第32話
無事に家に着いた俺は、とりあえず脇にスライムを抱えたまま家の中へ入ることにした。
「はあ、さすがに色々あって疲れたな……。とりあえず腹が減ったし飯を食うか」
補給ボックスの扉についている時計を見ると、すでに午後3時を回っていた。
扉を開けようとしたところで、俺はある点に気がついた。
「そういえばとっくに昼飯の時間が過ぎてるけど、まだ食べられるものなのか?」
まさか時間が経つと食事が消えてしまう、ということもあるのだろうか。
俺は昼食が無くなっていたらどうしようという不安を胸に抱え、少しドキドキしながらゆっくりと扉を開いた。
「……良かった。昼飯は消えてないようだな」
補給ボックスの中にはいつも通りの食事が入っていた。
俺はホッと胸を撫で下ろし、すぐに昼食をとることにした。
今日の昼食は貝類が乗ったパスタのようなものだった。
そして驚くことに、パスタは全く冷めておらず湯気が出るほど温まっていた。
「どういう仕組みなんだろうなこれ」
まあ、カミラが用意したものだしその辺は今度会う時にでも聞いてみるか。
そうして俺は、少し遅めの昼食を食べることができた。パスタは魚介の出汁が効いたスープパスタのようなもので、とても美味しかった。
◇
「ちょっと畑の様子でも見に行くか」
遅めの昼食を食べ終わり、少し休憩した後に俺は外に出ることにした。
普通であれば、頻繁に畑を見に行く必要もあまり無いのだが、俺が見に行くのは魔法の肥料を撒いた畝だ。
あの畝は俺の普通という概念を覆すものなので、収穫間近の作物は少し注意して見たほうが良いだろうと考えたのだ。
俺が外に出ようとすると、スライムもピョンピョンと跳ねて俺についてきた。
「お前の餌はまだ無いからな?間違っても育てている苗を食べたりするなよ?」
収穫直前の苗を食べられたら、さすがに落ち込んでしまうかもしれない。まあ、魔法の肥料を撒いた畝だから5日もすれば収穫できるんだろうけど。
外に行きたがるスライムを家の中に置いていくのもかわいそうだと思ったので、俺はスライムを脇に抱えて畑に行くことにした。
それなら勝手に作物を食べてしまうということも防げるだろう。
外に出て魔法の肥料を撒いた畝に近づくと、ポムテルの苗が少し黄色く変色していた。
「お、そろそろ枯れ始める頃なのかな?これなら明日の朝に収穫できそうだ」
さすが魔法の肥料。相変わらず作物の生長が早すぎる。
隣の区画のシュワンも結球が朝よりも少し大きくなっていた。『鑑定』種をで見た時に栽培期間が一緒だったし、シュワンも明日に収穫できるかもな。
「作物が成長するのはいいけど……相変わらず雑草の生長も早いな。スライム、これなら食っていいぞ?」
俺はポムテルの苗の近くに生えていた、白い小さな花を咲かせている雑草を、脇に抱えているスライムに近づけた。
スライムは少し様子を見るようにモゾモゾしていたが、すぐにその雑草を捕食し始めた。
「なんでもいいのかこいつは……。いや、違うか。この畝は品質も上がるっていう話だし、ただの雑草でもスライムにとっては捕食の対象なのかもな」
それなら別に雑草を食べさせてもいいかも知れないな。スライムも意外と雑草だけだ満足しているし。
その後は、畝に広がる雑草をひたすらスライムに食べさせる作業になってしまった。
意外とスライムは食べるのに時間がかかるようで、いつもの雑草抜きの数倍の時間がかかってしまった。
「ペットの餌やりも大変だな……。まあ連れてきたのは俺だし文句は言えないか。ペットと言えばやっぱり名前を付けてやらないとなあ」
スライムの餌やりを終えた俺は、家に戻って名前を考えることにした。
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