第59話

 翌朝。


 目を覚まして補給ボックスの時計を見ると5時をまわったところだった。


「うーーん……よく眠れたな。よし、今日は畑をどんどん拡大してしまおう」


 相変わらず朝が弱いのか布団でモゾモゾしているパプリを置いて、俺は外に向かうことにした。


 そうして扉を開くと、外はシトシトと雨が降っていた。


「……そういえばここに来てはじめての雨だな」


 この世界に来てずっと天気が良かったので雨の降らない世界なんじゃないかと思っていたが、その心配は杞憂に終わった。


 しかし、予定がかなり狂ってしまった。


「雨降ってたら畝立てなんて出来ないよな……」


 今日は畝を立てまくって畑を拡大しようと考えていたが、その作業は出来なくなってしまった。

 雨の日に畝立てをしようとすると、土を練り上げてしまい土が固く締まってしまう。

 

 天気予報が無いと予定も立てられないし不便だな……。昔の農家がどれだけ大変だったのか身に染みる。


「畝立ては延期するしかないな……」


 俺はひとまず家の中に戻ることにした。

 雨の日に活動するための雨具も持っていなかったので、俺は『資材ショップ』でレインコートを探すことにした。


 『資材ショップ』を発動して現れたタブレットでレインコートを探そうとすると、今までより商品の量が増えていることに気がついた。


「ん?なんか見たことない商品が増えてるけど……なんで?」


 俺が不思議に思っていると、メッセージのアイコンが点滅していることに気が付き、早速見てみることにした。



◇From カミラ◇


 元気そうで何よりじゃ。

 お主の功績を考慮して資材ショップの品揃えを少し豊富にしておいたのじゃ。

 今まで肥料や土などが無くてお主も困っていたじゃろう?わらわが地球の神様に聞いて色々作ってみたのじゃ。これで少しは土の栄養も良くなるじゃろう?


 できれば魔法の肥料を使ってほしい所じゃが、お主が楽しく農作業できるのが1番じゃろう。

 次の上納も期待しておるぞ〜。





「カミラも色々やってくれてるんだなあ……ありがたい話だ」


 俺のわがままで魔法の肥料を使わずに育てることで収穫が遅くなってるのに、さらに肥料や土を用意してくれるなんて心の広い女神だな。

 まあ、肥料なんかは後でじっくり見てみるか。

 

 カミラのメッセージを読んだ後、俺は再びレインコートを探すことにした。目当てのものはすぐに見つかり、早速購入することにした。


 いつも通り空中に木箱が現れたので、俺はそれを床に落とさないように受け取った。


「おお、結構丈夫そうなレインコートだな」


 俺が購入したのは紺色のレインコートだった。早速それに着替えて外に出ると、しっかり撥水も効いてかなり品質が高そうだった。


 レインコートに着替えた俺は、雨が降っていてもやってしまいたいことがあったのだ。


「そろそろ苗も育ってきたし、支柱を立てても良さそうだな」


 そう、コブルコの支柱立てである。

 苗が育つのを待っていたが、今日の朝にはかなり成長していることに気がついた。


 俺は『資材ショップ』から支柱セットを購入して、コブルコを植えている畝に設置していくことにした。


「コブルコも生長が早いからツルがきちんと伸びていくかチェックしておかないとなあ」


 支柱セットを設置しても全然違うところにツルが伸びていけば本末転倒だ。異世界産の作物は生長が早すぎて管理が逆に難しいかもしれないな……。


 そうしてしばらく作業を続けると、ようやく畝全体に支柱セットを設置することができた。


「ふう……雨の日だと手元が滑って作業がしづらいな。何はともあれ無事に終わってよかった。そろそろパプリも活動的になる時間かな?」


 そうして俺は農作業を中断して家に戻り朝食を食べることにした。


 家に入るとパプリが玄関で俺の帰りを待っていたようで、俺をみると元気に跳ね回っていた。


「おはようパプリ。腹が減ったんだな?」


 どうやらパプリの中で俺は餌をくれる人と完全に認定されたようだった。可愛いから許すけど。


「うーん……外は雨なんだけどなあ。外に出てみるか?」


 俺は一旦パプリを抱えて外に出ることにした。しかしパプリは雨が降っていても気にしないようで、昨日の夜連れて行った家の裏で朝食を済ませてもらうことにした。


 雑草で喜ぶなんてコスパが良すぎるペットだこと。

 雨が降る中パプリが満足するまで食べ終わるのをずっと待っているのは飽きてくるが、餌を食べさせないとうるさくなるのが目に見えているので我慢するしかない。

 

 『資材ショップ』で購入したレインコートは防水にかなり優れていて、斜面にそのまま座っても水が染みてくることは全くなかった。

 またこのレインコートも完全防水とか、とんでもない性能なのかもしれないが知らんぷりしておこう。


 しばらくするとパプリは満足したのか、座っている俺のお腹へ向けて飛び跳ねてきた。


「あぶないな……突っ込んでくるなよ。ほら、家に戻るぞ」


 そうして俺はパプリを連れて家に戻ることにした。

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