13話 彫刻の代償2



聖霊都市の下層は治安が悪い。その理由は治安維持をする軍が大戦で疲弊し下層まで人員を割くことができないでいるからだ。


食糧問題も厳しく、上層の貴族たちは自分たちの生活もそろそろ圧迫され始め早く終戦させるために躍起になっている。


その結果人間たちは効率よく魔力を魔法へ変換する魔法陣の開発をし、魔法を使えずに魔力だけ持っている人間も魔力結晶の加工で剣などに魔力を込めることが出来るようになった。


教会側も秘密裏にアーティファクトと言われる遺物の捜索と研究をしてるらしい。


「刺された傷は無いが、打撲によるアザが酷いな」


気絶したサーシャ姫を担ぎ自宅に着いた俺は、姫の洋服を全て脱がし一つしかないベットに寝かせた。

返り血で汚れた体をタオルで拭き取り外傷は無いか確認する。

腕や足にナイフを刺して、簡単に逃げれないようにするタイプの人攫いもいるが運が良かったらしい。

下層で人攫いをする奴の目的は、奴隷として売り飛ばすことが多い。傷物だと値が落ちると踏んだのだろう。

運がいい奴だなと思いつつ、拭き取った血で汚れたタオルと衣服を浄化魔法石と一緒に洗濯装置に入れた。

日が落ちて、ジャレッドはシャワーを浴び寝る事にした。


「考えなきゃいけない事は山ほどあるが、最悪の場合……」


ジャレッドはこの状況の危うさを考えていた。姫に魔族だという事がバレた。


「このままやっても……ダメだ。」


サーシャ姫を殺しても、奴は腐っても第5王妃の娘。朝になる頃には下層まで王家直属の軍が探しに来るだろう。

それに、このまま魔界に帰ったとしても目的を達成できないし、得られたものが少な過ぎる。

熱いシャワーと共に返り血が奇麗に流れていく。しかし思考はクリアにはならなかった。

タオルで体を拭き部屋に戻る。視界に入るのは、ベットで気絶したままのお姫様だった。


「おい、起きてくれ……ダメか」


起こそうとするも起きる気配はない。


「あぁ、イラつく。知らんここは俺の家だ寝る」


ジャレッドはいつも通り全裸のままベットで眠る。隣には全裸で気絶した美少女の姫がいる。

少し狭いが仕方がない。本当は床に転がしておいてもいいが、命を救ってやって1泊も泊めてやるんだ、起きたら脅すのは一時的で意味が無いし、先に恩を売っておくことにした。

月明かりが薄っすらと差し込む中、狭いベットで二人は肌を密着させ深い眠りに落ちた。


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