第5話 僕は華麗な家令の家系
『さて……倒さないと、大変……だね。まぁ、お嬢様の命令だし……適当に、ね?』
『……』
黒い騎士が剣を片手に紫の騎士に迫るも、紫の騎士はひたすら剣を振って攻撃のほぼ全部を完璧に相殺していた。
『フフッ……びっくりした?悪いけど、届かないよ……キミの攻撃』
『……ッ!』
紫の騎士はその後も伸び縮みする不思議な剣による独特な軌道による攻撃によって黒い騎士をジワジワ追い詰めるうちに分の悪さを感じたのか、黒い騎士は背部から黒い靄を発生させるとその中へ消えていった。
「あ、起きた」
「いつもながら思うけど……ここ、何処?」
「何処だと思う?当ててみてよ」
(いきなり目を覚ましたらベッドの上でした……なーんてオチはこれでぶっちゃけ二度目……そして声の高さからして今話しかけてきた子は女の子……つまり俺はっ!)
「キミの……部屋?」
「おっ、やるね……ここは
そう言うと紫の髪の少年……らしい人物はポットの中に入れていた紅茶をカップに注いでから紅輝に手渡した。
「絶対安静って……俺の怪我、今度はそんな酷かったのか……?」
「あの黒いのに襲われたでしょ?キミ、あの戦闘で数か所に黒あざが出来てる……それに口の中も切ってるし、切り口は浅いけど胸部にも傷が付いてる」
(あれ……もしかしなくても、俺ってかなり重症負っちゃってる感じか?)
「あ……そうだ。名前、教えてよ」
「俺?俺は……一ノ瀬紅輝、空船中の1年生だよ。助けてくれた君は……?」
「
紫音と名乗った少年はそう言うと空になった自分のカップに紅茶を入れ直して一口飲んだ。
「ヒ、ヒーローやってるって……じゃあさっき俺を助けてくれたあの紫の騎士は」
「ボクだよ……まぁ、ボクに指示を出したのはお嬢様だけどね」
「さっきも言ってたけど、お嬢様って誰よ……」
「そこから説明が必要か……二葉蒼依って女の子は知ってる?あの子がボクの言うお嬢様だよ」
「マッ……ジかよ……」
紅輝は自分と同じ中学に通い、同じ学級委員である蒼依が実はそんな身分の人間だった事に驚き、カップをベッドの上に落としてしまった。
「ふふっ、驚いてるね……まぁ、無理もないか。蒼依はそういうのを嫌ってるから……後、本人の前では口にしない事と……無駄な気遣いはしないようにね」
「お、おう……」
(改めて初めて会話した時の自分ぶん殴りてぇ……そんな身分の人になんて態度取ってたんだ俺はぁ!)
「さて……さっき絶対安静って言ったけど、あれ……嘘だから」
「へっ……じゃあ何で言ったのよ」
「キミ、多分こうでも言わなきゃあの黒い騎士を追っかけ回すかなって思ったんだ。その真っ直ぐな目でよりそう思ったからね」
「俺はそこまで無謀な真似はしない……とは言い切れないかもな。アイツが父さんの仇とかなら話は変わってくるかも」
「そうだよね……ちなみに、もう学校は終わってると思うから、戻るなら家の方がいいよ」
「そっか……じゃあ、体も程よく休まったし、そうさせてもらうよ。ありがとな、紫音」
「ボクはただお嬢様の命令をそのまま実行しただけだから……」
紅輝は落としたカップを再度ベッドに備え付けてあった台の上に戻すとそこから起き上がり、ハンガーにかけてあった制服の上着と鞄を片手に家路につくのだった。
『紅輝、繰り返し聞くが……怪我の具合はどうだ?』
「まだ至る所に痛みを感じるよ……正直、休めるものなら明日1日寝込みたい……」
自宅につくなり自室のベッドで横になった紅輝は安心感から込み上げてきた痛みに悶えながらアキレスからの質問に答えた。
『先程の戦闘……実は記録していて、少しばかり解析を試みたんだが、見れるか?』
「頼む……体は動かなくても、それくらいはしたい。それに、次アイツと出くわしたとしても対処が出来るかもしれないからな」
『分かった……だが、夕食が完成するまで後30分程しかないぞ?私がまとめたデータを見て試行錯誤するには足りない気がするが……』
「そんだけありゃ多少の策は練れるはずさ……俺とお前で力を合わせりゃどんな敵も倒せるって」
『……そうだな。では、早速見せるぞ』
アキレスはリアライザーのビジョンアプリを起動すると、彼がまとめたという黒い騎士についての情報を一斉に開示した。
「X-00vb……多分これはアイツのブレインとしてのコードネームだな」
『恐らくはな……固有名に関しては解析は出来なかったが、このコードネームを導き出した時には自分でしておいて軽く恐怖を感じてしまった』
「確かお前のコードもX-05a、同じXナンバーだもんな……」
『まさか私の同胞と事を構える日が来るとは思わなかった……』
(そりゃそうだよな……ブレインだって1つの命、同じコードを持ってる以上は家族同然だろうから……)
「あのさ、アキレス……この末尾のvbって何の略だ?お前の末尾のaはachillesのaだろ?」
『virus&bugsの略だ……』
「ウイルスとバグ……まさかとは思うけど、もしかしてアイツは第三者の介入で意図的に敵対させられてる可能性があるかもしれないぜ?」
『それは盲点だった……ブレインに手を加えられるのは己だけではない……だとすれば……裏で手を引く者がそうさせたのなら』
「何が何でも止める……だろ?俺がアキレスと同じ立場なら迷わずそうする。操られてるとはいえ、友達がその手を罪と血で汚す所なんて見たくないし、そうさせたくないからな」
『紅輝……』
「手伝うよ……アイツの調査。その過程でぶつかる事があるのなら、今日みたいに真正面から思いっきりぶつかってやる!」
『だが、相手はお前の思うような事をしてくるとは限らないぞ……』
「そん時はそん時で考えればいいんだよ!父さんだってそうしてたんだ……だから俺もそうする!」
紅輝はそう言いながら天井を見て握り拳を作ると改めて自分の中で決意を固めるのだった。
『……グッ、ウウッ……!?』
その頃、紅輝を襲撃した黒い騎士は胸の辺りを抑えて苦しみだすと、その姿を1人の人間へ変えた。
「やれやれ……まだこの程度のバグだけではまだまだコイツを抑え込むのは不可能か……」
少年は一言残すと再び黒い騎士の姿へ戻ると、暗い闇世の中を何処かへと歩いていった。
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