第67話

「そんな立場の人が何でこの街に?王宮にいるべきなんじゃないのか?」


「だから隠居だよ隠居。毎日研究に明け暮れる日々にもさすがに身体がこたえてきてねえ。だからそれなりに腕のありそうなあんたに私の研究を引き継いで欲しかったんだよ」


 プリシラはそう言ってケッケッケ、と不気味に笑っていた。

 おいおい、どうも俺の楽しい農業スローライフが進路を変えつつあるぞ……?


「前にも言ったかもしれないが、俺は農作業の息抜きに『錬金』を趣味でやりたいんだぞ?研究だなんて大層なことできるわけないだろう?」


「だから農作業の片手間で良いと言っただろう?まあ、あんたが王都に行くって言うなら私の研究室を使わせたいんだけどねえ。農作業の傍ら毎日私の店を訪ねるのも面倒だろう?」


「それはそうかもしれないけどなあ……」


 プリシラには色々教えてもらって、さらに冒険者ギルドで起きた問題も無事?解決してくれたので断る理由もあまりなかった。

 今まで通り趣味程度の時間でも良さそうだしな。


「まあ王都に農場を開く事についてはじっくり家で考える事にするよ。じゃあ農作業が一旦落ち着いた頃にその研究とやらを聞きにくるから」


「そうかい、それは良かった。帰り道は気をつけるんだよ」


 そうして俺はプリシラに別れを告げ、ギルド本部長のポルナレフさんに軽く会釈をして応接室を出た。


 その後、俺はパプリを連れてすぐに家に戻ることにした。

 相変わらずカラッと晴れて良い天気だし、結構土も乾いているかもしれないな。




「はあ……久しぶりにグランドボアに追われて疲れた……」


 街から家に戻る途中、俺はパプリを抱えて森の中を進んでいたが、横からグランドボアが突進してくるのが見えて全力で逃げ出してきた。

 なんとか振り切ることができ、結界石の効果が現れる家の周辺まで辿り着くことができたのだった。


「最近モンスターを見かけなかったから油断していたけど……アンフェルボアが現れて縄張りが少し変化してたのか?」


 そういえばアンフェルボアと戦う事になった日は、森が不自然なほどにシーンと静まり返っていた気がする。アンフェルボアがいなくなって、再びこの辺にもモンスターが生息するようになったのかもしれないな。


「まあ、それはそれで今度街に行くときに気をつけたら良いか。それよりも土の状態を見ておかないと」


 ようやく家に着いた俺は早速畑や耕す予定の土の様子を見ることにした。

 しかし、作物を植えてある畝の土の表面は乾いているように見えたが、少し土を掘ってみるとかなりベチャッとした感触が残っていた。


「ええ……まだ乾かないの?今日のうちに耕せると思ったのに……しょうがない、農地の拡大は明日以降にするか」


 雨が降ってから上手くいかないことが多いな。せめて天気予報も欲しいよな……。

 

 

 そうしてその日はできる農作業も特に無くなってしまい、ゆったりと過ごすことにした。

 夜には、夕飯を食べた後寝るまでの間プリシラから買い取った素材を『錬金』して過ごした。

 

 余談だが、エドラ草から低級回復薬を使っている間に、パプリがつまみ食いしている事に気がついたのは魔力が尽きた頃だった。

 薬草を食べている姿がかわいくて癒されたから許したけどな。


「さて、明日も早起きして土づくりを始めないとな……寝るぞーパプリ」


 俺は翌日の農作業に備えて、いつもより少し早めに体を休める事にした。

 

 そして俺が目を覚ました時、目の前にいたのは久しぶりに会うロリのじゃ女神、カミラだった。


「久しぶりじゃの、コーサク」

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