第3話 人類最強
―トワルズ家 本邸―
「おはよう、アトラス。」
「お兄様、おはようございます」
皆もう起きているのか 早いな…
「さて、今日は我がハイゴルド公爵家にとって、アトラスにとって大事な日だ。
アトラス、作法についてもう一度アリアに見てもらえ。」
「お願いしていい? お母さん?」
「あら、何回だっていいのよ? 大きくなったとはいえ心配だもの」
「儂でもいいんじゃぞ! アトラス!! なぁに! 儂に任せておけば間違いはない!」
嘘つけよ… いっつもマリアナおまあちゃんに怒られているくせに…
「親父はあてにならないぞ! アトラス、俺にしておけ!」
ラトラス叔父さんも変わらないくせに…
「うん。 大丈夫みたいね。 完璧よ、アトラス。」
正装に着替えると俺たちは浮島に行くため飛行艇に乗った。
成人の儀は教会内部にあり、そこで十歳の誕生日の日に成人の儀は行われる。
毎年、成人の儀に臨むものが多いため今日から王都では成人祭がある影響下か
朝から町に楽器の音が響いていて賑やかだ。
「今から、飛行場に乗って浮島に向かう。 アトラス、その誓で良いのかもう一度自分中
で再確認しておけ。 生涯付き合うものだからな」
これが飛行艇… すごい、創造していたよりもでかい…
10万人近くが乗ると思えば当然だけど… すごいな…
にしても変だな… いつもはうるさい二人が朝から静かだ…
流石に緊張しているのかな?
「あれは…、皆膝をつけ。陛下だ」
あの人が、第34第ジェノス帝国皇帝 ケルゴウス帝…
始めてみる陛下は祖父に負けず劣らずの巨躯ですべてを見通すような眼力で眼こちらを見据えながら歩いてきた。
正直… 怖いな。
「ジオラス・ハイゴルド。 表を上げよ。」
「ハっ!!」
「この赤髪の少年が孫のアトラスか?」
皇帝は2メートル近い長身から見下ろすようにアトラスを見据える。その紫の瞳にアトラスはすべてを見透かされている気がした。
「さようでございます。陛下。」
「ほう。あまり似ておらぬな…」
「アトラスよ」
「ハッ!!」
!!!
なんだこの感覚… 名前を呼ばれただけなのに体が重い…
「今日の誓はそなたのこれからの在り方を表す。 期待しておるぞ。」
「ハッ!」
びっくりした、話かけられるなんて…
皇帝の周りにいた人もやばかった… なんだあの魔力量…
あれが皇帝の直轄部隊‘’紫電‘’…
「誓を宣言する者、その親族はこの飛行艇に乗り込め。」
「「「ハッ!!!」」」
パチッ! パチッ パチパチパチッ!!!
「お母さま! 紫色の魔力だ!」
「ほう。 魔力とわかるのかマリアよ。 これが皇帝の魔力じゃ。
魔力とは極めると自然現象に近いものになる。 皇帝は少しまた特別じゃがな」
十万人近くを乗せた飛行艇を一人で動かしているのか?
これが皇帝… 始まりの一族か…
あれが‘’誓の場‘’…
成人の儀は第三の浮島、『誓イ島』、コロシアムのような天井だけが開けた教会の中央に神官と誓いを宣言する者2人分のスペースしかない‘’誓の場‘’がある。
「どうしたのおじい様。 今日はやけに静かね。」
「ぬう。何かの… マリアよ気を緩めるじゃないぞ」
「はい…」
「次の者、前へ」
「はい」
「我が名は…」
やばい… 緊張してきた。 もうすぐ俺の番だ…
「ふふっ アトラス。 そんなに緊張しないで。 固いよ」
「ああ。 ありがとう妙。 いざ本番となると…」
「実は私もだけどね… 頑張ろう!」
「ありがとう」
妙は… 本当に何というか… 綺麗になった。
以前までは妙の珍しい容姿にケチをつける奴らもいたが今では妙の親衛隊?
とか言ってやがる。 全く子供に混じっているおっさんたちはいつか何とかしなければならない…
「次の者、前へ」
ふう… 来てしまった。 やるしかないが… 噛みませんように!!!
「頑張ってね、アトラス!」
よし、もう大丈夫だ。
ヴァイス:「ジオラス卿に少し似てきたか」
ケルト:「あぁ?アリア似だろ?」
ナラリア:「うるさいですよ、2人とも」
声大きいなあの人たち…
って四大公爵家の当主様たちじゃないか…
少年は浴びる視線をものともせず一歩、
また一歩と踏みしめるように誓の場へのらせん状の階段を上がって行く。
「アトラス…」
「汝の名を述べよ」
「我が名はジェノス帝国 ハイゴルド家 嫡男 アトラス・ハイゴルド」
「己が名に懸けて唯一神にかけて誓を全うすることを誓うか?」
「我が名に懸けて…」
―ジオラスSIDE―
「これは…、いかん!!!!」
「親父⁈」
ジオラスは周囲に風が吹き荒れ成人の大人が吹き飛ばされんほどの勢いで跳躍すると誓いの場の上に立つ。 いや、空中に足をついていた。
「「なッ!!!!!!」」
「ジオラス卿…、いかに救国の英雄といえど、これは…」
「紫電!!陛下をお守りしろ!!!!!!!」
『我を認めし銀腕よ、ジオラス・ハイゴルドの名の下に力を貸せ』
『不動領域』
ドゴォォォォォン!!!!!!!
ジオラスが神官の問いに答えず声を張り上げた瞬間、十万人近くを収容する協会がちっぽけに思えるような、否、自分の存在が疑わしくなるほどの存在感をもつ黄土色の竜が現れた。強者ぞろいである貴族の面々が誰も一言も発することはできず、足も動かせずただ、ただこの世の上位存在に立ち尽くした。
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