18話 彫刻の代償7
1時間が経過した。城内の庭に俺とサーシャ、ミルホンに見届け人として王直属部隊の隊長がいた。それらを取り巻くように、どこから聞きつけたか分からない野次馬がいる。
俺は少しサイズの合わない防具と、軍から借りた剣を装備していた。
魔族は魔装に魔力で剣を創造できる。こんな物飾りでしかないが今の俺は普通のサーシャの護衛だ、形ぐらいは多少はしっかりした方がいいだろう。
護衛の癖に丸腰で日々過ごしていて3ヵ月立つ。あまりの無防備さに俺は姫様に気に入られた男娼だと上層の人間に思われているらしい。
俺もサーシャも全く気にしないが、野次馬が多い理由が何となく理解できた。
「それでは両者前へ、本日の決闘理由はミルホン殿とジャレッド殿のサーシャ姫を賭けた男の戦い。見届け人は私ドーマスが引き受けさせていただきます。」
「傭兵の癖に良く逃げなかったな。一瞬で潰してサーシャ姫が僕の物だという事を分からせてやる!」
「もう何でもいい、かかってこい」
そんな感じで俺とミルホンの決闘が始まった。
ミルホンの戦闘スタイルは魔法のみの攻撃だった。もちろん魔族が1対1の戦闘で人間に後れを取る事はない。
しかし、ミルホンの魔法は2層魔法だ。魔法陣が2つ浮かんでいるのが特徴で、難易度が高く破壊力もかなりある魔法だ。この装備で魔法を受ければ死ぬだろう。
俺は、魔族であることを隠しつつの戦闘は傭兵をしていた時に慣れてはいる。
足で地面を蹴り横に素早く飛ぶ、姿勢を低くしたまま剣を下から構えながら近づく。
この時足の裏から魔力をはじくようにして一気に加速する。
「さっきからちょこまかと! もう全力で潰す!」
「最初っから全力でこい」
ミルホンの台風のような魔法を、俺は冷静に避け斬撃を一太刀入れる。
殺しても良かったが、杖を破壊し首元に剣を突きつけた。
「終わりだ。」
「なぜ、僕は負けたんだ。」
崩れ落ちるミルホンは、負けを認めた。
ドーマス隊長は勝者ジャレッドといい、この決闘を締めくくった。
ミルホンは地面を見つめ折れた杖を握りしめたまま動かない。
敗者に話しかける言葉はない。俺は黙って立ち去った。その後ろを追うようにサーシャ姫も続いた。
その後のミルホンは地位と名誉を失い中層で生活をしているらしい。
俺は無駄に手に入れた貴族の地位を使う訳でもなく、そのままサーシャの護衛の仕事を続け気づけば半年が過ぎる。
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