第47話 宝物庫の歌姫
プラトーン様の好意で、私は様々な術を並んだ。
教師は、しなびたモグラ、と言った感じのラガーン爺様。
とても広範な知識を持った人、もとい悪魔だ。
魔法的な、系統だった能力ではなく、自分の身の内から特殊能力を引き出す修行。
空間そのものを改変したり支配下に置く技(私はこれに特に向いているらしい)や、異空間を作り出したり、結界を創る技。
医術も、我流でやっていたが、ここで正式に教わった。
人間だけでなく、悪魔を診ることもできるようになったわね。
無詠唱で、万物を操れるようにもなった。
時を超える術―――これまた私に向いているそうだ―――も習得。
宝物庫を通りかかる悪魔達は、わたしの成長に驚き
「人間とは、こんなに覚えが早いものなのか?」
ときかれたので、モグ爺(ラガーン爺様)は、私は特別だと言ってる、と答えた。
私が何でもすぐに吸収するので、悪魔達が気まぐれに私にものを教えてくれる。
歌を聞きに来てくれる悪魔も、結構いた。
なんと、楽譜を人界(この場合は私が居た惑星カタリーナ以外の他の星)から土産に持って来てくれる者もいた。大サービスで歌ってあげたわ。
そして、モグ爺による、最上級魔法の習得。
モグ爺曰く、私はもう上級悪魔並みの力量があるという事だった。
プラトーン様は私に歌と、体を求めてきたが―――私はヴァンパイア。
イザリヤが作った『定命回帰』という『教え』を使わない限り妊娠は出来ない。
『定命回帰』で強引に孕みます?継続するには1日に樽1個分の血が要りますが。
と聞いたら、無理はするなと言われた。
お前が可愛い。それだけだと。
気まぐれだと分かっているのに………罪な人ね。
他には、私は「月の丘」と呼ばれている場所で歌うのが好きだった。
ある日、驚いたことに
《小さな歌姫、歌は効かせてもらった。我の心にも響いたぞ》
なんと、それは「始まりの魔帝」その人だったのだ。
宇宙空間にも見える―――私にはこれは「夜空の天蓋」だとすぐに分かったし、天蓋を透かして本来の夜空を見るのも簡単だった―――たくさんの月のある暗闇に、人の輪郭に見える姿が顕現している。
ここで私は、初代魔帝との交流を深めていった。
分かっていた事だが、ここは魔界、争いと動乱、邪神との戦いの地だ。
私も微力を尽くしたが、下克上の戦争が起きた―――。
最期の戦いに挑んだプラトーン様は、最後まで美しかったと思う。
これにてプラトーン様の領地は、ベールゼブブ領になった。
瀕死のプラトーン様に駆け寄る。
周囲は、私とプラトーン様の関係を知っているので何も言わなかった。
「ララ………冥界で、コキュートスでいつか会おう」
「供をしろと言われてもいいのですよ?」
「お前には無理だ。死ぬのは怖いだろう」
「………はい、そうですね。いつか冥界で―――ご恩を返せたら」
「私が眠るまで、そこに居てくれ」
「はい………」
「別れが済んだのなら、死体を持って出て行ってもらいたいのだが?それとも女は私の下につくのか?」
ベールゼブブが私に剣を向けてくる。
「出て行きます。彼を埋葬したいので」
私は無詠唱で『テレポート』を使って、荒野にさまよい出た。
そこは、まだプラトーン様の領地の中だ。
私が、どこにプラトーン様をどこに埋めようかと迷っていると
「門番!宝物庫の門番!」
そう声がかかる。
「戦には負けた………俺たちには行く当てがない。未開地に集落を作ろうと思うが、お前も来ないか?お前の能力ならトップになれるぞ」
「プラトーン様の遺体を祀れるかしら?」
彼らはぼそぼそと相談したが、良いだろうという意見が多数を占めたようだった。
「なら、一緒に村を起こしましょう」
「スマンな、寝返らなかった俺たちは苦しい立場なんだ、助けてくれ」
「助けを求められたら断ってはならない、は戒律にある。仕方ない………」
「どこの領地でもない空間に、亜空間の入口と、隠れ里を作りましょう」
「お前、話には聞いていたが、本当に高能力者になったんだな」
「私の事はレイズエルかレイと。思い出した!モグ爺がどうなったか知らない!?」
悪魔達の中から、赤い、全身にトゲがある女性が出てくる
「モグ爺は、名誉の戦死だよ」
「そっか………」
また一人、私の側から居なくなった。
「遺体は?」
彼女はフルフルと首を横に振った。
「そう………」
腕の中の、冷たくなったプラトーン様を抱きしめた。
悪魔達の協力を得て、無所属の集団となった私たちは、亜空間を確保した。
完全に私の手による亜空間。作ったのは初めてだが大丈夫そうだ。
『上級無属性魔法:クリエイトマテリアル』
クリエイトマテリアルは下位の魔法だが上級の魔術として使えば、墓と祠を作るのも簡単だ。プラトーン様は、みんなで囲んで盛大な炎で燃やした。
骨を墓に納め、祈った上で、誰を村長にするかでもめる。
私としては誰でも良かった(愚かでなければ)のだが、何故か私がやる事に。
報酬として、それぞれの持つ特殊能力を教えて貰う事で話はついた。
幸い、私は集団をまとめるのが得意だ。
上手くやっていく自信はあった。
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