第5話
カミラとの会話を終え、目の前が真っ暗になった俺が再び目を覚ますと、視線の先には木造の天井が見えた。
辺りを見回すと、ログハウスのようなワンルームに敷かれた布団の上で目を覚ましたことにようやく気がついた。
「ここはもう異世界……シュクレーゼなのか?」
まだここが日本だと言われても信じるくらいには、地球と何ら変わった様子は無かった。こういった木造のコテージで宿泊したこともあるし。
起き上がって部屋を見渡すと、簡易的なキッチンが設置されているのが見えた。小さなシンクも付いており、蛇口をひねると水も普通に出てきた。
「……ここ日本じゃないよな?」
もしかしたら、カミラと出会ったことは夢だったんじゃないかとも思えてくる。
とりあえず外の様子でも確認するか。
俺は玄関に用意されていた靴を履き、ドアを開いて外に出た。
すると目の前に広がっていたのは、1ヘクタールはあろうかという広大な開けた土地だった。
「ここを畑にしていけということなのか?」
転移先の説明はろくに受けてこなかったので、詳しいことはわからないが……まあここが俺の土地ということでいいんだろう。
俺は一旦家に戻り、さっそく農業を始める準備に取り掛かった。
「ショップオープン」
俺はスキル『資材ショップ』を使うためにそう呟いた。
ショップでは植物の種を始め、
俺はとりあえず、畑を耕すために必要な道具を揃えることにした。
「所持ポイントは……1000ポイントか。どれくらい使うかわからないな……」
おそらくカミラが最初の農具を用意するためにポイントを用意していたのだろう。しかしそのポイントでどれだけ買い物ができるか全く分からなかった。
俺はざっと必要なものをリストアップし、商品をカートへ入れていくことにした。
俺は農具の中で
カートの合計は800ポイントと表示されていた。
「ほとんど使い切ってしまう計算だな……野菜の種も買いたいし……」
俺が購入するものについて悩み、ふと部屋にあるローテーブルの上に目を向けると、そこには1枚の紙が置いてあることに気がついた。
「なんだこれ?」
紙を見ると、どうやらカミラが用意してくれたもののようだった。
『忘れておったが、部屋の隅に木箱が置いてあるはずじゃ。そこに入っているものは自由に使うのじゃ。特に結界石は早めに起動しておくことをおすすめするのじゃ。起動しないとモンスターに食われることになるぞ』
「そういうことは最初に言っておけよ!」
俺は紙に書いてあったメモ書きのような文章を見て慌てて結界石を起動させることにした。
確かに部屋の隅には50センチほどの小さめの木箱が置いてあり、その中には緑の宝石のようなものが中心に埋め込まれた四角い石のようなものが入れてあった。
「結界石はこれか?……ってどうやって起動するんだよ!ハッ……!ここであのスキルだな、『鑑定』!」
俺はすぐさま、一番上に置いてあった石に向かって『鑑定』を発動した。
すると目の前に半透明のプレートが現れた。
◯結界石◯
モンスターを周辺200メートル以内に近づけさせない。発動は緑色の宝石に手をかざすだけ。
俺はその説明を見てすぐさま結界石の宝石に手をかざした。すると、結界石の宝石は明るく輝きだした。俺の手の先からは何かが抜けていくような感覚があった。
5秒ほどすると、輝いていた宝石の光も落ち着いて、ほんのり明るくなっている程度になった。
再び結界石を鑑定すると、結界石(発動中)と出たので、この近辺は安全になったはずだった。
「ふう……。転移して間も無くこんなに焦らなきゃいけないなんて思わなかったぞ」
俺はモンスターの脅威から身を守ることができたと感じ、一安心して胸を撫で下ろした。
ついでなので結界石が入っていた木箱を少し漁ることにした。中には、見たこともない言語で書かれた袋がたくさん入っていた。
言葉は読めないので、俺はこの袋の中身についても鑑定することにした。
◯コブルコの種◯
コブルコの種。耕した土に植えると10日ほどで収穫ができる。
◯ポムテルの種芋◯
ポムテルの種芋。耕した土に植えると20日ほどで収穫ができる。
◯シュワンの種◯
シュワンの種。耕した土に植えると20日ほどで収穫できる。
木箱に入っていた袋の中には、この3種類の種が入っていた。
袋は合わせて10袋以上入っているようだった。
「しかし、全く聞いたことがない植物の種だな……まあ異世界だし当然と言えば当然か」
唯一わかるのがポムテルという植物だ。
種芋と書かれているので、芋系の植物であることは間違いない。
他の植物はどんなものが育つのか見当もつかなかった。
何を植えるにせよ、まずは畑を耕さなければならない。
俺はとりあえず『資材ショップ』のカート内に入れた農具を購入することにした。
「えーと……購入はここをタップすれば良いのか?」
俺はタブレットで表示されている、購入という文字をタップした。
すると、突然目の前に木箱が出現して、大きな音を立てて床に落ちた。
「……毎回こんな感じだと家の床抜けちゃうぞ?」
今回は
せっかくの新居が……などと落ち込んでいても仕方ないので、俺はさっそく木箱を開けることにした。
「おお!結構立派じゃないか!」
木箱の中に入っていた農具はパッと見た限り、そこそこ質は高いように見えた。
ボロボロですぐ壊れてしまうと言った心配は無用のようだ。
新しい農具を手に入れた俺は、
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