第21話

「おお!昨日よりすごく育ってるな!」


 まず始めに、俺はポムテルの手入れから始めることにした。

 ポムテルを見ると、苗がひと回り大きくなっていた。


 ジャガイモの場合、茎や葉が黄ばみ始めてだんだん枯れてきた頃が収穫時期だ。

 まだ葉っぱも深い緑でかなり元気そうなので、収穫はもう少しかかるかもしれないな。

 魔法の肥料を撒いた畝だから、あまり収穫までの日数が予想できない。


 俺はまた増えていた雑草を取り除くことでポムテルの手入れを終えることにした。


 一方、同じ畝に植えているシュワンだが、葉が球体になった結球が二回りほど大きくなっていた。


 しかし、触ってみるとまだふわふわしたような感触だった。さすがに収穫まではまだのようだ。


「見た目は完全にキャベツだけど……まだ柔らかいってことはさらに大きくなるのか?」


 すでにシュワンの大きさは地球のキャベツだと収穫しても良いほどの大きさだった。

 キャベツの場合、結球が硬く締まったらそれ以上大きくならないため収穫してもよいサインだ。

 明日には結球が締まって収穫できれば良いんだけどなあ。


「コブルコの時もキュウリがさらに美味しくなったような味だったし、ポムテルもシュワンも期待できそうだな」


 俺はシュワンの手入れをしながら、収穫後にどうやって食べようか考えていた。

 

 その後、魔法の肥料を撒いた畝に水を撒いた俺は、家に戻り朝食を食べた。

 朝食のメニューはセグリのパンとポトフみたいなスープだった。


 食事のメニューにバリエーションが無くて、そろそろ飽きてきたなと思ってしまう俺だった。

 



 朝食も食べ終わり、俺は普通に育てているコブルコとポムテルの畝の様子を見にいった。


「お、もうコブルコは芽が出てきたのか。さすが異世界産野菜は生長が早いな」


 コブルコはすでに芽が出てきていた。

 地球の作物だと考えられない速度だ。


 新しく立てたコブルコとポムテルの畝は魔法の肥料を撒いていないので、雑草なんかも1日で増えるようなことがなかった。

 収穫まで時間がかかる分、手間もそんなにかからないかもしれないな。


「ポムテルは……さすがにまだ芽は出ないか。20日で収穫できるなら明日くらいには芽は出てくるか」


 ポムテルの畝はまだ芽が出てきておらず、畝を立てた時と見た目は変わらない。


 まあ、魔法の肥料を撒いた畝がおかしいだけで、普通は次の日に芽が出るなんてことはないのだ。


 コブルコとポムテルの畝は特にやることもないので、そのままにしておくことにした。


 コブルコはもう少し目が育ってきたら間引きをしないといけないな。


「さて、今日は何をするかな」


 俺はすでに今日のやることを終えてしまったので、他に何をするか考えていた。


 畝を立てるのも良いかもしれないが、何かわからない作物を育てるのは最小限にしたかった。

 何か問題が起きた時に手が回らなくなっても仕方がないからだ。


「あ、そうだ。街に行こう!栽培した作物を買い取ってもらえるか気になるし」


 そういえばカミラが近くに街があると言っていたことを思い出した。

 街に向かうのはポムテルとシュワンを収穫してからでもいいかと考えていたが、そもそも野菜を買い取ってくれるところがあるかどうかもわからない以上、先に下見をするのも必要だと思った。


 一応補給ボックスから食料は支給されるが、肉や魚なども好きな時に食べたい以上このまま一文なしでいるわけにはいかない。

 厳密には『資材ショップ』のポイントはまだたくさんあるのだが、それで買い物ができるはずもない。

 

「街に向かうとして、問題はモンスターだよなあ……」

 

 カミラはこの世界にモンスターがいると言っていたし、素手で街に向かうわけにもいかなかった。


 俺は『資材ショップ』で何か武器になりそうなものはないかと探すことにした。


「お、これは良いかもしれないけど……これって農具なのか?」


 早速武器になりそうなものが見つかったので、すぐに購入することにした。

 購入するといつも通り空中に現れた木箱は地面に落下した。


 木箱を開けると、そこには木こりの人たちが使っていそうな立派な斧が入っていた。


「斧が農具に入っているということは、やっぱり農地拡大も視野に入れた方がいいのか?」


 おそらくこれは木を伐採するために用意されたものだろう。まさか一番はじめにモンスターに備えるために購入することになるとは思わなかったが。


「とりあえずこれでモンスターに襲われても何もできないで死ぬという可能性は下がったか。さて、早速街に向かうとするか」


 カミラの話だと、森を西に抜けた後に北に10キロほど進んだ先が一番近くの街だと言っていた。


 俺は購入したばかりの斧を右手に持ち、初めて結界石の効果がある外側に足を踏み入れるのだった。

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