ハッピーノット・アニバーサリー
標的を目視で確認できる
「……
それは日本風に言うのであれば棚から牡丹餅的な幸運で。
「あたしここのチェリーパイ好きかもー」
「これで一杯飲めたら最高なンだけどなァ」
「乾杯は仕事の後だ、だ」
「じゃあ打ち上げもここにしようぜ」
などと残りの三人にも
「……最終確認」
ちらり、と窓の外――ここロンドンで一等有名な彼らの標的に目をやって、カカシはテーブルへと視線を戻す。
「
「異存なーし」
「旦那、火薬はケチるなよ?」
「誰に言ってる、だ」
からんころん、と入店を告げるカウベルが鳴っても、彼らの調子は変わらない。店側としても、残りの客としてもいちいち来訪者に注目することなどない。
「んじゃ会計してくるわ」
レオが席を立つ。新たな客が席へと進む。
「――あら、もう行ってしまうの? 残念」
「ぁン?」
その一団はレオとすれ違って、残りの三人が座るテーブルの隣の席に陣取った。
「悪だくみなんでしょう。お話が気になるわ?」
その、悪戯めいた笑みを浮かべる赤毛の少女の姿を認めて、ドロシーは顔をしかめた。
「なんであんたがこんなとこにいるのよ」
「相変わらずご挨拶ね、ドロシー。今来たところなのに。……ご機嫌よう、【大強盗】さん。
「――アリス。有名人じゃないか、ドロシーじゃないけどどうしてここに?」
「ふふ。貴方に名前を覚えてもらえているだなんて光栄よ、カカシ」
「現役トップクラスのプロライダーにそう言ってもらえるだなんて光栄だね。それで、偶然以外の理由はあるのかな」
「もちろん。あぁ、彼と同じものを。そう、全員分」
注文をスムーズに済ませて少女……アリスはあらためて顔を向けた。
「今や貴方たちの話題で世の中は持ちきりよ、【
「
「なに。それであんたもあたしたちの賞金目当てに
アリスは
「……びっくりしたのよ、
「あたしたちがどこで何しててもアリスには関係ないでしょ」
「なんでドロシーはアリスにそんな
「なんでカカシがソレ知らないのっ!? あたしとアリスはっ」
「
「…………まあ、うん。ごめん」
少年は何か、少女ふたりの共通の地雷を踏んだことを察して紅茶のカップを口につけた。
「はぁ……まぁ良いわ。許してあげます。ドロシーが
アリスの座るテーブルにカカシと同じもの……五人分の紅茶が置かれる。
見れば、アリスをはじめずいぶんと濃い
まず、体格はスズと同じくらいの、スズと対照的に白いスーツの
それからレオがさっきから無言で
まるで鏡合わせのように同じ姿をしている双子の少年。
「ハロウィンにはまだ遠いと思うけど」
「ふふ」
アリスが立ち上がる。
「――〈
「なに。喧嘩売ってんのアリス。買うわよ」
アリスは一人、出口へと向かう。わずかに開いているドアの前に立ち……嬉しさと、確かな決意をもって、それを口にした。
「ドロシー、竜巻は呼んであげても良くってよ」
ドアをしっかりと閉める。
「けれど、お家には帰さないわ」
ドアガラスの日除けを下ろす。
「強盗ごっこはここでおしまい」
そして、鍵を閉めて振り返る。
「……
宣戦布告。
小さくかちこちと鳴っていた秒針の音が途絶えてから、きっかり一秒後。
その場の全員を巻き込んで、喫茶店が爆発した。
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