第15話

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「私が海の生贄に選ばれたんですか。」


「すまない…もう決まってしまったことなんだ。どうしようもできない。赦してくれ。」

「いいんです。いいんですよ。村長は何も悪いことはしていない。私、知ってますから。むしろ、ここまで生きてこれたこと自体が私には信じられません。あんなに私は生きることを諦めていたのに。全部、凪のお陰なんですけどね。その、一つだけお願いがあるんですけどいいですか。」

「なんでも言ってくれ。出来る限りのことはする。」


「祭り当日まで、凪を私に会わせないで欲しいんです。」

「……いいのか。最後に会える機会を失ってしまって。もう会えないんだぞ。」

「大丈夫……もう決心できました。きっと凪の為にもなります。凪ももう少しで成人です。あまり悲しい想いをして欲しくないんです。あの子はただでさえ心が弱いから。それに、もし今会ってしまったら、凪は止めようとするでしょう。私は死ぬ覚悟はできてないですけど、別れる覚悟はできています。もし凪が来たら、凪を止めてあげてください。凪には、愛が足りていません。村長にはまた悪役になってもらうことになってしまうけど…ごめんなさい。その時は、凪を牢屋に閉じ込めてください。きっとその方が村の方も優しくしてくれるでしょうから。どうか私の最後のお願いです。無理なお願いなのは分かっています。それでもどうか、凪の為にお願いします。」「わかった……私はどうやら、悪役が似合っているようだからな。精一杯努力しよう。」

「ありがとうございます。」


「凪と汐音には悪いことしてばかりだ。少しは何かできたら良かったんだが…」

「その気持ちだけで充分です。あなたのお陰でこの村の人は幸せに暮らせる。それってとても素晴らしいことですよ。自分を責めないでください。あなたがいるから村は村として成り立っているんです。」


「汐音は、優しいな。本当にすまん。本当に…」「私は、全てに感謝しているんです。辛いことも、楽しいことも、嫌なことも、どれもかけがえのないものなんです。何物にも代えがたい、私が私である証。生まれて良かったって…今は思います。積み重なっていく記憶を誰かに託せたらいいのに。それが心残りです。それじゃあ私は、失礼します。村の人に挨拶をしてくるんで……ありがとうございました。」

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