第53話 力を自分自身のものに

 私は夢から覚めた。

「破壊の蛇」絶対に許さない。

 まずは視認するところから。そして武器も作る。

 まずは、イザリヤに接触しよう。


「ライラック!」

「イザリヤ!」

 私たちはしっかりと抱き合った。血の涙がぽろぽろと出て来て、あわてて「『クリーン』する」ものの、万感の思いを込めて、お互いに見つめ合う。


 私はイザリヤと別れてからの、自分を語る。

「おまえが一生懸命だったことは、残した氏族を見ればわかる」

「イザリヤ………そんな風に言ってくれるのはあんただけよ」

「とりあえず、今は神と完璧な融合をすることだな。

 それと同時に、消えかけの神々を併呑「助けて」やるといいだろう。

 今のお前は私とて助力を請いそうになるカリスマを身に纏っている」

「あんたでも!?」


「そうだ、何物にも屈しない力を手に入れろ。

 力を貸す。私の隣が、今はお前の居場所だ」

「わかった―――なら、眠って良い?」

「必ず守るぞ」


「うん、ありがとう………ところでバンはどうなった?」

 人生で最初で最後となるだろうグール、バン。

「ヴァンパイアになった、うちの系統の。血の支配は解いた。さっぱりしたもんだ」

「良かった―――」

 私は100の分体―――分身と違って力が落ちないが力の消費も段違い―――を様々な星へ放ち、本体はイザリヤの側で眠った―――。


 ♦♦♦


 私は力を求めて分体を放った。

 接触は向こうからあった。貴女の中で眠らせてくれと。

 マザー世界で、どれだけ神々の力が落ちているのか。

 そう暗澹たる気分になったが………。

 自分の力になると割り切ることにした。


 マザーの力を感じるスポットに来た時、エレオスから接触があった。

 接触というより録音みたいだった。

 「お前は第三世界の娘だよ―――力あるものだ。

  「破壊の蛇」に狙われるから気をつけなさい」

 

 エレオス!?どこにいるの?

 問いかけても返事は無かった。第三世界って………まだ第一世界だよ!?

 ………一度リエガを問い詰めてやりたい。

 でも緋雪さんはいい人なのよね………。


 その後順調に「力」は溜まり………私は「超越者オーバーロード」になった。

 私の星だけでなく、気になる星の「過去見」を行った。

 しょっちゅう助けて、と言われるので、私の手元には血と、「儀式場」の生贄が溜まっていく。無理をしてでも「分身」ではなく「分体」にしておいて良かった。

 役目を終えた分体は、私の為に働くことだけを誓わせて、解き放ってやった。


 遥か太古に飛んだ時、ヴォールクと思しき巨大なオオカミが、ワーウルフを創っているのが見えた。「蛇」対策の種族なようだった。

「破壊の蛇」対策として、私はあちこちのワーウルフの氏族に―――特に「王」の氏族に―――コンタクトを取った。力を貸すので、そちらの力も貸して欲しいと。

 イザリヤの住む森のワーウルフ達にも根回ししておいた。

「詩人」は完全記憶で、昔の事を忘れない。私の事も覚えておいてくれるでしょう。


「蛇」は元々自然のなりたちと、秩序のバランスを取る役目のもの。

 私はそれぞれに対応した、3人の「巫女」に目をつけておいた。


 私は「現在」に戻って来た。まだ分体は稼働中だけど。

「イザリヤ………私どれくらい寝てた?」

「安心しろ、100年かそこらだ」

「帰って来る時の精度がまだまだだね」

「そうか?」

「うん、1秒ごとにしたい」

「目的は果たせたのか?」

「大丈夫、神々の力を得ることができたわ」


 そのあと、私が行ったのは力を馴染ませることだった。

 イザリヤはもとより、隠れ里からルキフェル領に、私が居るという噂を頼りに出てきたプラトーン様の隠れ里の者たちなどが、模擬戦の相手になってくれた。

 イザリヤは強かった………隠れていた私と違い、前線で戦っていたらしい。

 仲間たちは、私の能力に目を白黒させており、改めて忠誠を誓ってくれた。

 私は今目立ちたくない。それだけだ。


 長く、安定した2代期が終わると、3代期になった。

 調べてみると、候補はいくらでもいるのに、2代魔帝がごり押しで通した少年が魔帝になったのだ。侮って、攻撃を仕掛けた者もいたが、それはあっさり撃退。

 魔帝の証ともいえる『邪眼』が魔界中を吹き荒れる。

 物理的な圧力を伴う、高圧的な嵐だった。


 だが私は知っている。

 今の天帝は天魔帝が止められず発生した狂気の天帝だ。

 それに対抗するには第3代魔帝―――密かに第2代天魔帝が作った子―――が必要だったのだ。天帝は魔帝に宣戦布告して、長い長い戦争が始まった。


 長い間、戦争は続いた。

 魔帝にあまりやる気が見られなかったからともいう。

 だが、第3代魔帝期終盤。魔帝がやる気になった。

 伴侶を見つけたからだ、でもあれは………あれは………っ!


 あれは「事象」ではないか?

 無敵であり害するのは不可能だ。だって事象なんだもの。

 その事象は「始まり」終わりと今、盛大にぶつかっている。

 理由が「好きな人ができたから」。

 理屈の上では「終わりが正しい」でも、ああ、でも。

「私は生誕の女神の巫女なのよ………!」


 妻をともない、第3代魔帝は1期討ちで勝利した。

 魔界も、天界も歓喜に湧いた―――

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