終わり、あるいは始まり シアとレン 11

楸 茉夕

終わり、あるいは始まり シアとレン 11

 ―――今度会えるのはいつだろうか。


 彼、あるいは彼女は、書き留める。ればそれまでの記憶はなくなるので、あまり意味はない。なのでこれは、備忘録と言うよりは日記や手紙に近い。誰に宛てるでもなく書き続ける。これがいつか、出会った証になると信じている。

 いつでも探している。そして待ち続けている。何千、何万、何億という繰り返しの中、たった一つと巡り会うその時を。

 世界は無数にあり、存在は無限にある。そこで出会うのは奇跡に近い。その上で、互いに意思の疎通が出来る状態に生まれるのは更にまれ。だから、留めておく。その、奇跡のような機会を。可能性はゼロではない、過去にたしかにあったのだと。

 あるときは友人、あるときは師弟、恋人、同僚、兄弟、親子、敵、主従―――名前のつけられない関係もあった。「日記」を読み返し、懐かしさに微笑む。ここには時間の概念がないのに、懐かしいと感じることが不思議だった。


 ―――次こそは。


 そろそろなければならない。もう何度目かはわからない。どうすれば繰り返しから抜けられるのかも。毎回違うのだから、厳密には繰り返しではないのかもしれない。同じにはならない、けれどたしかに繰り返す。螺旋階段のような。上っているのか下りているのかは定かではないけれど。

 「日記」を胸に抱き、立ち上がる。もしかして、何かの手違いで持ち込めるのではないかと、毎回抱いてるのだが、持ち込めたためしがない。

 そして、祈る。どうか会わせて欲しい。何十、何百、何千、何万、何億、繰り返した祈り。願い。それ以外は望まない。だからこの螺旋に囚われているのだとしても。

「さて、行こうか」



 了

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