第48話 出発前の再会
お祭りの一夜は明けた。
モンスターたちにも運のいい子、悪い子、負けても喜んでる子もいれば、着々とコインをためる子もいるもんだ。
ケロちゃんは大負けしてボロボロ泣きながら石化舌で僕のほっぺたなめまわしたし、クマりんは勝っても負けても無表情。モリーとヒカルンは賭けの意味がわかってるのかどうか。ひたすら、ぽよぽよレースをながめてた。コイン賭けもせずに。
前に助けてあげたピンキーハート号も、すっかり元気になってた。ぽよぽよ草、また届けてあげよう。アンドーくんが宿舎の庭で育ててるからさ。
ぽよちゃんと、くぽちゃんは、自分でぽよぽよレースを走りだしちゃうし、シルバンとミニコはその応援して喜んでた。
サンダーはずっとポーカーで地味に勝ってたな。やっぱり頭脳戦むきの子なのかもしれない。
そして、バランはとにかく何やっても大当たり。ルーレットでの大賭けがとくに好きみたいで、毎回全額を賭けちゃうんだけど、なぜか勝つ。つまり、コインは増える一方。
僕はできないなぁ。あんな全賭け。バランはそういうハラハラドキドキする過程が好きらしいんだよね。精霊って、パリピ……。
ジョーンズさんはてきとうに勝って、てきとうに負けて、トントンだったみたいだ。
ホムラ先生はいつもどおり大負けね。一万枚全部スルとか、それはそれで
さて、翌朝。
「はぁ、昨日は楽しかったね。僕はまた勝っちゃったぁ。幸運値マックスだもんね。当たるよね。みんな、おはよう〜」
「おはようっす〜」
「うっす!」
あっ、くぽちゃんもやっぱりヤンキー語なんだ。それが、ぽよぽよの標準語なんだ……。
蘭さんや三村くんたちも集まってきた。いよいよ、出発だ。ウールリカへ。
「ゴライとモッディも来たね。じゃあ、エレキテルへ行くよ」
船はエレキテルの港に停泊してるらしいからね。船員はワレスさんが用意してくれた。
その前に研究所によって、充電とホムラ先生のひろいあげだ。
「やあ、君たち、よく来たね。さあ、行こうじゃないか。いざ、敵地へ!」
元気だなぁ。昨日あんなに負けてたのに。
「そうそう。君たちに紹介しよう。私の開発した新ゴーレムだ。その名も……」
その名も?
「…………」
やけにためるな。
「その名も、ネオゴーレム」
ふんふん。ネオゴーレム。ミニ、ギガと来てネオか。ま、ありがちなネーミングっていうか。ホムラ先生のことだから、また変な機能つけてる可能性はあるけどさ。
「ネオゴーレム、イケノタイプだ!」
ん? イケノタイプ?
その瞬間、奥のハッチがサッとひらき、ネオゴーレムが現れる。
これまでのゴーレムは、シルバンみたいな、遺跡に残された古代ゴーレムをモデルにした形だった。四角い石をつみかさねたオモチャのロボットっぽい。でも、新しいゴーレムは、どこから見ても人間にそっくりなアンドロイド。ただ肌はメタルフレームで、動きも微妙に機械的だけど。
「イケノ……?」
つぶやいたのは、アンドーくんだ。
うん。わかる。金属でできたボディだけど、ハッキリと、誰を模したのか。
「セイヤ? セイヤだで?」
イケノセイヤ。悪のヤドリギの実験台になって、体が膨張し続けるモンスターに改造されてしまったイケノくん。アンドーくんの子どものときからの友達だ。
僕らがヤドリギの魂をやっつけるときに、その体ごと石化してしまった。
ネオゴーレムイケノタイプは、唇の両端をひきあげて人間に
「うん。わだよ。ホムラ先生に、新しい体にしてもらったけんね」
涙ぐんで感動の再会をしようとする幼なじみのあいだで、とつぜん高笑いする、ホムラ先生。
「ハハハ! どうだね? 私の智力に不可能はない。あの古代の鏡にかかっていた魔法を利用して、まずイケノくんの魂をボディからとりだし、そののち、ネオゴーレムに移したのだ」
悪のヤドリギは四天王のなかでも変わった特性を持っていた。古代、やつはなんらかの理由で自身の体を失い、魂だけでこの世をさまよっていた。自分の魂をいくつにも分裂させて人に取り憑き、あやつりつつ。
イケノくんも
「よかった! セイヤ……」
「まあ、体は死んだままだけど、コレもカッコイイが?」
てれくさそうに笑うロボット。スゴイな。仕草もイケノくんだ。ほんとに、イケノくんの魂が入ってるんだ。
さすが、ホムラ先生。
コイン一万枚ねだるだけはあったよ。
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