4話 俺の冒険は?
やわらかな朝日が窓から差し込む。
俺はベットの上で掛け布団を深く被り、2度寝をしていた。
すると、誰かが部屋の扉を開けて入ってくる気配を感じた。
足音はベットの前で止まり、可愛らしい声で話しかけてきた。
「ねぇ、起きなさいよアヤト……ねえってば……」
「…………」
俺はまだ寝ていたいため、寝たふりをする。
すると布団の上から小さな手でパンパンと叩かれた。
少女は俺を無理やり起こしたいらしいが、今は睡眠を優先したい。
俺は適当に追い払おうとした。
「やめてくれ、まだ眠い……」
俺は眠気には勝てない。
布団をはがそうとする少女に抵抗しながら、睡眠の重要性を主張した。
「そう、分かったわ」
どうやら分かってくれたらしい。そのまま足音が遠のいていく。
ん? 足音が……止まった?
「おーきーろッ!」
「ぐふぇっ!」
俺は腹部に強烈な痛みを感じ目が覚めた。
「誰だ! 俺の睡眠の邪魔をする奴は! ってメアか!」
布団から顔を出すとメアの細い足が俺の腹にめり込んでいた。
「やっと起きたわねアヤト。まったく、主がわざわざ起こしに来てあげたのにいつまで寝てるのよ」
「いや、起こし方があるだろ!」
メアは呆れた顔で俺を見ていた。
「起きないアヤトが悪いわ。そんな事より、これからの事を話すからついてきて」
「そんな事なのかよ……まあいいか、そういえばあの後どうなった? 俺は気絶していて」
俺はそう言いながら、とりあえずベッドから起き上がった。
すると、体がいつもより軽く爽快感を感じた。
「キャッ! ちょっと何見せるのよ! 変態!」
「え?……あ」
メアは俺の体を見て、顔を赤らめながら怒った。
俺はまさかと思い、下を向くと全裸だった。しかもただの全裸ではなく、そり立っていた。
まあ、女の子に裸を見られた程度で羞恥心を抱くほど、俺はガキではないが……
そんな事よりも自分のナニが外国人並みのサイズになっている事に俺は驚いていた。
「デカい! 本当に俺のモノか!?」
俺は自分のナニを握って少し回してみた。男なら誰もがやってしまう技でもある。
シュルっと風を切るように動かしてみると、重力に対する反動がいつもより重かった。
「これは凄い! メア見てくれこの反動を!」
「死ね変態ッ! これ以上変な事をすると消し飛ばすわよ!」
メアはそう言って近くにあった服を俺に投げつけてきた。
俺はメアのうぶな反応をもう少し楽しみたかったが、消し飛ばすという恐ろしい言葉を聞いて素直に服を着た。
あれ? 勇者に刺されたハズなのに、胸に傷跡すら無いのか。
それに全身引きしまった筋肉で、引きこもっていた俺の体とはまるで違っている。
「まあ考えても仕方がないか」
「着替え、終わった?」
俺に気を使ってなのか、扉の方を見ながらメアが聞いてきた。
「ああ、着替えたぞ」
「そう、なら行くから。ついてきて」
そう言ってメアは俺をチラっと見た後、扉を開けて先に進む。
俺はそのまま黙ってメアの後ろをついていった。
廊下に敷かれた高そうなロングカーペットの上を歩いていると、悪趣味な彫刻やおぞましい絵画たちが飾られていた。
しかし何か心に来るものを感じた。
これが悪魔的芸術なのか、素晴らしい。
美少女フィギアとかタペストリーとは別の良さを感じる。
そんな事を思い通路を進んでいると、一室の前でメアは止まり扉を開け中に入った。
「着いたわ。さっ、適当に座って」
「あぁ……ここはメアの部屋なのか?」
「そうよ、別に面白いものはないわよ」
俺は部屋に入り、赤色のソファーに座った。
部屋を見渡すと、奥にベットがありその上に可愛いぬいぐるみがあった。それとクローゼットや化粧棚に本棚、なにか魔術的な物などもある。
窓際のテーブルには何故か数が合わない彫刻で出来たチェスの駒が置かれていた。
それ以外は特に目を引くものは無く、豪華な洋風の部屋だった。
「そうだ、俺は何で召喚されたんだ?」
「そうね、何から話そうかしら……」
「分からない事が多すぎるし、出来れば最初っから頼む」
メアは腕を組んで少し悩むように話し出した。
「アヤトは本来、勇者の陣営で召喚されるはずだったの。だけど私が聖霊都市に侵入して魔導書を盗みだし、あなたを召喚した。その時に術式を少し変えたから体が魔族になったの」
「なるほど、あの異常回復力は魔族だからか。それとこの刻印は何だ?」
俺は勇者に切られかけた首を軽く触さわった。
そして少し気になっていた胸に刻まれた刻印の事を聞いた。
「それは魔族の主従契約の証ね。魔力を込めれば連絡を取る事も出来るわ」
「待てよ、ゲームの設定だと思っていたが、もしかして俺はメアの下僕って事か?」
「ええ、名のある魔族にしか刻まれないものよ。誇りに思いなさい」
俺は絶望した。つまり現状、俺はこのロリ小悪魔の奴隷だ。
これから楽しい異世界ハーレム生活が始まると思っていたのに、何てことだ……
だが少し待てよ、俺は昨日勇者を倒した。つまりもう役目を果たした訳だ、これから異世界で自由に冒険しても問題ないはずだ。
とりあえずその可能性を探るべくメアに質問をした。
「なあメア、俺は昨日勇者を倒した。つまり、この世界に平和は訪れない! 役目を終えた俺は自由に冒険してきてもいいよな?」
「はあ? 何を言ってるの? 私の眷属に自由なんてある訳ないでしょ。それに勇者は1人だけじゃないのよ」
「もしかして俺が召喚された目的って……」
「そうよ、アヤトには勇者を全て魔界から消して去って欲しいの!」
メアは自信満々に俺に宣言した。
俺は少しため息をつき頭を抱えた。
終わった、さらば俺の異世界生活……いや、まだ諦めるには早い。
そうだ逃げよう、ここは異世界だ。俺は契約書にサインしていないし無効なはず。この悪魔から逃げればいいんだ!
「そうか……断る! じゃ、またな!」
俺は一言伝え立ち上がりドアの方へ向かって歩く。
そんな俺の様子を見てメアは驚いた。
「え? ちょっとどこ行くのよ!」
「しらん! 昨日みたいなラッキーで勇者に勝てるほど俺は頑丈じゃない!」
「ちょっと待ちなさいって! あなたは普通の魔族以上に頑丈よ!」
俺はスタスタと扉に向かって歩き出すが、メアが俺の服を掴み止める。
俺は服を掴むメアを軽々と持ち上げて、ベットに放り投げた。
「ええい、離さんか! そいっ!」
「キャッ」
「それに俺は冒険をしなくちゃいけない。気持ちは勇者だからな! それに、勝手に召喚して最強の勇者殺して来いって、全然面白そうじゃない! 異世界にせっかく来れたのに死んでたまるか!」
俺はドアノブに手をかけ勇ましく冒険の門出をスタートさせる。
「少し下手にに出てあげたのに……冒険がしたい? 私が甘かった、アヤトに拒否権は無いわ! 私の命令は絶対よ!」
「そんな事言っても俺は逃げる! 残念だったな、悔しかったら首輪でも……うっ! なんだ!?」
俺は体に違和感を感じ、メアの方に振り向いた。
すると、メアはベットから起き上がり、赤い瞳を光らせていた。
そして右手を少し捻り、空間を握る動作をする。
「あがっ!」
俺は心臓を刈り取られるような激痛に驚き、同時に体の自由が利かず仰向けのまま倒れた。
メアは赤い髪をサッと払い、俺を見下ろした。
「わかったかしら?」
「クッソがっ! この鬼! 悪魔!」
俺は抵抗する事も出来ず、悔しそうな顔でメアを見た。
するとメアは得意げに言った。
「悪魔よ!」
しかし俺はある事に気づいた。
俺は天才かもしれない。いや、天才だ、そう呼んでくれていい。
俺は平常心を保ちつつ会話を続けた。
「くっ……しかし……俺は……くっしないぞー! こんな、拘束なんてー」
この位置この角度、完璧と言っていい。
俺はメアのパンツを正面からローアングルで直視していた。
ロリコンではないが可愛い子に罵られながらパンツを無料で見れる機会はそうないだろう。
しかも黒だ。ニーソに黒のパンツ! エッ、エロい!
そういえばメスガキというジャンルが昔はやっていたが、俺はそれが大好きである。
屈辱的だが、これはしょうがない。
「キャッ、ちょっと! どこ見てんのよ!」
どうやらメアに気づかれたらしい。
メアは恥ずかしそうにスカートを押さえる。
「何故バレた!」
「視線がいやらしすぎるのよ! それにまたそれ///」
そう言ってメアは顔を赤らめて、俺の体の一部を指さした。
どうやら俺の性癖を百点満点でクリアしたメアに対して、下半身が反応していた。
「フッ、体の動きを止められようと、俺の欲望は支配されないようだな!」
「この……変態!!!」
メアは右手に雷の魔法が展開し、容赦なく俺のナニにぶつけた。
「おい、やめっ、んのぉぁああああ!!!」
俺のそり立ったナニは避雷針の様に魔法を受けた。
まるで全身にスタンガンを当てられた様な痛みを感じ、俺は気絶した。
それから何分経ったのか分からないが、俺はしびれた体を起こし再びソファーに座った。
「はぁ、死ぬかと思った……」
「やっと起きたのね、はい紅茶。口に合うか分からないけど」
「ああ、ありがとう……」
俺が起きたのを確認すると、メアは紅茶を二人分入れていた。
丁度喉が渇いていた俺は、メアが淹れてくれた紅茶を飲んだ。
紅茶に詳しくはないが、ふわっとしたとてもいい香りがして、美味しかった。
インスタントしか飲んだことの無い俺は少し驚いた。どうやらメアは紅茶を入れる才能があるのだろう。
メアは何故か俺が紅茶を飲む様子をじっと見ていた。
「美味いなこれ」
「そう……よかったわね」
俺が飲んだのを確認すると、気のせいか少し嬉しそうにベットに座り足をプラプラとさせていた。
こうして見るとただの可愛らしい女の子だ。しかし騙されてはいけない。
「なあメア、俺は本来なら勇者だよな? それで昨日の勇者といい、この世界の勇者って何人いるんだ?」
俺は逆らう事を諦めて素朴な質問をする。
流石に毎日のように勇者が城に攻めてきてたら、魔族陣営の俺としては大変面倒だ。
せめて月1いや、半年に1回なら考えるが。
「そうね、正確な数字は分からないけど、あと数人存在しているかもしれないわ」
「随分とあやふやだな」
「勇者を召喚できる魔導書を聖霊都市側があと何冊隠し持っているの分からない。というのが理由ね」
「なるほど、まあ数える程度ならいいか。それに一人で戦う訳でも無いし、メアや他に強い仲間がいるんだろ?」
俺は昨日のメアと勇者の会話で、メアが勇者3人を殺したほどの実力者と聞いている。
恐らく魔力切れを起こしていない万全な状態なら、メアは恐ろしいほど強いのだろう。
「そこなのだけど……どうも私の魔力が回復する気配がないの。恐らく二層魔法を一発撃つのが限界ね……」
「高火力の魔法が使えないなら、いま勇者が来たらやばくないか?」
「それは安心していいわ。恐らく次の勇者か調査団が来るのは早くて4日。それに魔王を倒し終わった魔界にわざわざ理由なく攻め込むほど、暇で正義感が強い勇者ばかりとも限らないし」
「確かにそうだな。ゲームで考えると魔王が死んだらクリアだしな」
勇者の目的自体は果たしている訳だし、今頃女の子たちにモテて遊びまくりだろう。
クソッ羨ましい! ぶっ殺したくなってきた。
「だから今がチャンスなの。勇者さえ倒せれば簡単に魔界を元の状態に戻せるはず。そのカギが三層魔法よ!」
「三層魔法? それって強いのか?」
「ええ、もちろん。使えれば勇者でも簡単に消せるわ」
メアは自信満々に言った。
現状俺はメアの眷属だが、三層魔法を覚えて勇者を消し去ればメアの目的を達成できる。そうすれば俺が自由になれる可能性も高いのでは?
俺は思考を巡らせつつメアを見た。
それに出会いはめちゃくちゃだったが、よく見るとメアは普通に可愛い。俺が頑張って強力すればヒロイン候補にできるんじゃないか?
そうなれば俺のハーレム生活に一歩近づく。それにメアは魔王の娘と言っていた。結婚すれば魔王になれるはず。そのルートも悪くないか?
俺が下心持った思想を巡らせているとメアは続けて言った。
「ただ、あと4日以内に戦い方の基礎と三層魔法を覚えなくてはいけないわ」
「うん、それは無理だな。やっぱなし!」
俺は逃げようと立ち上がると、メアが瞳を光らせた。
「そう、なら……」
「嘘! じょ、冗談って奴だ!」
俺は消してビビった訳ではないがメアに協力することにした。
この世界に勝手に召喚されて、強制的に眷属契約させられて命を賭けて戦う……
普通の人間なら逃げ出すだろう。しかし乗ってしまった船だ。それなら俺が、勇者をぶっ殺して魔王にでもなってやるかな。
勇者が魔王倒してハーレム作るなら、魔族が勇者倒してハーレムを作るのもありだろう! うむ。俺は天才だな。
俺は下心を隠しつつ、出来るだけかっこいい表情を意識しメアに言った。
「よし、決めた! 俺がメアを守る! そして勇者を全員ぶっ殺して俺は魔王になる!」
俺は立ち上がりハッキリと言った。
元々他人の為に頑張れる人間じゃなかったが、不思議とこの少女一人ぐらいは守りたいと心から思っていた。
「フフッ、アヤトが魔王にね。でもありがとう、少し元気が出たわ」
メアはベットで膝を抱えながら、恥ずかしそうに言った。
「それじゃあアヤト! 今から勇者を倒す為の特訓よ!」
「ちょ、おい。そんなに急ぐな!」
そうしてメアは嬉しそうに可愛く笑い。俺の手を引きながら歩き出した。
俺は歩調を合わせながら、小さな手に引っ張られて歩く。
まあ、これも悪くないな……
虚無感とは無縁のこの世界に、俺は無意識に笑っていた。
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