第41話 アンナという女性
海岸で拾った女性、アンナを教育するために、ヴァンパイアの谷に戻ってきた私。
部屋をどうすればいいのか分からなかったので、『念話』で、通信できる圏内にいたエルカゴにそこら辺の事情を聞く。
空き部屋ならどこを使ってもいいそうだ。他の人が部屋にしている所はダメ。
物も、共同倉庫にある物か『物品作成』で作った物を使えとの事。
エルカゴに感謝して、念話を切る。
今はヴァンパイアの谷に残っているヴァンパイアが少ない。
だから、各種『教え』は私が教える形となる。
アンナはビックリするぐらい覚えが良かった。
忌避感なくこの環境に馴染んでいき、『教え』もするすると覚えた。
私よりかなり早く、エルカゴとプレイヤー、ゴウガーに面会させることができた。
元は北の果てで、自然崇拝を行う宗教の巫女で「生命・光」を司っており、光の女神の加護があるそうなので、恐らく日光は耐性があるだろう。
私と同じく、昼でも目を覚ませる体質になっているようなので、もしかしたら陽光の下で普通に動けるかもしれない。まずヴァンパイアだとはバレないだろう。
私が習っていた時と同じ様に、教育すると、お礼にと『自然魔法』を教えてくれた。
彼女には高い身体能力があり、私は教えられないので、そこはエルカゴに頼んだ。
属性魔法にも興味を示し、上級魔法までの習得を望んだので教える事にする。
『自然魔法』のお礼としてオリジナル魔法を教えると
「お母様は寛容な方。そこまでわたくしに良くして下さるなんて」
と言われたので、お互い様だど言っておいた。
属性魔法を途中まで教えたところで、イザリヤが姿を見せたので捕まえる。
「なんだ?星の神殿に行っていたんじゃなかったのか?」
「それがね………という訳で、今は雛として教育しているの。吸収が早すぎて拍子抜けするわよ。それと、アンリさんと顔がそっくりなの。心当たりある?」
「アンリから、妹がいると聞いた事があるな、待ってろ、すぐに連れてくる」
イザリヤは1度テレポートで帰ったが、すぐに戻って来た。
「ライラック様、私そっくりのものがいるというのは本当ですか?!」
アンリさんは、この人には珍しいぐらい慌てていた。
「アンナ!あなたとそっくりな顔の人が来てるわよ!」
アンナは部屋から飛んで出て来た。
お互いを確認すると
「ああ、妹よ!よくぞ無事で!」
「お姉さまこそ、ご無事でよろしゅうございましたわ!」
話を聞いてみるとこの2人は、祖国が他国の侵攻で滅んだ際、巫女だから捕まると、異教徒として殺されるという事で、追い詰められ海に飛び込んだんだそうだ。
自棄になったわけではなく、自然の加護によりどこかに流れ着くのを期待しての事だったという。アンナの発見の方が十年近く遅かった理由は不明だそうだが。
2人は、アンリさんが陰の巫女、アンナが陽の巫女と別れているという。
お互いが揃うと、陰陽の循環が果たされ大幅にパワーアップするのだとか。
2人の外見を見ても、それは真実であるように思われた。
黒髪、黒がかった赤い瞳、浅黒い肌のアンリさん。
白髪、明るいピンクに近い赤い瞳、血色がよく真っ白な肌のアンナ。
2人は双子だそうだが、陰陽の加護を得た時、外見が分かれたんだそうだ。
「ライラック様、アンナを1人前にしてやって下さいまし」
「もちろん、私の知っていることはできるだけ教えるつもりです」
その後は、しばらく2人だけにしてあげた。
久しぶりにイザリヤとゆっくりお茶を楽しんだ。
アンナは私の「子」だが、私よりも年上という事が判明した。
今まで通りの対応でいいのかと尋ねたら、今更ですわと言われた。
まあ、確かにそうだ。
「じゃあ、属性魔法を引き続き教えていくね」
アンナは1年で属性魔法をマスターした。召喚魔法、治癒魔法、暗黒魔法は半年。
私の知る限りの『教え』も伝授したが、これも半年で実用レベルに達した。
恐ろしい才能である。たまに立場が違ったらどうなるか考えてしまう。
まあ、考えていても仕方ない事を考えるのは止めよう。
あとは、炎への耐性だ。これは無理にやらなくてもいいらしいが、無理してもやらせておくべきだという『勘』に従う事にした。
炎への耐性をつけるのは難航した。本人のやる気は十分なのだが、結果が出ない。
1年半―――これでも短い方だとか―――かけてやっと満足のいくものになった。
あとは、雛からの卒業である。勿論あっさりとクリアした。
『血液増量』『保存石』の教えと魔法をプレゼントした。
そして「戒律」を教え、私の血を詰めた袋を送っておく。
「この戒律を守れると判断したなら、血を飲んで頂戴。エレオスからの受け売りだから、私は戒律を強制はしないわ。私は守っているけど「人工血液」と「衝動延期」を習得してからの方がいいのは確かだと思う」
「二つとももう覚えております、最初が楽だと戒律を守り始めた時が大変でしょうし、わたくしは最初から戒律に従う事にしますわ」
そう言って、私の血を飲み干すアンナ。
私への視線が熱を帯びるので、慌てて血の効能を説明し直した。
「私は東へ旅に出て仲間を増やすわ、あなたはどうする?出来たら「癒しの氏族」を増やしてほしいのだけれど」
「でしたら私はお姉さまを訪ねてみます。道中にこれは、という者がおりましたら仲間にして癒しの氏族を増やしますわ」
「そう………イザリヤとアンリさんによろしくね」
そうして私は『勘』が導くままに東へと―――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます