゃ。なんなら殺してしんぜようか?」

「……いえ、けっこうです」


 もしかして、戦闘不能になってるときしか就労できない? 動く死体は『のっとる』っていう、敵のターンをぶんどってしまう荒技が使えるから、基本職のなかで、ズバぬけて便利なのに。猛、動く死体マスターしてたけど、よくなれたな。


「さっき、シルバン戦闘不能になったとき、まんま、つれてきたらよかったねぇ」

「動く死体って、マスターするまで戦闘不能じゃないとダメなんじゃないですか?」

「うっ、ずっとはツラいね!」


 蘭さんのするどい指摘を受けた。


 そんなこんなで、僕らがモンスターの職業を開拓した喜びでワヤワヤしてたときだ。

 とつぜん、神官が言いだした。


「そなたら、もっと貴重な職業につきたくはないか?」


 貴重? たしかに、最初のお品書きには見なれたモンスターの職しかなかった。一番強いとこでドラゴン系。それも、レッドドラゴン、ブルードラゴン、ブラックドラゴンなどのふつうになれる職業の最上位職まで。オーロラドラゴンは神獣だから、このリストにはない。


「貴重なって、どんな?」


 たずねると、そっと二枚めのお品書きが出されてくる。ひろげた僕らは驚愕した。


「なっ! これは——」

「スゴイ!」


 なんとそこには、こんな文字がならんでる。



 神獣ダークウルフ(2/20)

 神獣ライトウルフ(3/20)

 神獣フラウ(0/10)

 神獣チャーミー(0/10)

 神獣ソロモーン(1/10)

 神獣ユニコーン(1/5)

 神獣山びこ(3/5)

 神獣ティアパール(1/5)

 神獣オーパーツ(0/5)

 神獣白虎(1/3)

 神獣青龍(1/3)

 神獣朱雀(1/3)

 神獣玄武(1/3)

 神獣四皇帝(0/1)

 神獣セラフィム(0/1)

 神獣サタン(0/1)

 神獣クィーンハピネス(1/1)

 神獣キングエタニティ(1/1)

 神獣ホワイトフェニックス(0/1)

 神獣ヴァンピール(0/1)

 神獣ダークマター(0/1)



「なぁー! し、神獣っ?」

「全部、神獣ですね」

「神獣って、そうかんたんになれるもんじゃないよね。あっ、バランがなったクィーンハピネスも載ってる。1/1か。バランがなったからだね」

「スゴイじゃないですか。神獣って、強いんですよね?」


 蘭さん、目を輝かせて。


「強さもだけど、特性やスキルが無二だよね。僕の山びこも神獣だから、このなかの一人は僕だとして、3/5なら、ほかにも二人、山びこがいる」

「もしかしたら、精霊の山びこなんじゃないですか?」


 そうかもしれない。僕は山びこ自身から魂を受け継いだ。世界のどこかには、まだ山びこの精霊が生きてるのかもね。そう思うと、ちょっと嬉しい。


 それはそうと、僕はもっと重大な事実を、そこから読みとった。


 神獣ホワイトフェニックス。神獣キングエタニティ。神獣ヴァンピール。神獣ダークマター。

 これって、禁じられた古代四大魔法の神獣たちだ。スリーピングが前に話してた。魔法のために殺されたから、0/1なんだよね?

 でも、とすると、どうして?

 神獣キングエタニティだけ、1/1なんだけど?

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