第41話
俺はパプリを脇に抱え、街へ向かうために森の中を進んでいた。
最初はパプリを自由に歩かせていたのだが、その辺に生えている薬草などを見つけると毎回止まってしまった。俺は早めに街に向かいたいので、行きはパプリを抱えて歩くことにした。
帰り道に時間があればパプリを自由に歩かせようと考えていた。
「今日は昨日のように変な鳴き声も聞こえてこないし随分平和だな。グランドボアに追いかけられるのも御免だし、早めに森を抜けてしまいたいな」
なぜか今日の森はシーンと静まり返っていた。モンスター達はまだ活動していないのだろうか?
俺はそんなことを考えながら、急いで森を抜けるため早足で歩いていた。
今の俺は片手でパプリを抱え、もう片方の肩に二つの麻袋を背負っている状態だ。モンスターに出会ったとしても全力で逃げることしかできなさそうだった。
「斧を腰あたりに装備できるようになれば便利そうなんだけどなあ……。お金が貯まったらそういうものも買ってみるか」
斧は今現在、グランドボアの牙を入れた麻袋に収納してある。すぐに取り出すことはできない状態だった。
モンスターが出てきませんように、と願いながらしばらく歩いていると、少し先に開けた草原が見えてきた。
「お、ようやく森を抜けられそうだな。モンスターにも出会わなかったし、今日は平和な1日になりそうだな」
昨日はモンスターに追いかけられていたこともあり、今日は森を抜けるのに少し時間がかかった気がする。
まあ、安全に森を抜けられることの方が大事かもしれないな。
そうして俺が森を抜けると、昨日設置したはずの支柱セットは無かった。
「あれ?たしか森を抜けた所に設置したはずだったけど……どこいったんだ?」
あたりを見渡すと、少し離れた場所に布のようなものがヒラヒラと動いているのが確認できた。
うーん……森をまっすぐ歩いているつもりでも少しずつずれてしまうのかもしれないな。そのうち草原までの道を整備しておくと街へ向かう時に便利になるか。
「まあその辺は追々考えることにするか。まずは街に向かわないと」
俺が街に向かって歩き出そうとした時、森の中からバキバキと木々の折れるような音が聞こえてきた。
「……めちゃめちゃ嫌な予感がする。この音、何かが近づいて来る音か?」
俺は音がする森から距離を取るために、すぐに街の方へと全力で走り出した。
しばらく走っていると、森の方から草原に向けてかなりのスピードで赤い体毛のモンスターが飛び出てきたのだった。
「またイノシシかよ!今度は色違いか!?」
昨日倒したグランドボアは全身真っ黒の体毛だったが、今目の前に現れたのは真っ赤な体毛のイノシシだ。色々な種類がいるのだろうか?
俺はパプリを落とさないようにしっかり抱えて、街の方へ全力で走った。
やはり、赤いイノシシ型モンスターは逃げる俺を追いかけてきた。
昨日のグランドボアといい、なんで俺を追いかけて来るんだよ!
しかし、今日の俺は昨日の俺とは一味違う。作物を収穫したことで俺の素早さは4ポイントも上がったのだ。
「昨日の熊型モンスターみたいに振り切ってみせる!どうだ、そろそろ諦める頃だろう?」
しばらく走っていた俺が振り返ると、逃げ出した時とほとんど同じ距離を保って、イノシシ型モンスターは追いかけて来ていた。
走るの速いなこいつ!いい加減諦めてくれよ!
走りながら斧を取り出すか?でもそんなことをしている最中に追いつかれるかもしれないし……。しかしこのままだとジリ貧だろうな。
俺が走りながら作戦を考えていると、少し先の方に3人組の武器を持った人達が目についた。
あれがいわゆる冒険者だろうか?ここはなんとか助けてもらうしかない!
「おーい!助けてくれ!」
俺は冒険者らしき人達に手を振って助けを求めた。
すぐにその3人組は武器を取り出し、戦闘体制に入ったように見えた。
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