第52話
「超高級って……そんなに良いものなのか、そのプエリア草」
以前鑑定で見た時には、上級回復薬の素材になるそこそこ希少な薬草なんだな……くらいにしか思っていなかったが、プリシラの言う通りであればかなり良いものを発見できたことになる。
「冒険者の場合、プエリア草を採取出来たら2、3日ギルドで依頼を受けた分くらいの報酬になるって話だけど……世間知らずのあんたが知るわけないさね」
「世間知らずで悪かったな!仕方ないだろ今まで農作業ばかりしてたんだから」
しかし、冒険者が3日で稼ぐほどのお金って多いのか少ないのかわからないな。まあ、この薬草を拾って帰るだけでそれなりの金になるんだったらみんな喜んで持ち帰るだろう。
「ちなみにそれは買い取ってもらえないのか?上級回復薬の素材ってことは、『錬金』の練習中の俺には余る素材なんじゃないか?」
俺がプエリア草を持って来たのはプリシラに買い取ってもらうためだったのだ。
『錬金』で上級回復薬の素材にするのも良いかと思ったが、以前プリシラが言ったように良い素材を使って品質の悪いものを作っても勿体ないと思っていた。
「まあそれもそうさね。それならそのプエリア草と交換って形で『錬金』の素材でも持って帰るのはどうだい?まだまだ練習したいんだろう?」
「そうしてもらえると助かるよ。まさか昨日で使い切ってしまうとは思わなかったんだ。一部はこいつが食べてしまったんだけどな」
そう言って俺は大人しく薬草を食べているパプリを指差した。
「それにしても1日で素材を使い切ってしまうなんて聞いたことないよ?低級回復薬を『錬金』するにしても、魔力回復薬が無いと良いところ6、7回が限度さね。あんた、魔力はいったいいくつなんだい?」
プリシラは俺の魔力について尋ねてきた。
しかし俺は、プリシラが言ったことに疑問を覚えた。
魔力回復薬が無くてもレベルを上げていけばその分魔力も増えて『錬金』の回数も増やせるんじゃないのか?
そう考えた俺だったが、一般的な生産職についてカミラが言っていたことを思い出した。
「あ、モンスターを倒さないとレベルが上がらないんだっけ……?」
「急に当たり前のことを言い出してどうしたんだい?それより私の話を聞いていたのかい?あんたの魔力はどれくらいなのか聞いたんだけど?」
独り言が漏れてしまったようで、変なものを見るような目でプリシラはこちらを見て来た。そんな目を向けるな婆さん!悲しくなるだろう!
「俺の魔力だったな……今は38まで上がったところだ。単純計算だが20回近くは『錬金』を発動できるみたいだ」
「……38だって?あんた、冒険者だったなんて聞いてないよ?」
プリシラは俺の言葉を聞いて、なぜか俺のことを冒険者と認識してしまったようだった。
しかし、そう認識された理由もすぐに気がついた。他の職業はモンスターを倒さないとレベルが上がらない。モンスターを倒すのを生業とする冒険者であれば、ステータスが上がっているはずとプリシラは考えたのだろう。
「ギルドには入っていないが畑の周辺に出るモンスターを定期的に狩っているんだ。ところでプエリア草と交換してくれる素材っていうのはまたエドラ草になるのか?面白そうだから他に色々試してみたいんだが」
俺は話を逸らすように交換してもらう錬金素材についてプリシラに尋ねた。弁明しても面倒くさそうだったし、そのうちプリシラも忘れるだろう……多分。
「別にそれは構わないけど……ちょっと待ってな」
プリシラはそう言うと店の奥に向かっていってしまった。どうやら俺の要望した素材は陳列されている棚の中には無いようだ。
俺は相変わらずエドラ草を大人しく食べているパプリを愛でながら、プリシラが戻ってくるのを待つことにした。
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