少年少女のガイドライン。
ガラス
真剣な顔でジェラートのフレーバーたちと
「……いっそ全部にしたら?」
「お昼まだじゃん。それにそんなに食べたらお
「このままだとランチになるまでここに釘付けになってそうだけど」
「そっちは決まったの?」
「もうとっくに」
「じゃあ先頼んでていいよ」
「待ってる間に溶けちゃうだろ」
「もー! ……うー。うん、よし、決めたっ!」
「お先にどうぞ」
「……ぴ、ピスタチオと、ストロベリー」
よっぽど
対して少年の方は、実にスマートだった。
「ハニーミルクとヘーゼルナッツで」
その内容に、少女の眉根はいっそう不機嫌そうに寄ったのだった。
/
「ねえ」
「なに」
昼下がりのロンドン。それぞれジェラートを片手に、一組の少年少女がゆっくりと歩いている。
お目当てのフレーバーの乗ったスプーンを口に入れ、やはり期待通りの味だったのか満足げに
「あたしはさ、ピスタチオとストロベリーと、ハニーミルクとヘーゼルナッツで悩んでたんだ」
「知ってる」
「カカシは『もうとっく』にって言ったじゃんか」
「そうだね。あ、美味しい。ドロシーも食べる?」
「食べるけど。あたしはカカシとシェアしたかったんだよ」
「今してるだろ」
ととん、とドロシーが一歩先に出て、くるりと回り込む。ぁ、と小さく開けた口で、その不満をぱくりと噛み付く。うん、やっぱり美味しい。そのうえで。
「わかってないなぁー。カーカーシーはっ」
そんなダメ出しをした。
「は? なにそれ」
今度はカカシ少年の眉が不機嫌に
「あたしは、カカシが好きなのを食べたかったんだよ。カカシと一緒に」
一番を譲ったでしょ、と抗議するように見上げる瞳から、うざったそうに視線をきって――あるいは逃げるように――、少年はスプーンで少女の持ったピスタチオを
「……わかってないのはドロシーの方だろ」
「は? なにそれ」
会話が
こうして並ぶとよくわかるふたりの身長差。男女らしく、少年の方が10cmほど高い。
それでも歩幅は少年の方が小さかった。
「あ、そうだ。せっかくだから服も見たいなー」
「いいよ。時間あるし」
「今度はカカシが選んでよね」
「それこそドロシーが選ぶべきでしょ。着るの僕じゃないんだから」
「はぁーーーー。わかってないなぁー。カーカーシーはーっ」
どうしてか、先程よりも上機嫌に。歌うようなソプラノが、同じ音階で不満を口にする。
「ね、ね。もう一口ちょうだい?」
「いくらでもどうぞ」
その為に選んだのだし、という言葉は飲み込んで。ふと歩く先の景色を遠くまで広げた矢先。
――交差点を直角ドリフトし、対向車線を猛スピードで突っ走っていく黒塗りの高級車とすれ違った。
「なにあれ」
「さぁ?」
その程度の危険運転は見慣れているのか、さして驚かずに走り去った車を見て、それから問題の十字路へ。暴走した車両のせいで一時的な渋滞が発生してる。その向こう。
黒い煙を吐き出す、数分前までは
「……わぁ」
ついでに言うと、二人がこれから向かう先の店舗であった。
更に言うなら。
「レオがあそこで財布買うって言ってたよね」
「言ってたねえ」
《Pi》
その時、タイミング良く少年の携帯端末へアナウンスが入った。
「うん?」
《マスター。
「繋げて」
『
「なんか爆発したビルの一個先の交差点。ところで無事?」
『無事じゃねェよサングラス吹っ飛んだわ』
「無事じゃんか。今どこ?」
『貸金庫で着替えてる。姫は?』
「隣にいるよ。で、そしたらランチ?」
『残念ながら昼飯はキャンセルだ。狩りの時間だぜ、坊』
「っていうか今日オフにするって言ったのレオじゃないか。『気が乗らなくなった』とか言ってたよね」
「気が乗っちまったンだよ」
「えー……」
――なんとも物騒な時代である。今回
そして、だからこそ『賞金稼ぎ』なんていう職業が正式に存在しているのだ。
気が乗らないなあ、とカカシは溜息を吐き。
「あたしはいいよ。面白そうだしっ」
先刻のようにカカシの前に出て、ドロシーが笑う。背景は火の手と黒煙、それから野次馬とパトカーのランプで随分と物騒だ。
『これで二票だな、坊』
「……スズはなんて?」
民主主義に
『坊に任せるってよ。ショウタイムだぜ、リーダー。気合入れてこうぜ?』
お前が決めろ、と。
「…………はぁー。レイチェル、【情報屋】に連絡を」
《Pi》
「で? 手がかりはあるの? さっき黒いセダンとすれ違ったけど」
『そいつでアタリだ。聞いたら驚くぜ? しっかり名刺を残してった。なんと【大強盗】だってよ!』
「それは……驚いたな。うん、いいや。始めよっか」
『ははッ! そう来なくっちゃなあ!』
「あっでもちょっと待って」
『ぁン?』
「まだ食べきってないんだよね、アイス。準備できたらこっちから連絡するよ」
昼食は遅れて摂ることになるだろうし。
「ドロシー、もう一口ちょうだい」
「あは。いいよ。交換しよっか!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます