或る童話の結末。
『――以上がキミの欲しがってる情報。不足はないかな?』
『ええ、助かったわ。流石と言うほかありませんわね』
『それは良かった。今後とも
『まあ
『ヤだなぁ
『まぁ気持ちはわからなくもないけれど』
『はは、
『…………。特段、別に。禁止や検閲されてるわけじゃあないわ? だからあなただって結局は情報を集められた。
――きっと、同じことを想ったのだ。
『薄めたくない。誰もが同じことを想ったから、ランスロットという名前はFPライダーの誰の口からも零れなかった。そういうことではないかしら』
『ふぅん? そういうもんかー。なんかガムみたいだね』
『
『ごめんて。なるほど、彼のライドはキミたちの
『ハンプとダンプのこと? まぁひょうきんなところはあるわね』
『違う違う、ランスロットのコト! 片方は空にしか興味が無くて、もう片方は空には興味が無い。
『……
『じゃあ聞いてみてくれよ。関係してない方はそれこそ誰の話題にも上がらないんだ。かつての空の王者、ランスロットは双子だった。でも『双子のFPライダー』って調べたらまずキミんとこの双子が
『ハンプもダンプも鼻が高いと喜ぶわね? チームを組んでる
『うへ。なんだい急に!』
『いま言ったようなプライベートな質問を、本人の前で出来るのかって話よ』
『
『まったく。あ、お誘いは本気よ。生身のあなたの顔が恋しいもの』
『うへ。……で、結局のところどうなのさ。キミらの夢がどう砕けたのか、ボクはイマイチ確証が持ててないんだ』
『……よくある話よ。どう
少女は瞳と通信を閉じる。
よくある話だ。
あの日、少年少女の夢が砕ける音を聞いた。休日の、真夏の、穏やかな海さえ見下ろせたというのに
――そうして。だから。終わりの日は同時に、〈魔女〉の生まれた日でもある。
/
……追想を打ち切って、アリスは閉じていた瞳を開く。おそらくは一秒にも満たなかったであろうその間にも、先を行く真っ赤なワンピースの後ろ姿はこちらを振り向かない。追いつけない? カカシと話している時間が命取りに? ――そんなワケないじゃない!
スカイラウドシリーズ・モデル『クイーン・オブ・ハート』の
光の粉が波紋上に広がる様は、一度限りの花火のよう。ぐるん、ぐるんと回りながら描かれる放物線。それは三回転目で直進へと変貌した。
「……なあんだ。思ってたより早く来たじゃない、アリス」
「そう?
いいえ。本当は急ぎましたとも。
「ドロシー。まさかとは思うけれど
「あたしのこと買ってくれてるのは嬉しいけど、ちゃんと走ってるよ。アリスを甘く見て泣きを見るだなんてゴメンだし。まだ上げられるのはほんと。でも」
ちょっとだけ。寂しくなった、と。
「――そんな感傷めいた目で見られるのは我慢ならないわ? 安心なさいなドロシー。今日も
「なに勝手に
それはその通り。二人の少女の実力は、交わされる軽口のように激しい差などない。
二つのボードは、
――ゴーグル越し。だからわずかに
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