第51話 拠点づくり

 自宅は一応は完成した。

 これから手を入れていくだろうから、とりあえずの完成だ。


 他に作りたいのは2つほどある。病院と儀式場だ。


 先に病院を作る事にする。

 手に入れた欠片の中でも、建物の残骸がのこっているもので、かなり広い。

 草原と湖があるほどで、流れ着いた欠片の中では最大のものだ。

 正面には神殿の跡。肩から上のない、染色が落ちて真っ白な女神像がある。

 そこを神殿に仕える者の宿舎だったらしい棟がある。崩れているけど。


 私は早速手を入れる事にした。

 女神像の肩から上は修復せず、綺麗にするだけにする。

 女神を囲む崩れた棟を全部ざっと修復する。中身は後だ。

 女神像の周囲は円形の広場にする。

 広場の地は白く、その上に水色~青色のガラスタイルを敷き詰める。

 清涼感のある見た目になった。


 復元した棟を、広場から放射状に並べ替える。

 中心は開けて、円に沿って左に3つ。右に2つ。

 左の3つは「人間棟」「天使棟」「悪魔棟」と病人毎の種族にに分けて用意する。

 天使が必要だと思ったのは毎度のごとく『勘』である。外した事は無い。


 内部をそれぞれの種族特性に合わせていじる。

 看護師が現れるという予感から、ナースステーションや休憩所なども作る。

 後は普通の病院と変わらない作りだ。

 個室が多めなのは、その方がいいと思ったから。


 右の二つは、1つは他の病棟と旁は一緒、「特殊棟」だ。

 左3つの枠組みに入らない者の為の棟である。

 最期の一つは、今はまだ使う予定のない「寮」を作った。

 1Fは種々様々な購買にしようと思うので、いまはがらんどう。

 その上の階は、簡素な、最低限の家具が置かれた個室を作る。

 全ての棟は4F建てにした。


 最後に棟の中央、何もない所に診察室と手術室、薬や医療器具の保管所を作った。

 最後に、隠し扉を作り、私の書斎を作る。

 家にあるもので、医療関係の本を『複写』して置いておく。


 ………こういったことが意識するだけで出来るようになったわけだが。

 神々が私の中に吸収され、私のものになったせいだろうか、当然のことと感じた。


 あと、家の方もまとめて、無いとは思うがワームが入って来ようとしたら、時空を転移する仕様にしておいた。私は何処にあろうとこれらの場所が分かる。


 病院には最後の仕上げが必要だ。

 次元の航行能力を持たせ「周囲に人がおらず、死にかけている人」に惹かれ、そこに異空間通路ができるように設定する。

 一応、異空間通路ができたら非常ベルが鳴るようにしてある。

 あと、草原と湖だけでは寂しい。いつか林になるように白樺の木を植えよう。


 病院はほぼ無償で運営していく。

 ただ、退院時に「ヴァンパイアに飲ませます」と説明の上で献血してもらうのだ。

 承諾しなかった人からは、戒律的に採血は出来ない。

 なので「ほぼ」無償なのである。


 「病院」の次は「儀式場」だ。

 これは、聖都にいた頃に学んだ邪法で、設置場所はどこでもいい。

 「儀式場」は大司祭である術者の技量により、規模が違って出現する。

 「縛り」をすることによっても、儀式場の核をあげることができる。


 「儀式場」の効果は「奇跡」だ。

 「儀式場」は「自ら進んで」身を奉げた者を生贄に受け取る事で効果を発揮する。

 私の「極めて人に助けを求められやすい」(神々を吸収したら強化された)性質を利用して人を集める事になるだろう。ただ、「縛り」も行う。

 「長い黒髪」で「女性」で「他人の為に自分を犠牲にする」という要素を全て持った者のみ受け入れる「縛り」だ。私の能力はより彼女達を引っかけ易くなるはずだ。


 儀式場を設置していく。

 大きなピラミッドが一つ。正面には長い長い階段。会談には針が生えている。

 階段の上には大司祭が座る石の玉座が一つ。その前には祭壇。

 大地は円形になるように、異空間をいじった。今は荒廃している。

 生贄には自分で飛び降りてもらうのだが、その勇気が出ない人もいるだろう。

 祭壇を使うのはそういう時だ。優しく殺してあげてから、儀礼として突き落す。

 

 魂は「儀式場」―――この異空間に留まり、エネルギーとして蓄えられていく。

 肉体は、全ての血を出し切った後、心臓だけが「儀式場」に吸収される。

 残った死体は、いずれ生えてくる植物―――ここでは麦と設定されている―――の養分となるのだ。

 最初は乾燥してしまうだろうけど、徐々にここは血で満たされていくだろう。


 そして犠牲となる魂が増えれば、儀式場が魂を消費する事で行える奇跡が多く、大きくなっていく。わたしはそれを対「破壊の蛇」に使うつもりだ。


これで、儀式場の設置も終わった。

あとは私が動く事で、色々なものが手に入るだろう。


私は神を超越したためか、人の心が遠隔でも読めるようになった。

それを、魔界全土に広げて行使する。

魔帝城だけは住人としての遠慮でやめておいたが、他の土地は全てカバーできた。


魔界で最強の「ルキフェル」様にまで通用したこの力は、どこまで通じるのだろう。

ベール大公領まで力は及んだ。さすがにベール大公にやったらバレるけど。

ルキフェル様は、割と単細胞だから読めたんでしょう。


プラトーン様の仇、引退ベールゼブブの思考はまだ読めなかった。

引退ベールゼブブは警戒心が強すぎる。常に妨害アイテムを持ち歩いているし。

引退アスタロトもだ。この人は天然で妨害しているようだが。


徐々にこの能力は上げていく―――というか常時発動なので勝手にレベルは上がるだろう―――つもりだ。魔界を制覇したら人界にも力を及ぼす。

どう使うか?もちろん「破壊の蛇」への対策だ。

私にある記憶によれば「破壊の蛇」は絶望のある所を好むとか。邪魔してやろう。


私の中にある「破壊の蛇」への嫌悪は強い。

この先、タイムワープして過去の自分を見ていくつもりだが、さて、一体何を見る事になるのやら。


先が思いやられた。

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