第13話 大いなる者①「アリケル」

 大いなる者と、教えて貰える「教え」一覧


「危険なので、寄り付かない方がいい大いなる者」

 ノスフェラトゥ      『教え・視覚変化』

 ヒフィニン        『教え・血族毒』

 カヴァッロ        『教え・?』

 リエゴ          『教え・血の魔術」

 ソウ           『教え・虚言』


「現在不在の大いなる者」

 ディアヴォロス      『教え・増加(エレオスにも無理)』

 ジャントリー       『教え・威厳』

 ヴォールク        『教え・変化』


「訪ねていって大丈夫な大いなる者」

 アリケル         『教え・感性』『教え・瞬足』

 エルカゴ         『教え・頑健』

 ゴウガー         『教え・剛力』

 プレイヤー        『支配』

 エレオス         『教え・風化』『教え・観測』


 彼らの「教え」の詳細も記憶球で叩き込まれた。

「教え」の詳細はまた使う時に言うわね。

 アリケルが教えてくれている「教え」の情報も入っていて、これでかなり勉強がはかどるはず………だけど、他の人はともかく、アリケルにはどう言ったらいい?

 そうエレオスに聞くと

「アリケルにはそのまんま言っちゃって構わないよ。拗ねるだろうけどね。後の人には、言わない事。覚えの早い娘として認識させて構わない。根回ししてあるしね」

 彼らの「領地」は分かった。避けるべき「領地」や場所もわかったけど、ひとつ。

「川に行っちゃダメなら、どうやって水浴びすれば?」

「『魔法・コールウォーター』で、魔力を大目に消費して、後から届ける簡易浴槽に満たすといいよ。よかったら、『魔法・コールホットウォーター』へのアレンジを教えるけど」

「教えて!」

 なるほど、魔法は魔法式が分かってれば、アレンジもできるんだったっけ。

 聖都で使って以来だから忘れてた。

 ノートでも貰って、忘れないうちに魔法式を書き込んでいかないとなぁ。


 私の覚えの良さが跳ね上がったことに、最初こそアリケルは不審がったものの、エレオスのしたことを聞くと納得した。

「あ奴、またスレスレで禁忌に触れないことをやっておるな。まぁ、あ奴だからバレても「3王」からは大したお叱りも受けんだろうて。特に血親のリリス様は、あ奴を猫可愛がりしてるゆえのう」

「「3王」って誰なの?」

「「3王」は妾達「13人の大いなる者」の親よ。お前はしばらくは接触することのないお方ゆえ、意識せんで良い。ある程度「教え」を身につけた頃、エレオスが連れて面会に行くであろう」

 それより授業を続けるぞ、とアリケルは言う。

「『瞬足』は、もうよいな。速度を上げ続けることで高みに至る術ゆえ、やり方がわかればそれでいい。『感性』の方は様々な効果があるゆえ、やや覚えにくいの」

 そういうアリケルだったが、わたしはもうこの「教え」の概要を記憶球で「体感」している。

『感性』を習得するのに2日かかった。

 もちろん、アリケルの丁寧な指導あっての賜物だ。

「ありがとう、アリケル様」

 わたしは、心からそう言った。

「別れのあいさつのように言うでない。様もいらぬ。妾は今寂しいのじゃから。」

「………どうしたの?」

「妾の………妾の愛するジャントリー様が、ヴォールクに呼ばれて、北の国に行ってしまっておるのじゃ。なんでもヴォールクの初めての「子」が誕生したらしくての。ヴォールクに請われて迎えに行って迎えに言ってしまわれた。その面倒見の良さと、大衆に溶け込んで行動する腕を買われたのよ」

 だが、と彼女が続ける

「お前の血親エレオスが、その時居ったなら、エレオスに話が行ったであろうな。」

 え?留守だったの?………あ、そういえば、死の谷に来たのは旅の途中でもないと、説明がつかないはず………。

「何の旅だったの?」

「毎回、見聞を広めるため、と言っておるわ。今回はその結果、愛らしい娘を得たことで、リリス様の覚えもめでたいのぅ」

「そんなことより、予定では2か月後、帰っていらっしゃる。妾は居てもたってもおられず、国を大臣2人に任せてヴァンパイアの谷にやってきたのじゃ。」

「いいの、それ、国が大変なことになってる気がするけど」

 ―――2か月あるなら、しばらく時間があったのでは。

 かのじょはコロコロと笑い

「奴らは我が「子」じゃが、一応血の縛りを行っているゆえな」

「なぁに、血の縛りって。アリケルの子なら私と同格って事だよね」

「重要な事ゆえ覚えておくのじゃぞ」

 と、アリケルが声を低くして

「対象は人間でもヴァンパイアでも構わん。自分の血を一回目に血を飲ませると、こちらに気をやって好意を持つようになる。二回目は完全服従する。三回目は飲ませた者を愛させる。妾はこれを大臣―――我が子―――に施して居る。もちろん、二人の承諾済みぞ?三か月で効力は切れる―――一段落ちる―――故、さほど使い勝手のいい力ではないのだがな。妾は、三か月に達する前に戻って、更新を行うつもりじゃ」

 おお、といいことを思いついたように、彼女は言う。

「そなた、どうせエレオスの血じゃ。放浪を始めるであろう。」

 そうなんだろうか。

「そのルート上に妾の国を―――カロスを入れい。必ず訪ねてくるのじゃ。

 ここからでは西の、砂浜と大理石の美しい土地だ。だが盛者必衰の理もある。崩壊しないうちに訪ねてくるべきじゃ。」

「自分の国が、崩壊すると思ってるの?」

「いつかは、じゃ。その時、付いてきて欲しいものは、皆「子」か、グールにしておるよ」

「………グールって何」

「昼に出歩けない妾にとっては、重要な者どもよな。人間を血の縛り、で確実に従うようにしているが、危ないことをさせる気はないぞ。愛しい者どもじゃ。そなたも確実に作らなくてはいけないことになるじゃろう。まぁ、その前に、お主は勉強という課題があるのじゃから、ほれ、次は何処に向かうのじゃ。」

「この人」

 と、私は地面に絵を描いてみせる。禿頭の大男だ。

「エルカゴか!奴は生粋の軍人だ。堂々とした態度で挑めよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る