第4話
「急に何を怒ってるんだよ?」
怒ってる理由も俺にはわからんぞ?
「普通の職業はモンスターを倒すことで経験値を得ることができるのじゃ。じゃから、生産職と呼ばれる『鍛治師』や『錬金術師』はレベルが上がらんのじゃ。スキルレベルはスキルを使うにつれてどんどん上がっていくがのう……。それに比べてお主の『
カミラは一般的な職業について説明をしてくれた。
なるほど、この『
「別にいいじゃねえかよ。お前の望む美味しい作物だってレベルが上がれば、少しは楽に生産できるようになるかもしれないんだぞ?そもそもお前が管理してる世界の職業の話なんだろう?」
「わらわは担当の世界が変わったばかりなのじゃ。シュクレーゼについても前任の女神からある程度は聞いておったが、前任の女神が言っていた職業は20種類もなかったのじゃぞ?」
「それは引き継ぎをしっかりしてないお前らが悪い」
そもそも俺が選んだ『
「逆に、お前今まで何やってたの?全職業を調べる暇も無かったのか?」
「……無いと言えば嘘になる。じゃが、上納される作物が美味しくないと知れば、それを改善しようとするのは当然じゃろう?わらわは農業を改善するように色々やったのじゃが、どうもシュクレーゼの住人はあまり農業に興味が無いようじゃ……」
カミラはしゅんとしょぼくれたようにそう言った。別にお前に上納することに命をかけてるわけでも無いんだから、作物が届くだけありがたいと思えよ。
「まあそこは心配するな。俺が美味しい野菜や果物なんかをたくさん食わせてやるよ」
「期待しておるぞ!お主の職業がわらわの知らぬものにせよ、美味しい作物が手に入ることに比べたらどうでも良いのじゃ!そうじゃな……せっかくわらわのために作物を作ってくれると言うならば、少しお主に贈り物を授けよう」
カミラはそう言うと、先ほどのように何も無いように見える場所で、指をスライドさせるような動きをした。
俺には見えないタブレットのようなものがあるのだろうか?
「ほれ、早くステータスプレートを開いてみるのじゃ」
カミラにステータスプレートを開くように急かされ、俺は慌ててステータスを開く。
「ステータスオープン」
【名 前】 コーサク
【年 齢】 18
【職 業】
【レベル】 1
【体 力】 10
【魔 力】 10
【攻撃力】 10
【耐久力】 10
【素早さ】 10
【賢 さ】 10
【スキル】
錬金(レベル1)
鑑定(NEW!)
資材ショップ(NEW!)
【経験値】 0/50(作物の収穫数)
ステータスを開くと、スキルの欄に新たに2つのスキルが追加されていた。
「何だこれは?」
「わらわからの餞別じゃ。お主も最初は地球と違う環境に戸惑うことじゃろう。それを補うためにわらわが便利なスキルをプレゼントするのじゃ!」
カミラは胸に手を当てて、少し偉そうにそう言った。まあ実際偉いんだろうけど。
「まあスキルも多い方が困らないかもしれないが……これはどういうスキルなんだ?」
「まず『鑑定』じゃが、それはあらゆるものの情報を知ることができるスキルじゃ。地球には存在しない動物や植物などもたくさんある。知りたいものを注視すると、半透明のプレートのようなものが出てくるはずじゃ。試しにお主が座る椅子でも鑑定してみるのじゃ」
俺はカミラに促され、自分の座っていたダイニングチェアを注視した。すると、目の前にステータスプレートと似たようなものが出てきた。
「おお……すごいな。えーと……一流のダイニングチェア。製作者、創造神……ってすごい偉そうな神様の名前が書いてあるんだけど!?」
そんな椅子に俺は座ってたのかよ!ニ◯リなんかのお買い得ダイニングチェアかと思ってたよ!
「わらわが神様になった頃に創造神様から譲り受けたのじゃ。壊したら承知せぬぞ?」
カミラは睨みつけるような視線を俺に送って、眼光を光らせていた。
そんなことを言われるともう座れねえよ。
「まあ半分冗談じゃ創造神様が作った椅子じゃから、何をどうやっても壊れぬじゃろう」
「なんだよ驚かせやがって……。それでもうひとつの『資材ショップ』ってのは何なんだ?」
俺は『鑑定』についての説明を受けた後、授かったもうひとつのスキル、『資材ショップ』についてカミラに説明を求めた。
「それはお主が農業に必要なものを買うことができるスキルじゃ。そのスキルはわらわが管理しているゆえ、何でもかんでも買い放題という訳にはいかぬ。お主がわらわに作物を上納した際に、わらわがポイントを与えることでお主も色々買えるようになる。作物が美味しければ美味しいほどポイントも奮発する。どうじゃ?いわゆるウィンウィンというやつじゃろう?」
カミラは『資材ショップ』についてそう説明した。しかし、このスキルは明らかにおかしいと思うんだが……。
「これ、ようするにお前が美味しい作物を食べるための資材を買えるってスキルだろう?ウィンウィンだとしても、99パーセントお前の利益になってるじゃねえかよ」
「そ、そんなことは無いのじゃ。ほ、ほらお主も慣れ親しんだもので農業ができる方が良いじゃろう?そう思ってこのスキルを授けたのじゃ。わらわのためではないのじゃ」
否定するならもう少し落ち着いて話せよ。うろたえすぎだろ。
「はいはいそういうことにしておいてやるよ。このスキルを使うにはどうしたらいいんだ?」
「口に出しても出さなくてもどっちでもよいが、『ショップオープン』といえば発動するようになっておる。試しにやってみるのじゃ」
「じゃあ……ショップオープン」
俺がそう呟くと、俺の手元にタブレットのような端末が現れた。どういう原理なんだろうか?
「へえ……地球上の野菜の種なんかも買えるのか……こんなの栽培してシュクレーゼの生態系は壊れないのか?」
「それは問題ないのじゃ。むしろシュクレーゼの作物の方が繁殖力が強い。地球の作物を育てるのもそう簡単ではないかもしれぬぞ?ちなみに、わらわは特にイチゴとやらを食べてみたいのじゃ」
「まあそれは気が向いたらだな。説明はこんなところか?早く行きたいんだが」
俺は説明がかなり長引いていたため、今すぐにでも土を触りたい気分だった。早く農業がしたいのに、カミラときたら説明ばかりだ。
「もう説明することはほとんどないのじゃ。わらわが呼べばここにまた来ることもできる。今度はゆっくり農業を楽しむがよい。それじゃしばしのお別れじゃ」
カミラがそう言った瞬間、俺の目の前は真っ暗になってしまった。
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