第58話

 マクスルの実とデフスンの実にそれぞれ『錬金』を発動すると、エドラ草やカシア草を『錬金』した時よりも数段明るく発光し始めた。

 まるでLEDランプのような発光はすぐに収まり、目の前には2種類の錠剤のようなものが出来上がっていた。


「『錬金』の光が少し明るかったってことは品質ランクが高かったのか?」


 今まで『錬金』を発動した中で、魔法の肥料に次ぐ明るさだった。

 俺は出来上がった薬に少し期待しながら『鑑定』を発動した。



◯怪力の薬(レベル3)◯

 服用すると一時的に攻撃力を増強することができる薬。5分間攻撃力が1.3倍になる



◯耐久の薬(レベル3)◯

 服用すると一時的に耐久力を増強することができる薬。5分間耐久力が1.3倍になる



「おお、きちんと『錬金』できたみたいだな……ところでなんで2つとも品質レベルが3まで上がってるんだ?」


 無事にステータスを増強できる2つの薬を作り出すことに成功したが、なぜか品質レベルが上がっていることに疑問を覚えた。


「まさか……ステータスオープン」


 俺はこの原因について心当たりがあったので自分のステータスを見てみることにした。




 【名 前】 コーサク

 【年 齢】 18

 【職 業】 錬金農家アルケミー・ファーマー

 【レベル】 8

 【体 力】 80/80

 【魔 力】 38/38

 【攻撃力】 52

 【耐久力】 17

 【素早さ】 24

 【賢 さ】 80

 【スキル】 農学者アグロノミスト(レベル1)

    錬金(レベル3)(+1)

    鑑定(レベルMAX)

    資材ショップ(レベル2)(+1)

 【経験値】 496/575(収穫数)



「やっぱり『錬金』のスキルレベルが上がってるな……レベルってこうもポンポンと上がっていくものなのか?」


 あまりにも簡単にスキルレベルが上がりすぎているが、他の『錬金術師』などもこのペースでレベルが上がるのだろうか?


 まあレベルが上がってそこそこ品質の高いものが作れるようになったとはいえ、俺の本業は農家なのだ。

 このまま『錬金』に夢中になってしまうと『錬金術師』として生活してしまいそうだった。


「もう少し農業に携わる時間を増やしたいし明日から畑も少し拡大しようかな……。街に毎日行けるほど時間が余っているのも少しもったいなく感じてきたからな」


 特にあのグウェンとかいうクソギルドマスターにはしばらく会いたくないのだ。俺の農業スローライフはあの人のせいで存続の危機に立たされる可能性があるのだ。

 明日はアルベールさんの所へ野菜を届けてすぐに帰ってくるかな……。


「まあ、今日はもう少しだけ『錬金』を続けるか。プリシラに交換してもらった素材もまだ残ってるし」


 そうして俺はプリシラに気をつけて扱うようにと言われていた3つの素材を慎重にローテーブルの上に広げた。


「こんなに慎重に作業しないといけないなんて、爆発物処理班みたいだな……」


 プルチュアの実を刺激して破裂してしまうとファミーの実とクレートの実を巻き込んでとんでもないことになってしまう可能性がある。

 俺は危険な素材をさっさと『錬金』してしまうことにした。


 プリシラに言われた通り、俺はまずプルチュアの実とファミーの実を合わせて『錬金』することにした。


 2つの素材に向けて『錬金』を発動すると、先ほどと同様にLED電球のような明るい発光が起こった。

 こんなにピカピカ光るならできればサングラスが欲しいところだな……目がチカチカしてくる。


 そうして『錬金』の発光が収まると、目の前にはまるで野球ボールのように白い球状のものが出来上がっていた。


「これが煙幕玉、だっけ……?」


 プリシラはどういう用途に使うか教えてくれなかったので、とりあえず『鑑定』を発動して調べることにした。


◯煙幕玉(レベル3)◯

 ボタンを押し込んでから5秒後に周囲30メートルを覆うほどの煙を発生させる玉。

 モンスターの嗅覚を鈍らせる香りを含むので、モンスターから逃げ出す時に使用されることが多い。



「……アンフェルボアに出会う前に欲しかったよ。タイミング悪いな」


 出来上がった煙幕玉はなんとモンスターの嗅覚を鈍らせる効果も付属していてかなり使いやすそうだった。

 まあ、今後アンフェルボアのようなモンスターが現れた時にはとても役に立つだろう。出会わないことに越したことはないけどな。


 煙幕玉を作り終えた俺はその後すぐにクレートの実とプルチュアの実に向けて『錬金』を発動させることにした。

 できれば今日中にプルチュアの実を消費してしまいたいのだ。


 そうして2つの素材を『錬金』すると、先ほどの煙幕玉と同じような球状のものが出来上がった。色が黄色という点以外は煙幕玉とそっくりだった。


「構造は似てるんだな……性能はどうなんだろう?『鑑定』」


 俺は出来上がった玉に向けて『鑑定』を発動した。



◯閃光玉(レベル3)◯

 ボタンを押し込んでから5秒後に周囲を閃光に包むと同時に甲高い音を発生させる玉。

 直視すると視界を奪われ目の前がしばらく見えなくなる。



「……これもモンスター対策ってことか?でも人間にも効きそうだし、扱いには気をつけないとな」


 出来上がったのは目眩しとして使えそうなものだった。

 まるで軍隊などが使うフラッシュバンのような性能だし、万が一人に襲われそうになった時にも使えるかもしれない。そんな機会が来ないことを望むが。


 その後俺はプルチュアの実を全て消費するために煙幕玉と閃光玉を作り続けた。

 

 すると途中で魔力が無くなってきたので、今日作った魔力回復薬を水に溶かして服用することにした。


「……うぇっ。苦すぎるだろこれ……錬金術師ってこんなのを毎日飲んでるのか?」


 前に俺が魔力切れで倒れた時に、錬金術師は魔力が切れないように魔力回復薬を飲み続ける、という話をカミラから聞いたがこんなのを飲み続ける奴本当にいるのかと疑いたくなるほど酷い味だった。


 ステータスを見てみると確かに魔力が回復していたので効果は抜群なのだろうが、できれば美味しい魔力回復薬を作りたいところである。


 そうして無事に魔力を回復することができ、その日はプルチュアの実が無くなるまで『錬金』を続けた。


 かなり長い時間『錬金』を続けていて疲れていたのか、俺はその後すぐに眠ってしまった。

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