第50話 神の眠るところ

2代期中期。


 わたしはどの領地でもない荒れ地で休眠を終える。

 大地の構造が―――奥の方だけ―――変化したため、北に流されたのだ。

 休眠しているとはいえ、力が増したことで色々と世界に干渉できた。

 最大の成果は、他宇宙からマザー世界(宇宙)の壁をすり抜けて入ってきてる空間。

 滅びた他宇宙の割れた空間。

 そう「破壊の蛇」の入れない空間を大量に自分のものにした事だ。


 リリス様の知識によれば、私は「破壊の蛇」気が狂うように意図してちょっかいをかけられていたらしい。今後、新しく得た能力「時戻り」で確かめに行こうと思う。


 それを置いておいても、やらなければいけない事がある。

 私が最高司祭である、星女神アステラ様が私を呼んでいるのである。

 私は夜空の天蓋に向かって飛び立った。


 宇宙空間にある「惑星カタリーナ」の成層圏で立ち止まる。

 そこにはアステラ様のおぼろげな姿があった。

《間に合ってよかった。私の信徒は少なく、今では漁師にも忘れられることもある。聖域の近くの漁師たちは、変わらぬ信仰を奉げてくれているが………》

「それがどうかなさったのですか、アステラ様?」

《私はもう、エネルギーだけの存在に戻りたいのです。人格はあなたに譲りますから、私を受け入れて下さいませんか?あなたが星女神になるのです》


 わたしは、そんな恐れ多い事と固辞しようとした。

 だが、このままだと消滅。それだけは嫌だというアステラ様に同情してしまった。

「わかりました………人格は私のものでいいんですね?」

《その通りです。ありがとう。》

 アステラ様が私に抱き着くと、光が私の中に入り込んできた。

 膨大な知識と力が、私に流れ込んで来る。

 落ち着いて吸収するのに、1週間かかった………


 そして、完全に計算外の事が起こった。

 私が力を吸収し終えると、他の神々から私の中で眠りたいという願いが出たのだ。

 光の女神:ルファエル。太陽神:イリオス。運命の女神:ミース。

 風の神:エイリアス。大地母神:クラリシア。

 この5柱だ。

 私は人格の主導権だけを条件に、申し出を受けることにした。

 1柱も5柱も同じだ。いえ、同じにしてはエネルギー量が凄いけど。


 ちなみに、海の女神からも頼まれたが、絶対に吸収したくないと突っぱねた。

 2階も津波で酷い目にあっているのだ、当然だろう。


 魔界に戻った私は、神格の吸収に1月を費やした。

 その上でやってみた事がある。ヴォールクの捜索だ。

 今度は上手くいった、コンタクトが取れたのだ………一方的なものだが。

 彼女とつながったと思ったら、一方的に力を授けられたのだ。

 それは「破壊の蛇を視認する能力」「破壊の蛇よけの守りの作り方」

 それと、守りを作るのに必要な「あらゆる精霊との親和性」も寄越された。

 それ以降は、通話できなくなってしまった。存在は分かるのだが。


 私はばっと後ろを向く。

 カラフルなミミズ大量と、それと同じ気配を漂わせた、5人ほどの男女。

 幽霊のように透けているが、なぜかわたしはおぞましさを感じた。

 私は迷わず「破壊の蛇よけの守りの作り方」の通りにする。

 自然を司る全ての精霊の力を結集させ「メビウスリング」というアイテムを作る。

 輪を無限∞の形にしたアイテムだ。虹色に輝いている。

 

 精霊力が無限循環し、その過程で高め合う。

 作って10分も経てば精霊力が内部でMAXになる。

 ワームは自然精霊と相性が悪いようだ。

 これが出来上がる頃にはかなり遠くまで逃げていた。肩が軽い。

 どんな時もずっしりと重かった―――今気づいた―――気分が軽い。

 こんな気分になったのは、イザリヤとの旅の最中ぐらいのものだ。


 先に異空間を使って拠点を整える。

 が、必ず時を旅して昔の自分を確認しに行こう。

 どこまでが奴らの仕業だったのか確認しなくては。


 わたしは、自分の家として、大きな「滅びた宇宙の空間の破片(以後異空間)」を選び出した。精霊を、リリス様の創世神の力で生み出し、異空間に満たしていく。

 空間の特性上、精霊界は無いので、その辺りをうろついている状態だ。

 宿るものを創ってやらなければ。


 私は家を作る予定の場所を残して四方を森にした。ドライアドがここに住み着く。

 家は、間取りを意識しながらレンガでくみ上げる。ノームはここに宿る。

 家の内部はレンガに木を張り付けて木製にする。この方が落ち着くから。

 家の入口はガラスの両扉。外には門の入口にたいまつ。サラマンダーはここに。

 1階は(2階建て)図書館だ。フロアは2階の扉が見える吹き抜け仕様。

 なので、サーキュレーターをつけた。シルフィードはここに。


 私は、星の神殿に置いてあった書物を丸ごとここに移した。

 今となっては初歩の本だが、役に立つこともあるだろう。

 あとは、長い時を過ごすうちに少しづつ集めていた魔導書もここに。

 これからは、ここが一杯になるほど本を集めよう、と思った。


 1階の図書エリアには、読書にも食事にも使える大きな四角い机と、多数の椅子を用意する。エリアの1角には血の樽の貯蔵室を作る。

 隠し扉も設置する。様々なアイテムを入れて置ける大小の収納棚を大量に。

 とりあえず、ずっとため込んでいたマジックアイテムは全部ここに。

 その代わり、この収納庫につながるマジックアイテム―――シンプルな銀のピンキーリング―――を作った。昔から持っている魔法のバックパックの中身もここに。

 種類ごとに並べて、番号をふっていく。

 これから増える、そんな予感がする。


 2階は、私の寝室、客用寝室2つ、宝物庫ひとつ。

 わたしは、プラトーン様の所から逃げた時、財宝を全て、プラトーン様に渡されていた魔法の袋に詰め込んで出て来ている。

 今までは開けようとも思わなかった物だが、この際分類してしまおう。

 宝飾品は宝物庫へ。魔力がこもっている物は収納庫だ。

 宝物庫がかなりいっぱいになってしまった。


 私の寝室は石で出来た重厚な棺桶ひとつ。

 寝てる―――死んでる―――間、抱擁された時の姿勢に戻りたくない。

 ので、姿勢を変えられない窮屈な作りだ。

 その上、内部から出ないと開けられない鍵付き。


 客用寝室は、上等な宿屋の様な作りにしておいた。


 自宅はこんなものかしら。

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