今も苦手な

路傍塵

第1話 日記について

 日記といえば、毎日付けるべきものだろう。

 または多少空いても二日三日おきにつけていき、面倒くさいなどと思うことは少ないのではないだろうか。

 私は日記が苦手である。昔からそうだ。宿題とか、しなければいけないことは意識してやれるのだが、制約のない自分だけの能動的な日記には参ってしまう。

 勝手が分からない、または加減が分からずに難儀していると表現した方が適当やもしれん。

 書こうと思えば書ける。だが、いざ筆を持てば何を書いたら良いのかと硬直し、うんうんうなり始める。右に左に首を捻り、横になってネタを考えれば億劫になって日記帳を閉じるのだ。

 ところが、興が乗れば、そんなものぐさはどこへやら、B5大の日記帳を10頁でも20頁でも書き続け、気付けば何時間も日記を書き続けている。やめ時が分からず、インクが切れた、トイレに行きたくなったなどのきっかけでそのままやめることが多々あった。

 現在は寝る前に日記を最低一行は書くことを習慣にしているのだが、日記に慣れてきたは良いが、今度はどんどん日記を書きたくなってしまった。

 新聞の記事で良いなと思った言い回しを使いたくなったり、小説や漫画で気に入った表現は日記でなら丸パクリしても角が立たないので、私の日記を開けばそこいら中既視感だらけの文章が広がっていることだろう。

 ただし、相当の悪筆なので、内容如何よりも視覚的な暴力でまず苦しむことだろう。社会人として直すべき部分だと思っている中で、決定的な出来事があった。私の走り書きを会社に落として気付かずにいると、拾った同僚が私の他に男性が三人いたら、近くにいた私の脇をすり抜け、三人に紙を見せて持ち主か尋ねた。

 そっと後ろから持ち主だと名乗り出た時の四人の目の丸いこと。益荒男のような勇ましい字を直さねばと誓い、毎日顔真卿も真っ青になるほどの美しい字を目指して日記で練習している。成果?それは見て決めて欲しいところ。

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今も苦手な 路傍塵 @ahirufrost

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