第2話/ヘヴィロック・ミリオンダラーズ!

八枚看板のプロローグ


 ――賞金稼ぎ制度の導入以降、賞金首となった犯罪者たる彼らの首には値が付いている。


 そしてその最高峰。『千両役者ミリオンダラー』という、八つのが用意されている。八席に序列はなく、その椅子は時代の変遷へんせんとともに座るあるじを変えていた。


 現在の席次せきじは以下のとおり。



 第一席。【吸血鬼きゅうけつき】(現在空席)。


 第二席。【大強盗クローバー】〈OZオズ〉。


 第三席。【偉大なる悪ザ・ゴッドファーザー】〈アルフォートファミリー〉。


 第四席。【人魚姫にんぎょひめ】〈DIVER=DIVAダイバーディーヴァー〉。


 第五席。【笛吹き男ハーメルン】〈ルナ〉。


 第六席。【役者ジ・アクター】〈アクター〉。


 第七席。【賞金稼しょうきんかせぎ】〈ブラック・セブンスター〉。


 第八席。(現在空席)。



 対して、現代の。【専業賞金稼ぎカラーズ】の最高位は五つのかんしている。こちらにも序列は存在しない。


 現在の五色は以下の通り。



 赤。【つばさ】。『最高』の賞金稼ぎ。〈白雪姫スノウクリムゾン〉。


 青。【海賊かいぞく】。『最悪』の賞金稼ぎ。〈カーミン・フック海賊団〉。


 緑。(現在空位)。


 白。【最強】。『最強』の賞金稼ぎ。〈チャイルド=リカー〉。


 黒。(現在空位)。



 どちらも欠けているが、それはひとえにそのハードルの高さが原因にある。


 犯罪の規模/賞金稼ぎとしての活躍に、何よりの。社会の表と裏の舞台に君臨する代表としての『格』を、成績スコアの他に持ち合わせなければ、その椅子も色も背負うことができない。



 そういう意味では現在の『千両役者ミリオンダラー』の第二席はで舞台に現れたと言える。


 賞金稼ぎ、賞金首ともに、基本的には空いている場所に当てはめられる。


 二年前。当時の空席は唯一の付いた【吸血鬼】の第一席と、第八席。


 八席中六席が埋まっている、そんな動乱の時代――突如として第二席【鉄と火薬の魔女】の報が世界を駆け巡った。


 賞金稼ぎの空位である『赤』を埋めるであろうごく近い未来に、世界中がを上げるために息を吸い――停止する。


『千両役者』をち果たした四人組は、こともあろうかのだ。


 狙った獲物は逃がさない。でさえも。――そうして〈OZ〉は、轟く絶叫なりものを浴びながら【大強盗】として君臨した。



 それから二年の間に、五つの色は『緑』をき、八つの椅子は変わらないまま、この日を迎える。


〈OZ〉が二年前に引き起こした一大事と同等級の衝撃が世界中に広まることになる、激動の一日。


 それは、わりと静かな幕開けスタートだった。


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