第57話 異世界戦争と私

まだ4代期半ば。平和な代として終わりそうな『予感』がするわね。


わたしは、まだ対「蛇」のアイテムを作る事に注力していた。

失敗を重ねていたからだ。「吹き飛ばしの扇子」はパワーアップしたけど………。

吹き飛ばすだけではいずれ戻って来てしまうわ。


それとは別に、わたしは、各領地に「分体」を放っていた。

言ってはいなかったが、少ない数で1代期からやっていた。最近増えただけだ。

理由はその領地の極秘事項などを調査させるためだ。

自意識を持つ「分体」は操らなくていいので便利だった。まあ、いずれ私の性格からは離れていき、別人になるのだが、その時は自由を認めて切り離していた。

害にならない、どころか分体たちは自由にしてくれた私を敬い、秘密裏に信仰した。

結局、意図しない所で味方が増えていったわけである。

分体たちのその行動を知るのはだいぶ後の話だったが。


対ワーム戦に使える道具を作るのは、「聖」属性を持つことも必要だと判明した。

私は悪魔だけどいいのだろうか?創世神の能力を使えば容易いのだが………。

悩んだ結果、私は「身につけた時だけ」聖属性を使えるようになるアイテムを作る事にした。しかも複数個身につけないと作用しないものになった。


必要なのは生半可なエネルギーではない為、家の中でも特に厳重に隔離する。

近付くためには特殊な全身を覆うコートが必要だ。『勘』が訴えるので複数個作る。


まず、自分の属性を「人間」レベルで「中間」に変える指輪をつける。

次に「聖なる衣」ギリシャ神話の女神の様なコスチュームで「聖属性」に変える。

最後にミスマッチだが「統合のバイザー」をつけることによって、私は全ての属性を極めた状態になる。魔と聖が融和している不自然な状態。

気持ち悪いので、長い事は着けていたくないが………しょうがないのである。


その状態になる事で生み出したのが「捕縛のピストル」科学王国ルベリアを見て発想を得た。外見はガラスの水鉄砲(タンクの部分が捕縛カプセル)といったところ。

ダミー相手に試してみたのだが―――腕の骨が全部折れた。反動で。

目標?まともに飛んで行く訳がない、思い切り外れていた。

しかも普通の治癒魔法では治らないと来た。

自分がヴァンパイアで良かったと思ったのは久しぶりだった。


そこから後は、ひたすら改良に心血を注いだ―――。

「儀式場」で奇跡を起こして、実用可能に出来るように―――つまり奇跡でも起こらなければ実現不可能だったのだ―――してもまだまだなのを確認した時は、不本意ながら泣きそうになったものだった。

一度、また自らの過去に戻り、憎しみに火をつけることが必要だったほどだ。


そこで、少し視点を変えた。もう知っているほかの場所―――科学王国ルベリアや魔法王国フィーウなど―――の過去にも戻ってみたらどうかと。

即座に実行し、新たな知見を得ることができた。ワームとは関係ない事も多かったが、今は私が育たなければいけない。


並行世界というものがあることが分かった。無限にページにある本の用のもので、隣の世界ではなにか1ヶ所が違うだけ―――子供の靴下の色とか―――であり、1枚ごとに違う世界になっているのだが、私はゾッとした。

………どの並行世界でも、私は死んでいたのである。蘇った私は私でなかった。

この並行世界でのみ、私は生きているのである。

………知った事か、どこまでも足搔いてやるわ。


4代期も末期―――代替わりが話題に出だした―――の頃。

銃はようやく「特殊な打ち方で、腕が折れる覚悟で」のみ当たるようになっていた。

完成なの?完成に見える!?手伝いの分身(感情はない)に問われてキレてしまった。


さらに時は進む―――。

銃はようやく完成した。反動は相変わらずすさまじいが、天使や悪魔でも強靭な者なら1発で筋肉痛といったところですむだろう。もう少し緩和しなくては。


反動は、筋力の高い者(ただし高能力者)なら痛いですむように。完成で良いだろう。


頭の痛い事に、天界と魔界が異世界との侵略戦争に巻き込まれた。

私の勘は『関知するな』と言っている。全ては今代の天魔帝が悪いのだ―と。

ゆっくりと『神おろし』をして、今代の天魔帝は、何らかの争いを起こしては滅亡しているが、今代は両方が滅んで終わるだろうと結論が出た。

はた迷惑な。


4代は天魔帝とも恋人(天帝は弟、魔帝は当時のアスモデウス)は作ったが、子供は残さず、また3代魔帝の奥方(始まりの事象である)レイシィ様が生んだのだ。どう考えてもレイシィ様は確信犯だろう。

だが私には用もないのに自分の神「始まりの女神ミラ」に会いに行くなんて恐ろしい事できる訳がない。下手したら殺される!


私はこの代を、陰から「科学王国ルベリア」と「魔法王国フィーウ」から天魔界を守ることに専念した………のに余計な事をした奴がいた。

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