第59話 第6代
天魔大戦は、天魔帝双方の死で幕を閉じた。
長い戦争で、天界も魔界もかなりの被害を受ける。
魔界側は、7大魔王マモンの命とベールゼブブ(こちらはすぐ蘇って来た)の命が亡 くなった。ベールゼブブ領の中心である「城」も崩壊した。
人界にも、間違った召喚陣と手順で呼び出した馬鹿のせいが一番とはいえ、類が及んだ。疫病の悪魔バズスが、召喚主の手を離れ暴走したのである。
おかげで私の「異空間病院」はパンク寸前だ。
なにせバズスの疫病を癒せるのは私だけだったのである。
他のドクターの腕が悪いわけではない。疫病が強烈すぎたのだ。
被害は科学王国ルベリアだけでなく、召喚元である魔法王国フィーウにも及んだ。
手遅れになり、天界勢の必死の救助にもかかわらず、死亡する者は多数に及んだ。
核汚染のように、病気は軽い者でも次代にまで及んだ。
喜んだのはベールゼブブ領の住人だけだったろう。
何せ悪魔から見ても、グロイ病気ばかりだったのだから。
だが天魔帝の崩御と共に、天魔大戦は素早くおさまった。
完全に痛み分けであり、残ったのは天魔帝の御子だけだったのである。
そして生まれつき精神年齢が10歳ぐらいであった6代帝は、戦争の終結を望んだ。
魔界は、5代帝が魔帝城を破壊したため、3代帝がこういう事態に備えて封印していた、旧魔帝城が解放された。
人員も一緒に凍結されており、魔帝城の人手不足は即解決した。
天界は、天帝の側近が生き残っており、平和のうちに新帝の養育がなされた。
♦♦♦
魔界に冬、天界に夏が(破滅的な寒波と酷暑と共に)やって来た以外、魔界は平和なものだった。私の『勘』は今代期は長く続く長く続くと言っている。
七大魔王は一新され、魔帝の前での御前試合で就任が決定した。
もちろん戦闘能力だけで選ばれたわけではない。
様々な種目が、領地に即して決定され、開催された。
陛下の趣味で「見た目」も審査基準だったのは………まあ、個性ということで。
そして私は知らず知らずのうちに「運命の人」の誕生を目撃する事となる。
6代魔帝は「
魔界に王子が生まれたのだ。
第一王子、陛下を心から愛した優しい母(淫魔)から生まれ、早すぎる誕生の為、人界で苦労して育つこととなる「
彼は見た人なら、その人と同じ姿と記憶、思考になれる能力を持っている。
それゆえに、恐れる人も指示する人も両方が多い。
第二王子、邪神ニャルラトホテプ(女性型)と陛下の間に生まれた異色の王子。
生まれが生まれだけに、邪神に対して大変詳しい第3代帝の統治する星で育つ。
母親が母親だけに、かなり苦労しながら(3代陛下も個性的な方だし)育った。
苦労しただけに常識人の「ルドヴィーク」王子。
第三王子、夢魔領の統治者ベルフェゴールと陛下の間に生まれた。
陛下自信が孕んだ初めての子であり、魔帝城で甘やかされて育つ。
半透明の水晶の体を持ち「色付き」になれたのは成人してからだった。
父親との仲は悪く、陛下の頭痛の種にもなる。
これが「
第四王子、賢魔領を統治するアスタロトを母に持つ王子。私の「運命の人」
かなりのファザコン&マザコンだが、アスタロト(本名ゼロ)の教育方針は大変厳しく、修行続きの毎日を送るが、それが母の愛情だった。
大変母に似たきつい性格をしている。
「フェニックス」であり、不死性で他の王子を圧倒する。
支持者はそこまで多いわけではないが、カリスマに惹かれた強烈なシンパが多い。
これが「
第五王子、権魔領を統治するマモンを父に持つ王子。
生まれつき知識と知恵が備わっており、マモンの宮殿であまり構われずに育った。
唯一構ってくれた腹違いの兄に対しては、極度のブラコン。
詳しくは私にも分からない(!)のだが、どうも過去の王族の転生体のようだ。
これが「
第六王子。末っ子で、第一王子と同じような母親を持つ。母親は病弱で死去。
王子とは言うが、魔帝が競い合いを加速させるために男のふりをしていただけで、本当は王女。明かすタイミングを健気に待っている。
得意な能力は「呪詛」前世での記憶が根底にある。
これが「フィオーレ(本名フィオーラ)」王子(王女)である。
そして彼らは、生まれた順に「試練の穴」に入ることとなる。
特殊な空間で、そこで得られるパワー(経験値のようなもの)は非常に大きい。
その場に存在するだけで、レベルは上がり続ける。
ランダムに悪魔が放り込まれており、部下を得るのも目的の一つ。
ここは、時止めの部屋(部屋の外より中の方が極度に時間が流れるのが早い)と似た構造をしており、ほとんどの王子は20万年ほどで出てくる。
ここで死ぬ王子も多く(今回は魔帝が厳選したため被害なし)過去の王子たちを祀った霊廟があり、カロンが管理している。
ちなみに、私はこの空間の作り方を、リアルタイムで見て知っているので作り出す事ができる。未来、本当に作るとはこの時は分からなかったが。
そして運命の輪は加速する。
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