第57話

「まずは今日買ってきたものに手を付けたいけど……昨日の残りも試してみないといけないな。今日は複数試してみよう」


 俺はまず昨日試していない素材から手を付けることにした。


 まず俺が手に取ったのはカシア草という低級薬草に分類される薬草だった。昨日はエドラ草をメインに『錬金』していたので、同じ低級薬草に違いがあるのかも気になっていたのだ。


「まずはエドラ草と同様に単品で『錬金』してみるか……『錬金』」


 俺が『錬金』を発動すると、カシア草はぼんやりと発光した。


 光が収まると、そこにはエドラ草から作り出した低級回復薬と全く同じように粉末状のものが作られていた。


 俺は作り出した回復薬を『鑑定』することにした。



◯低級回復薬(レベル2)◯

 水に溶かして外傷にかけると、傷を癒して体力を10ポイント回復させる事ができる。



「よし、無事『錬金』出来たようだな」


 どうやら元となる素材が違っても低級薬草に分類されているものは作成できるものが同じらしい。


 そうしてカシア草の『錬金』も終わり、俺は次の素材を用意した。

 俺が手に取ったのはオレンジ色の派手な見た目をした植物、アミュレス草だった。


 アミュレス草は低級魔力草に分類されるらしく、これを『錬金』すると魔力回復薬が作成できるらしい。


「これが上手くいけば半永久的に『錬金』を続けられそうだが……なんか体に悪そうだな」


 魔力切れを起こす前に無理やり薬で回復するなど、会社に寝泊まりしてエナジードリンクを飲みまくる社畜のようなものだろう。

 まあ過労で死んだ俺がどうこう言える話でも無いんだが。


「とりあえず作ってみるか……『錬金』」


 俺はアミュレス草に向かって『錬金』を発動した。


 白熱球のようなぼんやりとした発光が収まると、低級回復薬のような粉末が作成できていた。

 紫色の粉末なのでかなり見た目は悪いが……本当にこれが魔力回復薬なのか?


 俺は疑うようにその粉末に向けて『鑑定』を発動した。



◯低級魔力回復薬(レベル2)◯

 水に溶かしたものを飲むと魔力を10ポイント回復することができる。



「へえ、これを飲むだけで『錬金』5回分の魔力が回復するのか。便利な薬だな」


 まあ魔力が切れる度にこれを飲んで延々と『錬金』しようとは思わないけど、急に魔力が必要になる時もあるかもしれないし大事に取っておくか。


 無事に昨日購入した錬金素材を試せたので、俺はようやく今日購入した方の素材に手を伸ばした。


「そういえばプリシラが事細かく説明してくれたこともあって『鑑定』してなかったな。詳しく見てみるか……『鑑定』」


 プリシラが素材を用意した時に用途などを詳しく説明してくれたのでそこで満足していたが、一応『鑑定』でも見てみることにした。



◯マクスルの実◯

 8メートルほどまで成長するマクスルの木から採取できる木の実。橙色の実は『錬金』で作られる怪力の薬の素材となる。


◯デフスンの実◯

 2メートルほどまで成長するデフスンの低木から採取できる木の実。淡い青色の実は『錬金』で作られる耐久の薬の素材となる。



◯ファミーの実◯

 黄色いファミーの花から採取できる小さな果実。衝撃を加えると周辺に多量の煙を発生させる。


◯クレートの実◯

 夜にうっすらと発光する不思議な木の実。木の実を割ると強烈な閃光を発生させる。

 


◯プルチュアの実◯

 プルチュアの低木から採取できる小さな木の実。衝撃が加わると激しい音と共に破裂する。



「プルチュアの実が危険なのは本当みたいだな……。家に帰ってくるまでの間爆弾運んでる気分だったが、慎重に運んで正解だな」


 やはりプリシラの説明通り、衝撃を加えると破裂したり煙が出たりと、扱いに注意が必要なものばかりだった。


 まあ、俺が面白いものをくれと言ったのが悪いのかもしれないが。


「まずはマクスルの実とデフスンの実から試してみるか」


 俺は怪力の薬と耐久の薬、というものが『錬金』できると表示された2つの素材を手に取った。


 マクスルの実は小さな柿のようでそのまま食べても美味しそうだが……腹を壊すのは嫌なのでやめておこう。そもそも見た目通りの味とは限らないし。


「作られる薬はどれくらいの効果があるんだろうな……まあ作ってみればわかるか」


 そうして俺はマクスルの実とデフスンの実に向かって『錬金』を発動させるのだった。

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