第52話 人生を振り返る

 今は2代魔帝期。1代魔帝は、自分の息子に倒された。次男が跡を継いだ。

 私は、自分の生まれた?星「カタリーナ」の上空に来ていた。

 噂を聞いたのだろう、丁度いいとばかりに何人かの神々が、私に能力を譲るから眠らせてくれと申し出てきた。私は能力を上げられるので構わない。


 そもそもの目的は、自分の幼いころにタイムワープする事である。

 初めての術式は―――上手く行ったようだ。

 タイムワープした先は、神々の住まう神界だった。

 うん、あれ?海の女神の背後、大量の「破壊の蛇(以下蛇)」が憑いている。

 「蛇」は対象者の精神に影響を及ぼす。海の女神の顔は完全に狂気を孕んでいる。


 丁度良かったので「神界」から、下界を見下ろす。

 まずワームは、一応の両親が私に偏見を持つように仕向けた。特に影響を受けたのは「おかあさん」だ。あの時の酷い言動は「蛇」のせいが大きかったのか。


 上空から見る私には自分の姿ももちろん見える。顔のある上位の「蛇」が10匹ほど出たり入ったりし、顔なしミミズがまとわりついている。気持ち悪い

 本人は気が付いてないだけで、凄い数だ。

「どうやって発狂させる?」「海の女神に生活の場を津波で消し去るように誘導してしまえばいい」「セレンとやらの心はこいつのものだと囁くんだ」


 セレンは「蛇」のつかない体質だったらしく、蛇は私が彼といる間だけいなくなった。その余波で、漁師たちは私に優しくなったのだ。

 私が興味を持ったのは、船が戻ってこれなくて、私が呪歌を歌った時。

「蛇」は嫌そうに遠ざかって行ったのだ。歌は武器になる―――?


 そして津波が起こる―――流されて行く子供を掴めなかった私。でもそれを後押ししたのは「蛇」だった。もしかしたら助けられたかも、しれなかったのだ!

 外に出るように誘導したのも「蛇」

 セレンは私を心配して、危険を冒しここまで来てくれた。

 だがそれは「蛇」の計算通り。嫉妬に狂った海の女神が彼を殺すように。

 そしてそれを見た私が発狂するのを期待して。

 そのせいでセレンはあんな酷い死に方を―――!


 その後で、私は「聖都」へ連れて行かれた。

 聖巫女になるまでは「蛇」の思い通り。


 ああ、丁度いいから、夜ここに下りて、書庫の本を『複写』してしまいましょう。

 今でも目新しいのはあるし、隠し書庫の書物は有用だった。


 そして、あの男(ワームまみれ)と私が出会う―――さぞチョロかっただろう。

 聖巫女だけではなく、死せる巫女の役目でいっぱいいっぱいだったのだから。

 駆け落ちはとても魅力的だった。


 そして、思い出したくもない「暴行」の数々。

 はっきり言って意味のない行動だと、今の私なら分かるモノ。

 化け物の様になってしまった外見。

 全ては「蛇」が悪化に手を貸していた………絶対に駆逐してやる!


 これでも狂わなかった私。どうしようかと頭付きの「蛇」が協議して―――。

 死者の谷に突き落とす事によって「死んで」貰う事になった。

 すぐ蘇ると反対もあったが、記憶を全部無くしているから、もう一度発狂を試みればいいじゃないかという案が通ったのだ。

 

 でも私は狂いも死にもしなかった。人間を食べてでも生き残った。

 「蛇」は相談し………殺してくれるであろう存在を死者の谷に導いた。

 例の騎士である。確かに私は、もうすぐ死ぬところだった。

 

 エレオスが来るまでは。

 エレオスが来た時の「蛇」は慌てふためいていた。

 なんでもエレオスには一切ちょっかいが聞かないのだそうだ。

 その血を得れば、恐らく私もそうなる。周りから攻めるしかなくなる。

 パニックになる「蛇」たちを無視して彼は私に問いを放った―――


 ヴァンパイアとなった私。相変わらず背後に「蛇」はいるが影響はある程度跳ね返 している。その後は紹介された人はみんな私に優しく、色々教えてくれた。

 エレオスの存在があるので、ここでは「蛇」達は寄ってこれないらしい。

 エレオスって本当何者?でもゆっくりと修行する事ができた。


 ちなみに里は未来ではもう使われていない。

 ので、今のうちにこっそりと、全員の持っている書物を「複写」させてもらった。

 3王のもだ。カインは所在不明だが書斎があったのでそこから。

 未知の書物を手に入れられて有難かった。


 やがて、イザリヤとの出会い。彼女は「蛇」を始末できる仲間(ワーウルフ)がいる 上、本人の性格も真っ直ぐすぎて、隙がないので、「蛇」は文句を呟いている。


 そのまま、彼女と親友になった私は、彼女と共に旅に出るまでになった。

 「蛇」の妨害のない冒険行は楽しかったなぁー。

 でも、私がイザリヤと別行動をしはじめたことで、「蛇」は活動を再開。

 橋で足を滑らせて、海に流される羽目になった。


 しぶとく死なない私は救助され、ミーシャと先生に出会う。

 「蛇」はミーシャの情報を流し、生贄に最適だと異国の軍の一部に思い込ませた。

 それがあの惨状。例によって私が助けに行くのを心理的に邪魔したのは「蛇」だ。

 私が行っていたら確実に助かったはずなのに。


 そして津波も、もはや抜け殻になった海の女神に命じて行わせたもの。

 先生たちは何のために死んだっていうの?

 

 私が死体を集め、弔って、この聖なる島に留まっている間、「蛇」は何もしなかった。ここで一生を過ごしてくれることを期待していたらしい。

 だが私は、ヴァンパイアの谷に戻った。

 そしてエレオスの血を飲んだ事で、私はワームをほとんど寄せ付けなくなった。


 レイズエルと呼ばれるようになり、自分の氏族を作った私。

 強くなっていく私の意志力に、「蛇」たちは悔しがった。

 そりゃそうでしょうよ、試練を与えて強くしたのはあんた達なんだから。


 その後二人の『子』をつくり、可愛がっていた私。

 でも二人には「蛇」の囁きに抗うすべはなかった。

 人気のない通りで、血が吸えそうな人間に襲い掛かって、返り討ちにあった。

 その死体を見て、逃げ出す私は「蛇」の思い通り。

 これで死んでくれたらいいのに、という事らしい。

 実際には私はディアボロスに出会い、力を手に入れた。


 そこから先は、戦争が終結し、私と共にディアボロスがヴァンパイアの里に戻るまで手出しは無かった。

 ヴァンパイアの谷では、ディアボロスがいなくなり、私はまた旅に出る。


 そしてラヴィ(現アスモデウス)に勧誘され、魔界に行ったのよね。

 プラトーン様の所有していた本は、プラトーン様が死んだ後回収させてもらった。

 

 引退ベールゼブブがプラトーン様をターゲットに選んだのは「蛇」のせい。

 そしてベール大公にヘパエイトスが軍を率いて動いたのも。

 止めようとした私が休眠する羽目になったのも「蛇」のせい。

 

 リリス様や神々を統合したのは完全な計算外。かなり焦っている。

 

 そして現在―――

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