第19話
「そういえば、イチゴの種も『鑑定』できるのか?やってみるか」
畑に出てイチゴの種を植えるための畝を立てようとしていた俺だが、イチゴの種を『鑑定』していなかったことに気がついた。
俺は家から持ってきたイチゴの種に向かって『鑑定』を発動した。
◯イチゴの種◯
イチゴの種。水に浸けたあとに種を蒔くことで9ヶ月から1年後に収穫ができる。
イチゴの種を『鑑定』すると、そんなことが表示された。
ここで俺はひとつ、重大なことを思い出してしまった。
「……そういえば俺、イチゴの苗からしか育てたこと無いぞ?」
俺は家庭菜園レベルであれば、イチゴを栽培したことがあったのだが、それは近所の園芸店で購入した苗をプランターに入れて育てていた。
「どうしようか……正直、種の蒔き方もわからないな」
俺のイチゴ栽培は種を蒔く前に座礁に乗り上げてしまった。
手をつけようにもどうやれば良いのかわからない。
せっかくイチゴが食べられると思ったのに……!
「うーん……『鑑定』の結果通り、種を水につけてみるか?」
種の浸水、と呼ばれる種を水に浸ける作業は種の皮を柔らかくして発芽を早めるために行う作業だと言うことは知っている。
『鑑定』に表示されるくらいだから、できればそうした方が良いのだろうか?
「悩んでいても仕方ないし、とりあえずやってみるか」
そうして俺は種を水につけるため、『資材ショップ』で金属製のバケツを購入することにした。
俺はバケツを購入した後、目の前に現れた木箱からバケツを取り出し、すぐさまキッチンの蛇口から水を溜めていた。
俺がやったことのある種の浸水は6時間から12時間ほどと、結構長い時間浸けるのだが今回は種の大きさもそれほど大きくないので、俺は定期的に様子を見て時間を判断することに決めた。
そのあと、水を溜めたバケツにイチゴの種を全て投入し、家の中に置いておくことにした。
「分からないこともまだまだ多いな……まあこれも勉強だな。とりあえず畑に新しい畝を何本か立てておこう」
イチゴの種を水に浸けている間、やることもなくなってしまったので、俺は外に出て畑を耕すことにした。
今回、まだ聞いたことのない作物の種も購入したので、その作物用の畝を用意しなければならなかった。
◇
「ふう……こんなものにしておくか」
畑を耕し始めて3時間ほどで、畑には3本の新しい畝を立てることができた。
もちろん形は歪でガッタガタになってしまったのだが。
「イチゴの種はどうなったんだろう」
農作業がひと段落ついたところで、俺は一旦家に戻り、イチゴの種の様子を見ることにした。
しかしバケツの中を見ると、種にはあまり変わった様子がなかった。
「うーん……もうちょっと時間を置いたほうが良いのかな?」
どれだけ水に浸けるべきかもわからないので、とりあえずまだ様子を見ることにした。
イチゴを種から育てようとしたこともないので、色々試行錯誤していく必要がありそうだ。
「とりあえずイチゴの種は様子見するとして……明日の朝蒔く種を決めないとな」
先程立て終わった畝は、いつもと同じく長さ10メートルほどのものだ。
今回購入した種は10種類以上はあったはずだ。片っ端から購入してしまったのでどれくらい買ったのかは把握していなかった。
今日は3本の畝を立てたので、俺はその畝を2区画に分けて、計6種類の作物を育てようと考えていた。
俺は木箱に入っている種の袋を6種類選んで、『鑑定』を発動させた。
◯ヴァネットの種◯
ヴァネットの種。耕した土に植えると10日ほどで収穫できる。
◯ピナエルの種◯
ピナエルの種。耕した土に植えると10日ほどで収穫できる。
◯メイトの種◯
メイトの種。耕した土に植えると20日ほどで収穫できる。
◯ロブポンの種◯
ロブポンの種。耕した土に植えると20日ほどで収穫できる。
◯ジェイスの種◯
ジェイスの種。耕した土に植えると20日ほどで収穫できる。
◯シリックの種◯
シリックの種。耕した土に植えると10日ほどで収穫できる。
「うーん……相変わらず名前を見るだけじゃわからないな」
俺は鑑定で表示されたそれぞれの名前を見ても、どういう作物か予想できなかった。
メイトは前にパスタで使われていたものだから、おそらくトマトに近いものだろう。
「まあ、育てていくうちにどんな作物かは判明するか。今日はイチゴの種まきだけやっておこう」
そうして俺は『資材ショップ』で購入したプランターに畑の土を移すことにした。
そのあと2時間ほどすると、イチゴの種がゼリー状のように柔らかくなった。
俺はそのようになったイチゴの種を回収して、土を入れたプランターに植えていった。
イチゴは芽が出るまで時間がかかるという話を聞いたことがあるので、俺は気長に待つことにした。
イチゴの種まきを終えた俺はそのあとゆっくり過ごすことにした。
翌日の種まきが楽しみでその日の夜はあまり寝付けなかった。
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