第63話
翌日の朝。
俺はいつも通りの時間に目を覚ました。
昨日は街から帰ってきた後も雨が降り続き、特にやることもなかったので『錬金』をしたりパプリを外へ連れ出して植物を食べさせたりした。
「今日はカラッと晴れて良い天気だなあ」
俺が外へ出るために玄関の扉を開くと、昨日の天気が嘘のような透き通った青空が広がっていた。
相変わらず朝の弱いパプリを置いて、俺はまず芽が出始めた植物の様子を見にいくことにした。
「根腐れしていなければ良いけど……大丈夫か?」
昨日土壌の成分を調べた際、畝の排水性が悪過ぎたのか根腐れの危険性があると表示されてしまった。
かなり雨が降り続いていたから、土壌の様子も悪化したのではないかと少しソワソワしながら、作物の芽が出始めた畝へと近づいた。
「…………昨日より芽が少なくなったか?」
畝の様子を見ると、ところどころ作物の芽がなくなっている部分があった。
昨日はそんなに隙間はなく、ズラッと伸び始めた芽が並んでいたはずだが、今見てみると所々土が目立つ部分も多くなっていた。
「クソ……やっぱりダメだったか」
嫌な予感が的中してしまった。
朝の時点で根腐れの危険性があると指摘されていたのに、その雨が1日中降り続いたものだから土壌の様子もかなり悪くなっているだろうと覚悟はしていた。
やはり最初にきちんとした土づくりができなかったのが大きいか。
「参ったな……今後雨が降るたびに苗が減っていくのだとしたらほぼ全滅してしまうかもしれないな……。次の畝は土を一から変えてみるしかないな」
せっかく蒔いた種をダメにしてしまった悔しさももちろんあるが、あまり引きずっても良いことはないだろうと開き直ることにした。
「まだ自分の畑を持って間もないし色々試していくしかないって事にしておこう。畑の拡大はまだ始められないか……」
土もまだかなり湿り気があり、このまま耕すと土が固まってしまう可能性があったので、今は生き残った作物の手入れだけを済ませることにした。
◇
「パプリー、朝ごはんだぞー」
俺が農作業から戻ると、パプリは今日も玄関で俺の帰りを待っていたようだ。
もちろん、腹が減ったからなのだろうがな。
今日のパプリの朝食は、魔法の肥料を撒いた畝に生い茂ってしまった雑草たちだ。
魔法の肥料の効果は何年も続くみたいなので、この区画は定期的にパプリに食べてもらうことにした。
「そういえばプリシラに店に来るように言われていたんだっけ。本当に今日行って冒険者ギルドの問題が解決する物なのかね?」
もしゃもしゃと雑草を食べているパプリを見ていた俺だったが、プリシラが言っていたことを急に思い出した。
あの婆さん、予定をすっぽかしたら何をしてくるか分からないしなあ……雰囲気魔女みたいだし。
「朝食を摂ったらすぐに街に向かうことにするか。土が乾くようなら早く帰ってきて畑を耕したいし」
このままいい天気が続けば昼過ぎにはかなり土も乾くはずだし、土づくりも早い方が良いだろう。
土が馴染むまで置いておかないといけないことも考慮して、1週間は種を蒔けないな。まあ、その間どんどん畑を広げてしまうか。
「お、パプリも食べ終わったか」
色々考えているうちに、パプリは満足する量の雑草を食べてしまったようだ。
鬱蒼と生い茂った雑草はまだまだ残っているし、これはパプリの夜ご飯にでもするか。
パプリの朝食が終われば、今度は俺の朝食である。
俺はさっさと朝食をかきこんですぐに街に向かう準備を始めるのだった。
「今日は荷物もほとんど無いし気楽に行けるな。パプリ、そろそろ行くぞ」
俺は昨日まで麻袋に入れて持ち歩いていた斧を手に持ち、パプリを抱えて街へ向かうことにした。
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