〈空を奪った女〉
爆風を掴んで、まず一人の少女が空へと駆け上がった。下降気流を
ドロシー。【
その由来の一つ。FPボードの裏に
そのタイミングで、ジェット機のような轟音と足並みを揃えた二つの閃光が少女の両サイドから猛追してきた。
「
「死に急ぐ鳥みたいな加速じゃんか!」
伴う
「「久しぶりだってのになんてご挨拶! 少しは付き合ってけよ、ドロシー!」」
空中のステレオサウンド。〈ジェミニ〉ハンプ・ティーとダンプ・ティーはそれまでの
少女の
「…………何の、用よ」
獲物に飛び掛かる寸前の肉食獣を連想させる。持ち前の美しさも
「地上じゃ誰が聞き耳立ててるかわかんないしさ!」
「だからボクららしく邪魔の入らない空で話そうって、いやコレはアリスの提案なんだけど!」
「そのアリスは何してンのよ」
「あら、お呼び?」
――そして。その発端である〈
「呼んじゃいないわよ。で、何の用? ホントに嫌がらせ?」
「そんなに噛みつかないでくださる? ハンプとダンプはもう言ったかしら。お話を、しましょう」
同高度に並び立つ、ドロシーと対照的に青を基調とした
「
「別に、あたしがどこで何しようがアリスの許可なんていらないでしょ」
「その首に、びっくりするくらい高額の値札をぶら下げても?」
「そうよ」
「たくさんの人に恨まれてるわよ、ドロシー」
「知ってるわよ」
「強盗の方じゃなくてよ。ドロシー、貴女理解していて? 数多くのFPライダーから夢を奪ったことを」
大空の中で、アリスは
「――『
「――――」
『――ああっとドロシー! まさかの
フラッシュバックする過去のワンシーン。悲嘆を叫ぶ実況。遠ざかる、彼女たちにとっての空――
「その名前を呼んだわね、アリス」
【大強盗】の活動の出鼻を
お気に入りになったであろう喫茶店を爆破したことも、まあ
だけどソレだけは看過できない。
本人を含め、この空の下で、彼女の前で『ランスロット』の名前を口にすることだけが、この少女にとっての特大の地雷だった。
その名はドロシー。〈
スカイラウドシリーズに恨みはないけど。
「モデル『ジャバウォック』に『クイーン・オブ・ハート』……全部砕いて、空に
――邪魔をする
「……くふっ」
アリスは胸の前で祈るように手を組んで――うっそりと微笑んだ。
「やっと。やあっと、
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