第52話 離ればなれの小船
「そうだ。かーくん。パーティーをわけて行動するなら、僕が吸血の指輪をつけてても、効果ないですよね? これは返しておくので、かーくんパーティーの誰かに装備してもらってください」
コロンと蘭さんがブラックオニキスの指輪を手渡してきた。同時に三村くんがもう一個、指輪を出す。
「あ、また増えたで」
「じゃあ、これで三人が指輪つけられるね。トーマスとイケノくんがいいかな」
それと、僕の数値がまただいぶ、あまってる。蘭さんのために、せっせとつまみ食いしたからさ。この前は人間の仲間にわけあたえたから、今度はモンスターたちだ。モンスターは基本数値が人間より伸びにくい。小説を書くであげられる上限も低い。気になってたバランのステを重点的にあげる。バランは繊細華麗に見えて、じつは壁役なんで、頑丈にしとかないと。
僕が最後に見たバランの数値が、このくらいのときだ。みんなの一覧表作って、都度メモってる。職神の洞くつで特訓する前だから、弱いのなんの。
レベル27(庭師)
HP11935、MP106、力425、体力12902、知力262、素早さ388、器用さ366、幸運131
で、書きなおしたのが、コレ。
レベル57(剣聖)
HP16755、MP7836、力8335、体力42097、知力7885、素早さ6915、器用さ18122、幸運12864
ちなみにこれは職業マスターのボーナス値が入った数値。じっさいはこれに就労中の剣聖の就労ボーナスがつく。剣聖のボーナスはすごく高いから、体力なんか六万近くなる。で、この上に薔薇効果で毎ターン全ステータスがプラス1000されていく。
「バランは剣聖かぁ。けっこう、がんばってたんだね」
「わたしは騎士ですからね。剣聖と賢神はマスターしておきたいのです」
そういえば、薔薇の騎士って種族だった。あのころはいっしょに出てくる姫りんごを守ってたっけなぁ。
ほかのあまりは、力をクマりんとシルバンに三万ずつ、MPをモンスターたちに各千ずつふりわけた。端数を仲間になったばっかりのサンダーに。
さあ、これですべての準備が整った。僕らは甲板からおろされた小船に乗りうつる。
港は見たところ無人だ。閉鎖されてないのかな? 停泊してる船もない。
「ああっ、ロランたちの船と着岸地点が違っちゃったよ」
同じ港のなかではあるけど、けっこう端と端くらいになったなぁ。
港に乗りこむ前にしっかり準備しといてよかったというか、なんというか。
「ふむ。さっそく別々になったようだね。しかし、道案内がそれぞれについている。問題なかろう。いざとなれば、ウールバニア前で落ちあえばいい」と、ホムラ先生は冷静そのものだ。
たしかに、それぞれ預かりボックスがあるから、手紙のやりとりもできるしね。
港の地理を知るモッディさんが説明してくれた。
「どうせ、港から街へ出ていくゲートは一ヶ所なんだ。進んでいけば、イヤでも出会うよ」
「そうなんだ。じゃあ、ゲートの前で待ってればいいですね」
というわけで、僕らは波止場におろされる。ボートはすぐに母船へと帰っていった。モンスターがウロついてるかもしれない場所で、小船だけ待たせてらんないもんね。
波止場におりたとたん、僕はいつものルースストーンをひろった。いっぺんに五、六個。十兆円金貨も落ちてる。十兆円金貨って、華麗な浮き彫りがされた頭くらいのデッカイ黄金のかたまりだ。厚みも二十センチある。けっこう強い敵が出てくる証拠だ。
「……かーくん。その金貨をくれたら、今後、私が新しい魔法をひらめくたびにコピーしてあげよう」
まあ、いいか。十兆円くらい、毎回ひろうもんな。
「じゃあ、どうぞ」
「ふふふ。ふふふ……」
ホムラ先生、協力しに来たのか、お金を集めに来たのかわからない。
波止場を歩きだすと、僕はすぐに気づいた。まんなかあたりにボスがいる。それも五匹ならんでる?
「いますね。ボス。前衛は僕、トーマス、シャケと、ぽよちゃん……いや、ぽよちゃんは後衛でも使えるスキルをたくさん持ってるから、後衛お願いね」
「オッケーすよ!」
右耳で「キュイ」左耳で「オッケーすよ」と聞こえるサラウンド音声。
蘭さんのパーティーはバランスとれてたけど、僕らの隊、ちょっと力技タイプにかたよりすぎちゃったな。シャケ、トーマスが壁役だ。でも、シャケは力を数万にしたから、アタッカーにもなれる。シルバンもアタッカー。
魔法使いが少ない。いつもは、たまりんがいるんだった。たまりんがいない穴は大きいね。モンスターたちは魔法書で回復魔法を全員使えるようにしてあるんで、それだけは救いか。
まあ、要するに僕とぽよちゃんで倒してしまえるんだけどさ。
「後衛は、ぽよちゃん、イケノくん、トイ、ヒカルンにしようか。モッディさん、ホムラ先生はNPCだけど後衛ね。ジョーンズさんは……」
「ミーは前衛むきですねぇ」
「じゃ、前衛で」
そして僕には付属品あつかいのミニコもついてる。
これなら、やれるか。
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