第60話
家に戻った俺は朝食をすぐに済ませることにした。
お腹いっぱいのパプリは布団の上で大人しくしているので、今日は落ち着いて朝食を取ることができた。
その後、布団をたたんで再び畑に向かおうとした時、ゴトンという音と共に床に何か重たいものが落ちたことに気がついた。
「ん?なんの音だ?」
俺は何が落ちたか確かめるため、たたもうとしていた布団をよけることにした。
すると布団をよけた場所に転がっていたのは、大きな2つの金塊だった。
「またパプリが生み出したのか。アルベールさんも言っていたけど、たくさん買い取ってもらえるような話じゃなかったしなあ……」
金塊をたくさん買い取ってもらえるのならパプリの能力も嬉しいものだと思っていたが、どうも希少金属は国が管理しているらしい。あまり市場の金が増えてくるとそのうち国から捜査を受けそうだし気をつけないとなあ。
俺はパプリが生み出した金塊をとりあえず麻袋に入れておくことにした。
「さて、新しく種を蒔いた作物の様子でも見にいくか……パプリも行くか?」
再びレインコートに着替えた俺を見たパプリは連れて行けとでも言いたげに、玄関の前でピョンピョンと飛び跳ねていた。
スライムって風邪ひかないよな……?まあ、雨の中家の裏の雑草を黙々食べて未だに元気だし大丈夫か。
そうして俺はパプリと共に新しく種を蒔いた6種類の作物の様子を見に行くことになった。
◇
俺はまずヴァネットとピナエルの種を蒔いた畝の様子を見ることにした。
すでにヴァネットもピナエルも種は発芽しており、本葉が4〜5枚ほどまで成長していた。
「ヴァネットって作物は本葉がギザギザしているけど……何が出来るかさっぱり分からんな」
さすがに芽が出てすこし生長したくらいではどのような作物か判断できなかった。
もう少し様子を見てみないとなあ……。
俺はその後、他の畝の様子も見て回ったが、なかなか発芽率も良さそうで安心した。
問題なのは土壌の栄養分なんだけどな。
「久しぶりに土壌の成分でも見てみるか。土壌診断」
俺は『
◇ヴァネット&ピナエルの畝◇
【保水性】 4/10
【排水性】 3/10
【通気性】 3/10
【p H】 6.2
【栄養素】 N:少ない
P:少ない
K:少ない
【状 態】 水分過多。根腐れの可能性あり。
「おおおいいいいいい!!不吉な一言書いてあるんだけど!?」
そんな簡単に根腐れしますよ、みたいな感じで言われても困るんだけど?
「水はけ良くしようにも雨降っててどうしようもできないぞ……。やっぱりこの排水性の数値は間違いではないんだな……」
そもそも最近ようやく『資材ショップ』がレベルアップして土壌改良ができるようになったのだ。元々土の状態が悪かったから仕方がないと言えば仕方がないが……何もできないとなると悔しいな。
働いていた時はひたすら言われた作業をこなしていたから自分で試行錯誤する、なんていう農業をしていなかった。そのツケが回ってきたということなのかもしれないな……。
「はあ、なんとか元気に育ってくれることを祈るしかないな」
新しく種を蒔いた他の畝の様子も土壌診断して回ったが、全て根腐れの可能性ありと表示されていた。
たしかに言われてみれば畝が水を吸わないでベチャベチャしているようだった。
そこそこ育ったコブルコやポムテルの方には異常は見られなかったが、長い間雨が降ると危ないかもしれない。
「雨があがったら肥料を撒いて、新しい畝は本格的に土づくりをしないといけないな……」
俺はこの世界に来て初めて、作物をダメにしてしまうかもしれない可能性が出てきてかなり落ち込んでしまったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます