25話 つながりの刻印

ジョーカーとオルトが去り、大岩の上でアヤトは悔しさで下唇を噛みしめていた。

そんなアヤトを励ますように、メイド姿のメフィーは話しかける。


「アヤト様。冷静に……というには無理かもしれませんが、まだ間に合います。」


「どういうことだ?」


「転移魔法は移動距離に限界があります。それにジョーカーという男、相当無理をしていたかと思います。私との戦闘で短剣のみを使用し、腰のリボルバーを一度たりとも使う気配がありませんでした。恐らく転移魔法1回の為に防御と回避のみに魔力を使っていたのでしょう。」


「確かに、メアとの繋がりを感じる刻印がそこまで距離を感じさせない。地形が分からないが、あの山の中にいるのか。」


俺は山の方角を指さした。


「そのようですね。一度城に戻りましょう。」


「そうだな。そういえば名前を聞いてなかった教えてくれ。俺はアヤトだ。」


「それは失礼しました。私はメフィストフェレス。メフィーとお呼びください。」


「可愛いらしい名前だな、よろしくなメフィー。」


メフィーと俺は握手を交わし、一旦城に向かうべく歩き出す。

俺は30日の修行から帰って来たばかりだ。とにかく情報を整理しなければいけない。

急いては事を仕損じるだな。


(ねえアヤト、それ何の呪文?初めて聞いたよ)


(こら、スーテッド!俺の思考を読むな)


(全く、変な事考えるのはずっと直らなかったね……)


俺は地面に突き刺さった金色の剣を、遠くから超能力の様な力で引き抜くように引き寄せる。

そして、魔力による緊張をほぐすようにし、金色の剣は粒子状となり体の中に同化し消える。

その一連の動作を驚いたようにメフィーは見ていたので軽く説明した。


「あぁ、さっきの金色の剣か。名前がスーテッドと言って俺の体の一部になってるらしい。特殊な魔装か剣ってことなのかな?……」


「すいません。少し驚いてしまいました。城に置いてあった金色の剣を使いこなせる魔族がいるなんて思わなかったので……」


「この剣っていわくつきなのか……」


「いえ、ただ持ち主を選ぶらしいので、私も詳しくは知りませんが。選ばれなければ死ぬらしいと聞いています。」


「そうなのか! じゃあマルファスは俺で運試しをしやがったのか!」


「ふふっ、どうでしょう。ただの噂話なので……」


(噂ならよかったけどね)


スーテッドが冗談なのか本当なのか分からない事を呟いた。

俺は背筋が凍る思いで、何も聞かなかったようにスルーした。

城に近づくと壁に穴が開いている。どうやらこちらでも戦闘があったらしい。

城壁の周りで瓦礫を集めていたマルファスは、俺とメフィーに気づき声を掛けてきた。


「アヤト様、どうやら修行は成功したようですね。」


「まあ少し遅かったが……」


「それは私どもの力不足のせいです。とにかく今は情報を整理しましょう。こちらへ」


マルファスは俺とメフィーを城の一室に案内した。

そこで3人は今後の動きについて話しだした。

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