第20話
翌日の朝。
俺は朝5時頃に起床し、種の入った袋を持って畑に向かった。
早速俺は昨日立てた畝に昨日選んだ6種類の種を蒔くことにした。
「うーん……種の大きさはバラバラだけど、とりあえずスジまきで植えてみるか」
選んだ6種類の種がどういった作物になるかはまだわからない。もしかしたら今から育てる作物の中にも、他の蒔き方が良いものもあるかもしれないが、スジまきは除草や間引きの作業も簡単になるというメリットもあるので今回はスジまきで行くことにした。
俺は畝に木箱を分解して手に入れた木材を押し当てて2本の溝を作る。いわゆる二条まき、と呼ばれる蒔き方だ。
それを3本の畝につくることができたら、種まきの準備はだいたい整う。
「よし、早速種を蒔いていくか」
畝にスジまき用の溝を作り終えた俺は、まずヴァネットとピナエルの種を2区画に分けて蒔いていくことにした。
ヴァネットの種は2ミリほどの大きさで全体的に丸みを帯びていて、えんじ色や黒色の種が入り混じっていた。
一方、ピナエルの種は淡い黄色のゴツゴツしたような見た目で、4ミリほどの大きさだった。
「ヴァネットの種は大根みたいな種だな。もしそうだとしたら種も結構似るものなのかもしれないな」
もちろん、ヴァネットが大根のような作物だと決まったわけでわないが、俺が働いていた農園でも大根はよく生産していたので、その種にも見覚えがあったのだ。
しかし、農園で働いていた俺はピナエルの種についてあまり見覚えがなかった。
俺もあらゆる作物を担当していたわけではないので、ただ単に見たことがないだけかもしれないが。
「まあ、見た目はどうだって良いよな。とりあえず蒔いていこう」
俺は種が畝に作った溝からこぼれないように慎重に蒔いていった。
10分もするとヴァネットとピナエルの種まきが終わり、俺は次の畝の種まきに移った。
次に種を蒔くのは、ジェイスとロブポンという作物の種だ。
ジェイスは、淡い黄色のまん丸とした8ミリほどの種だった。
ロブポンは、何かに押しつぶされたように平べったい、白っぽい色をした2ミリほどの種だった。
2つの種を並べると、かなり大きさが違うことがわかる。
そして、ジェイスという作物の種は、俺がよく知っている作物の種にかなり似ていた。
「……ジェイスって、絶対大豆だろ。この見た目で大豆じゃないって言ったらびっくりするぞ」
ここまでまん丸とした種は大豆以外に俺は知らなかった。しかも、種の色も大豆に似ている。
今他の畝で育てているポムテルも、最初は種芋から育てたが、その形はジャガイモそっくりだったのだ。
「なぜかはわからないが、種の形も実のかたちも地球の作物と似ている点がかなり多いな……。わかりやすくて俺にとっては良いことなんだろうけど、異世界なのにこんな作物ばかりなのか?」
俺は異世界の作物をマンドラゴラみたいに、ザ・ファンタジーと感じられるような植物と想像していたが、今のところほとんど地球の野菜と一緒だ。
まして、補給ボックスから出てくる異世界の料理に入っている野菜や、昨日収穫したコブルコなんかは、地球の野菜と風味や食感もかなり似ていた。
「まあ、農業ができればそれでいいか。この世界の作物はみんな栽培期間が早いみたいだし、色々試せるかもしれない」
俺はとりあえず種まきを終わらせることにした。
ジェイスとロブポンの種を溝に蒔いていき、ようやく3本目の畝の種まきに移ることができた。
「最後はメイトの種とシリックの種だな。メイトはトマトってわかってる分、面白みもあまり無いが……種もまるっきりトマトと一緒だな」
メイトの種の見た目は黄色っぽい雫のような形をした平べったい種だった。これを農家の人が見たら間違いなくトマトの種と答えるだろうというくらいにそっくりだった。
「シリックっていうやつの種は……ゴマっぽいな。なんだこれ?」
シリックの種は黒色でかなり小さい粒がたくさん入っていた。
仮にゴマだとしたら、そのうち胡麻油なんかも作ってみたいなあ。
まだ育たない作物に色々妄想を膨らませながら、俺は種まきをしていった。
メイトとシリックの種まきが終わり、用意した6種類の種を蒔き終えた俺は家に戻ると、補給ボックスの時計はまだ6時を過ぎた頃だった。
「まだこんな時間か。朝食までまだまだ時間があるし……魔法の肥料を撒いた畝の様子でも見てくるかな」
そうして、俺は再び畑に戻りポムテルとシュワンを育てている畝へと向かうのであった。
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