27話 人攫いの思惑
日が落ちて夜の山の中、3人は一つの火を囲んでいた。
追手が来ていない事を確認したあとオルトとジョーカーは情報を整理していた。
「あの金色の剣を持った魔族、確かアヤトとか言っていたな」
「急に現れた奴か。そいつがどうした?」
ジョーカーはオルトに質問した。
「奴は魔導書による勇者で間違いない。見た目は魔族だが恐らく、そうだろう。この女が魔力量が全然ない理由も納得できる。」
「しかし勇者召喚の魔導書を魔族一人で召喚か、この女はドラゴン並みの魔力量の所持者だったんだな。」
両手と口元を拘束されているメアは、ただ火を見つめるのみで何も反応はしなかった。
「勇者3人を殺したと言われる噂も、あながち間違いじゃなさそうだ。」
「それよりも、明日の朝までに村に飛べそうか?」
「ギリギリ行けると思う。ただ、ここまで追ってこないって事は諦めたんじゃないのか?」
「そう思いたいが、魔王の娘だ。普通の魔族なら問題ないが、恐らく刻印を持つ幹部が位置を把握しているだろう。」
「それだと、転移してもすぐに追いつかれるな。今頃先回りする方法を考えているのかもしれないな。」
「ああ、だからこそ聖霊都市に行く前に村で一度待ち伏せをする。」
オルトはジョーカーに作戦を話していた。メアは作戦を聞いていたが、魔法による拘束具のせいで連絡を取る事は出来ないでいた。
メアは自分が何もできずに攫われて、ただ無力な事に怒りを感じていた。
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