第30話
「……いやいや、ありえないだろ。なんでこうなった……?」
俺は目の前の光景が信じられずにそう呟いた。
俺もスライムも無事に生き残ることができて良かったが、本来なら俺たちが死ぬと思っていた。
こんな馬鹿みたいに大きなイノシシの突進を食らって無事でいられるわけは無いのだ。
叩き込んだ斧ごと吹き飛ばされる覚悟でいた俺だったが、なぜかイノシシ型モンスターの頭を真っ二つにできてしまった。
「俺のステータスってもしかしたらおかしいのかもな……」
まさかこんなイノシシを倒せるステータスの人間がゴロゴロいるなんていうのは少し考えにくい。それならあの街の周りを囲っている壁もいらないはずだからな。
スライムは相変わらず俺の周りをピョコピョコと跳ね回っており、特に俺のことを怖がったりなどということは無いようだ。
「ステータスのことは後回しだな……それよりもこのイノシシどうしようか。おい、お前はこのイノシシは食べられないのか?」
言葉が伝わるかどうかは分からないが、俺はスライムにイノシシ型モンスターを捕食できないか尋ねた。
俺がイノシシ型モンスターへ指を差すと、なんとなく俺の伝えたいことが分かったようだったが、スライムは草食らしく拒否をするようにイノシシ型モンスターから距離を取った。
「ダメか……ここに置いていっても良いかどうかもわからないしなあ……。あ、そうだ。『鑑定』」
俺はイノシシ型モンスターから何か剥ぎ取れる素材があるかも知れないと考え、『鑑定』を発動させた。
◯グランドボア◯
大型のイノシシ型モンスター。繁殖力が高く、あらゆる地域で生息が確認されている。
嗅覚がとても鋭く、300メートル離れた場所からでも臭いを嗅ぎ分けることができる。グランドボアの毛皮や牙は、防具や武器に活用されることが多い。
C級冒険者が10人集まってようやく倒すことができる。
「300メートル!?だから森に入ってすぐに襲われたのか……?」
『鑑定』の結果、とんでもないことが表示された。しかも、こんな馬鹿でかいイノシシがあちこちに生息していると考えると、街に向かうのも命懸けだ。
「このC級冒険者が10人っていうのが全く分からないが、それなりに強いモンスターだってことなのか?」
冒険者という職業はゲームや小説などでよく目にするが、この世界にもそういった職業があるのは初めて知った。
今日訪れたのは商業地区だけだったので、もしかしたらあの街にも冒険者ギルドのようなものがあるのかも知れないな。
「とりあえず、牙だけ持っていくか。毛皮の剥ぎ方なんていうのは分からないし」
牙くらいであればなんとか持って帰ることができるだろうと考えた俺は、持っていた斧を牙の根元へ叩き込んだ。
ガキン、という大きな音と共にグランドボアの牙を折ることに成功した。
「なかなかすごい音がしたな……斧が壊れたかと思ったぞ」
金属がぶつかるような音が響いたので、牙ではなく斧の方が負けてしまったかと思ったが、斧には刃こぼれのようなものも無く、グランドボアの返り血が付いている程度だ。
「斧ってこんなに壊れないものなのか?相当牙も硬いはずなんだけど……」
俺は少しこの斧が気になったので、『鑑定』を発動させた。
◯斧(レベル10)◯
見た目は普通の斧だが、耐久性と刃の切れ味にとても優れており、この斧が壊れることは無い。創造神が暇つぶしに作った斧である。
「壊れない斧ってどんな斧だよ!チートか!」
俺は『鑑定』で表示された文についツッコんでしまった。『資材ショップ』で買った斧はとんでもない性能をしていたようだ。
『資材ショップ』はカミラがくれたスキルだが、この世界の物と『資材ショップ』の物では別次元の品質のようだ。
「まあ、この斧があればなんとか家まで無事に辿り着けそうだな」
こうして初めてのモンスター討伐を終えた俺は、グランドボアの牙を2本抱えるように持ち上げ、ゴールデンスライムと共に再び家へ向かうのだった。
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