第12話

 駄目だ。

 

 そんなの駄目だ。


 君がいなくなったら、僕は。

 ぼくは何の為に生きればいいんだ。思い出なんか、何も要らない。記憶も要らない。今が一番大切だって、そう気付かせてくれたのは汐音じゃないか。何処へも行かせない。涙なんてもう、流させやしない。僕が幸せにすると決めたんだから。いつだって一緒に居た。言葉を交わさなくとも、汐音が思っていることはわかる。


 逃げ出したいんだ。恐いんだ。今にも足が竦んでしまいそうで、それなのに強がりで。僕に弱い所なんてひとつも見せたことがない。本当は、僕と同じくらい弱虫なのに。どうして、どうして君はそんな……悲しい笑顔をするんだい。


 僕は、本当の汐音を知りたい。瞼を閉じた君に触れた。感情が、想いが、一気に流れ込んでくる。

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